●02
「<<<蒸発!>>>」
うん……。変化なし。
少し、眩暈がする。
もう一度、ステータスを確認すると、MPが1に減っているところを見ると発動は出来たようだ。
しかし、花瓶の中身は起き上がれないのだから、確認のしようがない。
このベビーベッドから飛び出して、花瓶の中を確認したいっ!
「あ~っ! う~っ! う~っ!」
がちゃ!
あっ、あの変なメイドが入って来た。
だが、叫びは止めず、叫び続ける。
「あ~っ! あ~っ! あ~っ!」
だが、メイドは哺乳瓶のちくびを僕の口に突っ込み、そのまま出ていった。
腹が減ったのだと思ったのだろう……。
赤ん坊は本当に不便だ!
そして、暫くすると、またメイドが入って来た。
いつもの如く、哺乳瓶でも取りに来たのだろう。
はぁ~あ!
……、ストレスで死んでしまうぞ!!
前世の記憶では、赤ん坊がハイハイできる迄8カ月は掛かると言うし、片言の言葉は10カ月は必要だと思い出した。長いっ! このまま耐えるしかないのか?
案の定、メイドは哺乳瓶を口から抜き取った。
早く、出て行けっ! 僕はもう寝る!
すると、メイドは花瓶のところに行き、中を覗き込んでいた。
……そして、テーブルに哺乳瓶を置き、ニヤ付きながらこちらに近付いて来た。
こわっ!!!
袖から、何かを取り出そうとしていた。
殺される~っ!!!
「オギャーっ!!! オギャーっ!!! オギャーっ!!!」
袖から取り出したのは巻物だった。
そして、何かを唱え出した。
その魔法で僕を殺すつもりだなっ!!!
「オギャーっ!!! オギャーっ!!! オギャーっ!!!」
唱え終わると、メイドは何事もなかったかのように部屋から出ていった。
あのメイドは何だっ!!! 怖すぎるぞっ!!
なぜ花瓶の中を見た! なぜニヤ付いた! なんの魔法を使ったんだ! 意味が分からない!
はぁ~っ! 疲れる。精神的に良くないよ。寝よ。
◇
しかし、恐怖心からか良く寝れないんだが……。
でもまだ昼なんだよな~。赤ん坊は寝る時間が短いのだ。
それに、昼にはあのメイドが、またやって来る。
メイドは朝昼晩とやって来ては哺乳瓶を僕の口に突っ込み、この世界の話をして出て行くのだ。
そもそも、あの魔法はなんだったのか! 花瓶を覗いたのは偶然だとして……。
……げっ! もしかして、毒の魔法? 呪いの魔法? それを僕に掛けたのかっ?!!
「ステータスオープン」。
名前:ソルト・デストロイ
性別:男
年齢:0
種族:人族
状態:正常
LV:1
HP:3
MP:5
筋力:1
耐久:2
敏捷:1
器用:4
魔法:なし
スキル:蒸発Lv1、鑑定Lv1
称号:?????
ふ~っ、状態は正常のままだ。
んっ! 鑑定のスキルが増えとるっ!
まてまてまて! どういう事だ!
なぜあのメイドが僕に鑑定のスキルを与えた?
あのメイドの行動を思い出そう。
僕が泣き、メイドが入って来て、哺乳瓶を口に入れ出ていった。
そして、また入って来て、花瓶を覗き、<鑑定スキル>をくれた。
つまり、僕が「試したい」と叫んで、メイドが入って来て、ついでに哺乳瓶を口に入れ出ていった。
そして、巻物を持って来て、花瓶を覗き、水が蒸発しているのを確認して、<鑑定スキル>をくれた。
これ……、僕が言っている事を理解していないか? あのメイド。
<鑑定スキル>は花瓶の中を僕が確認できるようにする為だ。そして、あのメイドは僕のステータスを見る<鑑定スキル>を持っているとすると辻褄が合う。
よし、あのメイドに話しかけてみよう、そして、メイドを鑑定すればこのもやもやも解決する。
その前に、試しに花瓶を鑑定してみよう。
『<<<鑑定!>>>』
名前:花瓶(テスター作)
年数:15年
状態:良好
名前:花(ジタン花)
年数:0.01年
状態:良好
効能:粉末にすると疲労回復の効果(極小)
うん、水の情報は表示されない。
がちゃっ!
「あら、起きてたんですか? ソルト様」
いつもの決まり文句だ。
では、話し掛けてみるか……。
「だーあ、だーぁ、だー」
『お前の名前はなんていう?』
「あら、やっと話し掛けてくれましたね。私はメイドのミーシャです」
メイドは胸に片手を当ててお辞儀をした。
「だー、だー、だーぁ」
『なぜ、僕の言葉が分かるのだ?』
「念話で話せるから、声に出さなくていいですわ」
『そっそうか! ではなぜ僕に鑑定のスキルをくれた?』
「スキルを与える時期になったからですわ」
『僕のステータスが見えるのか?』
「えぇ、鑑定のスキルを持ってますもの」
やけに淡々と話すな、ロボットか?
「私はロボットではないです。私を鑑定してみて下さい」
では、失礼して……。
『<<<鑑定!>>>』
名前:ミーシャ
性別:なし
年齢:2658
種族:ホムンクルス
状態:正常
LV:4983(+?)
HP:209148983
MP:3824233205
筋力:98479
耐久:2372945
敏捷:83742934
器用:38242
魔法:????
スキル:????
称号:????
ホムンクルス? いや他の数値も凄まじい。????ってなんだ? 僕の鑑定では見れないってやつか?
「私はホムンクルス。デストロイ家を守護する者です」
『デストロイ家って何だ?』
「デストロイ家は魔道具士の名門であり、この世界の魔道具の元を作った家柄です」
『そのデストロイ家と僕とはどんな関係なんだ?』
「デストロイ家を継ぐ条件は、異世界転生した者であり、デストロイ家の波動を持っている事が条件になります。それに該当するのがソルト様です」
僕が異世界転生者だと知っていたのか……。
◇
ミーシャに聞いて分かった事は、僕の父は上級貴族だったが軍部の横領を調査していたが、途中で暗殺され、母は心労で僕を生むと亡くなったようだ。
又、ホムンクルスとは人造人間の事であると教えられた。
ミーシャは<検索スキル>でこの世界を検索、僕を探し当てこの場所に連れて来たのだという。
『僕はこれからどうなるんだ?』
「ソルト様は、現在、蒸発のスキルしか持っていません、これから優秀な魔道具士になって頂くためには、多くのスキルが必要になります。今後レベルを上げ、段階的にスキルを付与して行く事になります」
『直近では何をするんだ?』
「今のままですと身体的に不便なので、<歩行スキル>と<言語スキル>を付与します」
そう言うと、ミーシャは袖から巻物を取出し、スキルを付与してくれた。
前もって持っていた事から、ミーシャは<未来スキル>でも持っているのだろう。
早速、ベビーベッドから飛び降り、着地成功!!
<言語スキル>も問題なく使用出来る事を確認した。
首が座っていないのも<歩行スキル>で、歩ける程の体力がついたので解決したようだ。
「で、ミーシャ、僕はこれから何をするんだ?」
「ソルト様には魔物と戦い、レベリングしてもらいます」
「はぁっ! 魔物と戦えと?!!」