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第3話 

 少なからず話が相前後するが、(この世界の)日本に盲学校、聾学校ができた理由、発端だが、半伝説めいた話が、史実として伝えられている。


 皇軍の面々が、後奈良天皇陛下に対して、自分達の本来の世界の話をした際だが。

「400年程も未来になれば、目の見えぬ者や耳の聞こえぬ者も、今では知られていない、それなりの未来の方法で、学びややり取り等をしておるのか」

「はい。目の見えぬ者は点字で、耳の聞こえぬ者は読唇術や手話で、学びややり取りをしております」

「その方法を、新しく作られた学校で教えることが出来ぬものか。そうすれば、目の見えぬ者や耳の聞こえぬ者にとって、極めて役立つことにならぬだろうか」

「ははっ、何とか工夫してやってみましょう」

 そんなやり取りがあった末に、皇軍の面々が中心になり、この世界では盲学校や聾学校が作られることになったとされている。


 しかし、これは予想外の難事になるのは避けられなかった。

 何しろ、この世界に来たのは軍人ばかりである。

 だから、障がい者教育に理解がある者等、皆無に近い惨状を呈す有様だったのだ。

 だが、天皇陛下からの勅命である。

 皇軍の面々としてみれば、否と言える筈もない。

 かくして、それこそ皇軍が持参した書籍資料等をひっくり返して、情報を集めた末に。

 皇軍内にいた民間から徴兵されていた教員経験者等の将兵がかき集められて、盲学校や聾学校が作られることになったが。


 結果的には1548年になって京都に、最初の盲学校と聾学校を設立するのが精一杯だった。

(更に1551年に鎌倉に盲学校と聾学校が作られ、その後、徐々に全国に盲学校と聾学校は建設されていくことになる)


 だから、小早川繁平が失明した時点では、細かく言えば、まだまだ盲学校は建設途上だったのだ。

 しかし、繁平が盲学校への入学を希望し、更に繁平の実母まで、子どもの将来を考えて、盲学校での勉学を息子にさせて欲しい、と言い出しては、田坂全慶は拒めるはずもない。

 田坂全慶は、繁平を京都に送り出して、信頼できる所に預けることを考えることにした。


 更に田坂全慶を悩ませたのは、盲学校に繁平を進学させたとして、卒業後のことだった。

 失明した繁平が郡司等の役人、官僚の路を歩める筈もない。

 盲学校を卒業した後、按摩や琵琶法師の路を歩ませる、と言うのも躊躇われた末に。

 繁平を本願寺の僧侶とし、妻帯させて、その間に産まれた子をゆくゆくは(沼田)小早川家の当主に、ということを田坂全慶は考えることになったが。


 僧侶になるということは、本来的には俗世を離れるということである。

 そうしたことからすれば、繁平は(沼田)小早川家の当主から隠居して、別の者を(沼田)小早川家の当主とせざるを得ない。

 誰が当主になるのが相当か?

 いうまでもなく、繁平の異母妹になる永子の婿ということになる。

 それに。


 そもそも論から言えば、繁平は側室の息子であり、永子が正室の娘である以上、永子の娘婿こそが、(沼田)小早川家の当主に相応しい、という見方をする者がそれなりにいるのが現実だった。

 更に言えば、繁平が失明したことにより、小早川一族の中では、そういった声が高まっているという現実があった。

(もっとも、そういった声を挙げる者の多くが、身内を永子の婿に押し込んで、(沼田)小早川家の身代を乗っ取ろうとしているのが、現実でもあったが)


「天文維新」が行われた現在、(沼田)小早川家に遺されているのは、小早川家本家という金看板だけといっても、そう間違いはなかったが、そうは言っても、小早川一族の声望は安芸や備後では未だに高く、そう軽んじられるものでは無かったのだ。

 だからこそ、全慶は苦悩することになった。

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