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第6話

「何、上里勝利の妻は、宇喜多直家の妹だと」

「ええ、そう決まったと噂ですが聞きました」

「宇喜多のような成りあがり者が、上里勝利と縁を結ぶとは。それと知っていれば、上里勝利殿を我が小早川家の婿に、と自分が上里家に頭を下げに行っていたものを」

 沼田市場の管理を行っている部下の話に、1557年の秋に田坂全慶は頭を抱え込んでいた。


 田坂全慶は、(沼田)小早川家の後継者問題について、完全に追い込まれつつあった。

 毛利元就の攻勢はますます強まる一方であり、浦家を始めとする小早川一族の多くが、(竹原)小早川家を継いだ小早川隆景と、(沼田)小早川家の姫君である永子との結婚による小早川家の統一を望む声を挙げているという現実があった。

 そもそも論から言えば、小早川隆景は既に20代半ば(1533年生まれ)となっており、(この時代で言えば)完全に晩婚と言われても仕方のない歳になっていた。


 それなのに、ここまで正室を小早川隆景が迎えていないのは、永子を隆景の正室にして、小早川家を統一しようという毛利元就の意向が大きかった。

 そして、小早川家を統一して、その金看板をもって、安芸と備後、伊予の海上交易の利権を大いに得ようというのが、毛利元就の策略であり、そのお零れに預かろうと浦家を始めとする小早川家の一族の多くも考えているのだった。


 そして、永子は今年、14歳になっており、いよいよ結婚可能になっていた。

 幾ら何でも14歳になってすぐに結婚させなくとも、せめて初等女学校を卒業してから、卒業して1年程は花嫁修業をしてから、とのらりくらりと永子と隆景の縁談を、田坂全慶はかわしていたが、そもそも永子の相手がいない以上、完全に田坂全慶は追い込まれていたのだった。

 そうした状況に、田坂全慶があるところに、上里勝利と宇喜多家の縁談の話、噂が聞こえたのである。

 そして。


 頭を抱え込んでいた田坂全慶の脳内に、死中に活を求める起死回生の策が浮かんだ。


「よし。決めたぞ。上里正道殿を、小早川永子様の婿に迎えよう」

「「ええっ」」

 田坂全慶がいきなり挙げた大声に、周囲の者は皆、驚いてしまった。


 周囲の者の1人が尋ねた。

「上里正道殿とは?」

「言うまでもない。インド株式会社の代表取締役の一人であり、元皇軍の軍人である上里松一殿の息子の1人よ。今、中学校2年生の筈だ」

 田坂全慶の答えに、周囲は顔を見合わせた末に。


「幾ら何でも初等女学校を卒業したばかり、と中学校2年生では、女性が年上の気がしますし、縁談を持ち込むのには男が幼いのでは」

(註、この頃の小学校は4年制で、初等女学校と中学校も4年生のために、現代の感覚で言えば、小学6年生の男子に、中学3年生の女子の後見人が結婚を持ち掛けるような話になる)

 と別の者が声を挙げたが、田坂全慶は自分の考えに凝り固まってしまった。


「何を言う。こういった話は早く進めないと。他の者に取られてしまうわ」

 田坂全慶はいきり立って、周囲に言い放った。

「すぐに大坂に向かい、上里家に話を持ち込むぞ。すぐに準備をしろ」

 と周囲に命じた。

 更にその果てに、その話を聞いた翌朝、田坂全慶は、大坂へと旅立ってしまった。


 後に残された者達は。

「幾ら何でも無茶苦茶だな」

「絶対に無理だと思うけどなあ」

「宇喜多家にしても、それなりに宇喜多直家と上里勝利が親しくなってから話を持ち込んだから縁談が調ったのに、何の伝手も無しにいきなり婿養子に迎えたい、と飛び込んで行っても」

 と半公然と言い合った果てに、賭けに発展し。


「縁談が調う方に賭ける者はいないのか」

「誰も賭けないよ」

「だよな」

 という有様で、残された者全員が、縁談失敗に賭ける有様を呈していたが。

 宇喜多家の描写があんまりでは?

 というツッコミの嵐が起きそうですが、明後日の完結後に活動報告で詳細を説明する予定です。

 もっとも、私自身が気が付いていない見落としがあるかもしれないので、生暖かくご指摘くだされば幸いに存じます。


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