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第5話

 そんな想いをしながら、1553年から1554年の年末年始を三原の地元で過ごした小早川繁平を、京都の盲学校に送り届けた後、京都に移転した本願寺の報恩講に本願寺門徒の一員として、田坂全慶は参加することになった。

(勿論、この際に改めて、繁平が盲学校を卒業した後、滞りなく本願寺の僧侶となれるように、本願寺の知人に働きかけるという目的が、全慶にあったのも事実だった)


 そして、報恩講の際に色々と考えに耽っていた全慶の目に、見慣れないモノが目に入ることになった。

 日本人ではない、異国の方ではないか、と思われる高位の尼僧の下に、少し年下の日本人の男が4人の子どもを連れて、逢いに来るのが全慶の目に入ったのだ。

 更に言えば、日本人の男は4人の子どもを連れてきただけのようでもあり、更に注意深く見れば、4人の子は尼僧の子に、全慶の目からは見えた。


 どうにも引っかかるものを覚えた全慶は、知人の本願寺の僧侶に、あの尼僧は誰なのか、そして、4人の子と男性の関係はどういうものなのか、を尋ねたところ。

「ああ、永賢尼様とそのお子達ですよ。ちなみに大人の男は、上里松一様ですね」

 知人の僧侶は、あっさりと教えてくれ、全慶は腰を抜かした。

 まさか、永賢尼や上里松一とこの場で会えるとは。


(全慶の視点、知識からすればになるが)

 永賢尼は本願寺でも高位の尼僧だった。

 今でこそ庶民に零落しているが、本来から言えばシャムの王族の血を引く身であることもあり、本願寺で仏道修行をしたいという希望をもって、本願寺の門を叩いた際に下にも置かれぬ扱いをされた。

 更に本人も仏道修行に勤しんだことや顕如の婚約者である如春尼から母代として慕われたこと等から、今では高位の尼僧になっている。


 また、上里松一は(半ば言うまでもなく)皇軍の軍人だったが、シャムに商人として赴いた。

(更にその際に当時は俗人だった永賢尼を側室、現地妻にしたのだ)

 そして、シャムで商人として大成功を収めた後に転職して、今では日本の半国営企業であるインド株式会社の代表取締役の1人にまで松一はなっている。

 更に言えば、松一の正妻は、倭寇の超大物に成りあがっている張敬修の娘、張娃(今は上里愛子と改名している)であり、松一は倭寇にも顔が利く人物であった。


 全慶は、永賢尼の長男の勝利(最もこの時の全慶は勝利の名を知らなかった)が目に入った。

 小早川永子様より少し年上の方のようだ、あの方を永子様の婿養子に迎えられれば。

 だが、その想いがよぎって、すぐにその想いを否定せざるを得なかった。


 何しろ、永賢尼の長女の美子は、如春尼と永賢尼との縁から三条家の娘扱いされて、清華家の久我晴通と婚約を果たした方である。

 その後、尾張の国人である織田信長と美子が密通沙汰を起こしたために、久我晴通との婚約は破棄されてしまい、事を収めるために、美子と信長が結婚することになった、と自分は聞いている。


 そうしてことからすれば、永賢尼の子どもは、ほぼ堂上貴族階級と縁組することになるのだろう。

 小早川家は備後、安芸においては名門かもしれぬが、所詮は地方の国人階級だ。

 永賢尼の子どもを永子様の婿に迎えることができれば、それこそ毛利元就らの介入も阻止できるだろうが、小早川家の家格からすれば、永賢尼の子どもは雲上人に等しい。

 幾ら自分が頭を下げても、永賢尼の子どもと小早川家では家格が違い過ぎる、と永賢尼の周囲から半ば頭ごなしに、この縁談は拒絶されるだろう。


 そんな風に、この初対面時には全慶は永子様の婿に、永賢尼の子どもを婿に迎えることについて考えてしまい、ほぼ即座に諦めてしまった。

 だが、状況は急展開して全慶は希望をもつことになる。

 上里松一と永賢尼等の関係について、本編の描写と違い過ぎる、というツッコミの嵐が起きそうですが、ここの描写は、田坂全慶がそう認識していて、事実と違うということでお願いします。


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