第十三話 最高の譚詩曲を贈ろう
前回
白蘭揚羽:日本政府の諜報員らしからぬ諜報員。少々抜けた大女。皇族と接触済み。
獅乃神叡智:神聖大日本皇國皇太子。『絶対強者』と呼ばれる。麗真魅琴と邂逅。
敷島朱鷺緒:獅乃神の近衛。スタンダードなメイド服を着た武人然とした女剣士。
貴龍院皓雪:獅乃神の近衛。ゴシックなメイド服を着た妖艶な女剣士。
麗真魅琴・根尾弓矢:皇國に入国し、白蘭と合流。色々トラブルに遭う。
珍しくよく晴れた日だった。
七月に入り、皇國の梅雨明けも近いのだろうか。
いよいよ首領Дの訪問日、すなわち脱走の決行日である。
この日、屋渡倫駆郎としてはまず戦士として鍛え上げられた六人の仕上がりを屋外で確認してもらい、その後でついでに岬守航の整備が行き届いていることを扇小夜の操縦で確認する、という予定になっている。
結局虻球磨新兒と三日月由奈は術式を会得出来なかったが、そこはどうにか誤魔化すつもりなのだという。
航は水徒端早辺子と共に一足先に超級為動機神体『ミロクサーヌ・改』の格納庫で待機していた。
「岬守様、愈々でございますね。」
「はい。」
この三週間、早辺子には本当に世話になった。
航にとって、正しく恩人と言って何ら差し支えないだろう。
「早辺子さん、本当に、本当にありがとうございました。貴女がいなければ、僕は闇の中で藻掻き続けるしかなかった。」
航は早辺子の手を取り、心からの感謝の念を表した。
早辺子は頬をわずかに紅潮させ、潤んだ眼で笑い返す。
「岬守様、恐らくはこれが今生の別れとなりましょう。ですが、水徒端早辺子はいつも貴方の幸せを心より願っておりますわ。譬え想い報われずとも、貴方と貴方の大切な御方が末永く息災でありますように……。」
「こちらこそ、貴女が大切な人と相見え、再び共に歩めますように……。」
二人は別れを惜しみ、互いに見詰め合う。
「航様、どうか今一度無礼をお許しくださいね。」
初めて航を名前で呼んだ早辺子は、不意に彼の頬に軽く口付けをした。
「貴方の唇を奪う訳には参りませんが、私の唇くらいはお捧げしたく、このような真似を致しました。」
そう言って浮かべた早辺子の満面の笑みは、初めて会った時の仏頂面からは想像も出来ない、少女のような花を咲かせていた。
そんなやり取りをしている内に、部屋の外から大勢の人間の足音が聞こえて来た。
どうやら航の仲間たちと組織の幹部を引き連れて屋渡倫駆郎がやってきたようだ。
「早辺子さん、どうかお達者で。」
「岬守様、そちらこそ御武運を。」
航は早辺子と最後の言葉を交わし、ミロクサーヌ・改に乗り込んだ。
⦿
扉が開き、十一人もの人間がぞろぞろと格納庫に入って来た。
早辺子は扇小夜として、一人彼らを出迎える。
「ようこそおいで下さいました。只今岬守航が挙動確認起動で整備に不良が無いか確認しているところですわ。」
一人の大男が早辺子を押しのけ、柵越しにミロクサーヌ・改を見上げる。
「大丈夫だろうな。この状況で実戦起動されたらひとたまりも無いぞ。」
「土生様、貴方の言葉とはとても思えませんね。四方やそれが数日で出来るようになるとお思いですか?」
武装戦隊・狼ノ牙の最高幹部『八卦衆』の一人、土生十司暁。
2米にも及ぶ長身に屈強な筋肉を備えたこのモヒカン頭の男は元軍人であり、組織の数少ない為動機神体操縦士である。
彼は一朝一夕で戦闘員がものになるとは全く思っていないので屋渡の訓練成果には興味を持っていないが、為動機神体の仕上がりだけは確認しておきたかった。
「同志土生、扇の言う通り心配のし過ぎだ。」
屋渡も早辺子に同調する。
「そもそも、扇も実戦起動は出来ないのだ。勿論、実際にできなくともやり方を知っていれば教えることは出来るかもしれんがな。しかし、岬守如きがそれだけで習得できるなどありえない。」
為動機神体には二種類の機動モードがある。
整備の折に挙動を確認するための挙動確認起動は、自動車で言う徐行程度の速度で緩やかに動くだけである。
実際に兵器として使うためには実戦起動というモードで動かさなくてはならない。
だがこのモードに入るためにはある特殊な作動が必要であり、操作を覚え、実際に一人でできるようになるまでには相当の訓練が必要になるのだ。
これは、素人が事故で誤って動かして大惨事になったり、何者かに盗み出されたりすることのないようにという安全、セキュリティ上の配慮構造である。
早辺子は実際には実戦起動できるのだが、そのことは組織には秘匿していた。
そして航はその早辺子にしっかりと実戦起動の方法を教わっているのだ。
「しかし同志屋渡、様子が変ではないかね?」
真っ先に異変に気付いたこの紳士然とした風貌の長身で痩せた男こそ、首領Дこと道成寺太である。
脇には小柄な青年が連れ添っている。
「我輩も挙動確認には立ち会ったことがあるが、こんなに激しく排熱音が鳴るものかね。」
「確かに、これは異常だぞ。」
土生も首領Дに同調する。
屋渡の表情にも余裕が無くなり、不安が次第に色濃くなっていた。
狼ノ牙側の人間はあと二人。
首領Дに連れ添う彼の息子、道成寺陰斗はただ茫然と為動機神体を見上げている。
この場にいるもう一人の八卦衆、仁志旗蓮もまたさほど焦ることなく成り行きを見つめていた。
扇小夜こと水徒端早辺子も不安そうな面持ちだが、彼女の場合幹部たちとは真逆の理由である。
そしてそんな様子を、拉致された六人は怪訝そうに見渡していた。
「こいつら、様子おかしくねえか?」
「ああ、何かトラブルの様だな。」
虻球磨新兒と虎駕憲進が最初に気が付いた。
「岬守君……。」
久住双葉は逆に、航の身を案じている。
そして突然、為動機神体はやかましく鳴らしていた排熱音を停止させた。
「まさか……!」
この後起こることに思い至ったのは、経験のある土生であった。
同時に、為動機神体の両目が青く光り、アナウンス音声が流れる。
『超音波相殺機構、作動準備完了。超級為動機神体ミロクサーヌ、実戦起動しました。』
瞬間、土生は大慌てで扉から格納庫の外へと飛び出した。
他の者達は何が起きたのか理解が遅れ、その場でこの後の暴挙を目撃することになる。
⦿
ミロクサーヌ・改の操縦室は横に二つ並ぶ席とその脇と間に備え付けられた玉状の物体、後は二つの席の後ろに僅かばかりの空間とディスプレイが備え付けられた、意外なほど簡素なものである。
為動機神体の操作は神為によって行う。
起動時、発氣神為のエネルギーが体外に漏れ出す作用を利用して機械の駆動エネルギーを励起する。
この時、挙動確認起動と実戦起動では励起エネルギーの深さが違い、実戦起動ではより高出力の発氣神為を高精度で維持し続けなければならない。
これを行うのが三つの玉の内一番右、航の右手が強く握っている玉である。
そして全機構を巡った神為は残り二つ、それぞれの席の左側に備え付けられた玉に返される。
これを掴むことによって為動機神体の制御系は操縦者の意思と接続されるのである。
二席あるのは一人で起動状態の維持、操縦をこなすパターンと両者を二人で分担するパターンとの二通りの動かし方ができるようにとの設計思想からである。
また、ディスプレイが操縦者に用意されていないのは、為動機神体そのものと意思が接続されることにより視覚がカメラと共有されるため、操縦者には必要ないとの理由からである。
そして搭乗者はその凄まじい加速にも耐えられるよう、神為によって席に強い力で括り付けられる。
後ろ側の空間に乗せられる同乗者も同じように壁に吸い付けられる。
そのメインの操縦席である右側の席に座る航は、実戦起動に成功し歓喜に震えていた。
これで漸く、このふざけた組織とおさらばできる。
だが、その前に彼にはやらなければならないことがある。
「ぶっ壊してやるさ、何もかも!」
航は右手に脱出への不屈の意思をそして左手に組織への強い怒りを握り締めた。
⦿
『ぶっ壊してやるさ、何もかも!』
ミロクサーヌ・改から航の声が神為によって響き渡り、屋渡は青ざめた。
「な、何をする気だ!」
それは砲口が備え付けられた右腕を挙げ、遥か高い天井にその巨大な破壊力を解き放った。
為動機神体の砲口から射出されるレーザー砲の原理は量子加速による放射光発生に似る。
神為によって制御された核融合のエネルギーは量子を超加速させ、神為によって急激にその軌道を曲げられて機構内を巡る際に著しい指向性を伴った白色超短パルス光を限りなく連続に近い断続性を持って砲口から射出。
一発に見えるその光線はその実周期ゼロコンマ須臾秒単位の超高エネルギーパルス光が幾兆重も重ねられたもので、その破壊力は壮絶である。
「うおあああああっ‼」
破壊された天井から降ってくる大量の瓦礫、土砂により格納庫内は混乱を極めていた。
ミロクサーヌ・改は凄まじいスピードで飛び上がり、格納庫の上空で停止。
そして格納庫そのものを人がいる足場を残してレーザー砲で焼き払ってしまった。
「何てことを……何てことを……。」
あまりの出来事に狼狽して震える首領Дであるが、航の暴挙はこんなところで終わらない。
むしろこれから始める行為をある人物によく見せるべく、格納庫のあった山を半壊させて彼らを剥き出しにしたのである。
次に航が取り掛かったのは近隣する山三峰の破壊である。
「や、やめろぉぉッ!」
屋渡の絶叫も空しく、執拗に放たれたレーザー砲によって山々は跡形もなく崩れ落ちた。
これにより、狼ノ牙はこの碧森支部に蓄えていた銃火器、輸送機、為動機神体の代替部品、そしてそれらを生産する無人工場施設、そして金融機関を襲い略奪した蓄財を喪失した。
この他に有人工場も存在するが、流石にそこを攻撃して人を巻き込むわけにはいかないので容赦することにした。
「どういうことだ、扇! どういうことだ!」
屋渡は錯乱気味に早辺子を問い詰める。
「わ、私に訊かれても困ります! 第一、実戦起動は私にもできないのですよ? 勿論教えてもいません! 私はただ屋渡様の命令通りちょっとした整備のための確認操作を教えただけです!」
大嘘の名演技である。
早辺子は内心、航の搭乗するミロクサーヌ・改の大立ち回りに小躍りしたいほど喜んでいた。
決して表には出さないが、胸が空く思いだった。
次に航が砲口を向けたのは、少し離れたところにある山。
一か月ほど前に土砂崩れが起き、一人の少女が崩落で命を失った山である。
「待て‼ そこは、そこだけはマジで止めろ‼ そこを失ったら我々は……‼」
「な、何があるのかね、同志屋渡‼」
「東瀛丸です、首領‼ 東瀛丸の生産設備です‼」
「何だと⁉」
神為を生み出す要、東瀛丸を新たに生産する設備を、狼ノ牙はこの場所にしか持っていない。
ここを破壊されるのは正に致命的と言える。
『二井原雛火に懺悔しろ、屋渡ぃッ‼』
その閃きは、怒りの灯である。
自分たちの利の為に、どれだけ多くの運命を弄んだのか。
自分たちの欲の為に、どれだけ多くの人々を苦しめたのか。
彼らは立ち止まって己を顧みることをして来なかった。
ならば行きついた先にある帰結、破滅を突き付けられるのは当然である。
崩壊し、燃え盛る各設備を目の当たりにし、狼ノ牙の面々は茫然と立ち尽くしていた。
「どうしてくれるんだ……。我々は皇國を打倒しなければならないのに……。世界を帝国主義の闇から救わねばならないのに……。」
力なく呟くことしかできない屋渡だが、その状況をさらに引っ掻き回す男がいた。
「こりゃいいや! この状況で大人しくしてる理由なんざねえな! 折角敵さんが集まってるんだ、一人二人ぶっ殺しちまわねえと俺の気が済まねえぜ!」
殺人鬼、折野菱がその凶暴性の標的にしたのは一番小柄な青年、道成寺陰斗だった。
まず弱い者から狙うという、卑劣な犯罪者の典型的な行動である。
「陰斗!」
二人の間に割って入ったもう一人の小柄な人物。
攻撃を止められた折野は両腕を止められ硬直状態に陥りながらもその相手を見て得心の笑みを浮かべた。
「なるほどな、俺はお前のことは最初から怪しいと思ってたぜ、椿!」
折野は、椿陽子が最初に東瀛丸を飲む方向へと皆を誘導しようとした時から訝しんでいた。
「私ももう少しあんた達とお仲間ごっこをしていたかったけど、流石に弟を狙われたんじゃ出ざるを得ないよ。弟に会わせろと親父に言ったのは失敗だったね。」
「ほほう、なかなか複雑な家庭事情らしいな。ま、知ったこっちゃないがな。 それに女子供を殺るのは悪逆の花道ってな!」
折野は回し蹴りで椿の脇を叩こうとしたが、椿はこれを脛で器用にガードした。
そして素早く折野の腕から手を放し胸を掌底で打ち据えた。
「ぐっ!」
「陰斗、近くて術式が使えない! 離れて!」
椿の言葉に陰斗は無言で素早く走り離れる。
「これだけ距離があれば……!」
追撃の雷光が折野を貫いた。
「ぐああああっっ!」
折野は全身焼け焦げて倒れ込み、煤と煙を纏って小刻みに痙攣している。
同時に、陰斗もまた頭を抱えて倒れ込んだ。
「陰斗、ごめん出力が強過ぎた! 大丈夫? 立てる?」
椿は陰斗の許へと慌てて駆け寄り、肩に担いだ。
「姉さん、ごめん。」
「良いから。親父! 陰斗を退避させて休ませる!」
弟を背負い退散する椿の訴えを二人の父親、首領Дこと道成寺太は聴いていなかった。
目の前で行われる蛮行にそれどころではなかった。
一瞬、椿は双葉と目が合ったが、彼女は顔を背けて無言でこの場を後にした。
「陽子さん……。」
双葉は突然のことにどうしていいかわからないのか、ただ顔を伏せた。
「折野!」
「折野さん!」
起き上がれない折野の許に新兒と三日月が駆け寄った。
「くそ……やられちまったぜ。守護神為もいまいち体治すのが遅えし、参ったなこりゃ……。」
折野は力なく笑って見せたが直後に吐血し、新兒と三日月を慌てふためかせた。
そんな最中に、航の駆るミロクサーヌ・改が彼らの目の前に着地した。
『いきなり済まん、みんな。そっちはどうなった?』
航の声が混乱する彼らに問いかける。
それに対し、虎駕が一歩踏み出した。
「椿は敵だった! 折野がやられてヤバい!」
「ちょっと、止めて! 陽子さんを敵だなんて言わないで!」
虎駕に対し、双葉は泣きながら食って掛かる。
「何言ってんだ莫迦、事実だろうが! 認めなくてどうするんだ!」
「でも……だって……。」
今回ばかりは双葉も虎駕が完全に正しいと認めざるを得ず、しかしどうしても認めたくないという思いと板挟みになって泣き出してしまった。
『みんな、ハッチを開けるから乗ってくれ。今から脱出する!』
虎駕と双葉の目の前で機体の額が開いた。
「莫迦どもが、これ以上好きにさせてたまるか!」
屋渡が彼らの許に奔ろうとするが、瞬間機体の左腕が屋渡の眼前に叩き付けられ、立往生を余儀なくされる。
「クソがぁっ!」
この隙に虎駕、双葉、新兒、三日月、折野の五人はミロクサーヌ・改に乗り込み、額が閉じられた。
虎駕は双葉を、新兒と三日月は折野をそれぞれ伴ってスロープを降下し、航の待つ操縦室の後ろのスペースに辿り着いた。
「とりあえず、重症の折野は僕の隣に座らせてくれ。そこの負荷が一番少ない。」
「おう、わかった。」
新兒は折野の体を担ぐと、航の隣に座らせた。
「ぐっ……。何だこれは、体が椅子に吸い付く。」
「折野、悪いけど耐えてくれ。なるべく緩やかに操縦するけど、慣れないと結構加速はきついと思う。」
「へっ、気にすんな自業自得だよ。だが、敵さんのスパイを炙り出したのは我ながらよくやったかな?」
折野は未だに快復せず、強がって笑うことしかできない様子だった。
「みんなも壁にもたれてくれ。それで折野と同じように固定される。」
他の四人も壁に寄り掛かり、出発の準備は整った。
「岬守、俺はお前が出来る奴だって、ずっと信じてたぜ。」
新兒が心底嬉しそうに航を称えた。
航は背中越しに小さく笑って答え、ミロクサーヌ・改を再度浮上させる。
「うわっ! マジでキツイなこれ!」
「すまんみんな、心配かけた。虻球磨、ここからはあまり喋るなよ。舌噛むから。」
狼ノ牙、八卦衆の面々は、ただ見ていることしかできない。
首領Дはミロクサーヌ・改を茫然と見上げていた。
屋渡は悔しくて仕方がない様子で地団太を踏む。
仁志旗はいつの間にか姿を消していた。
早辺子はそんな彼らに気付かれないように、朗らかな笑みで見送ろうとしていた。
航はそんな彼女に、もう少しだけ贈り物を捧げようと思った。
まずは一発、破壊したのは今まで散々航達を苦しめて来た訓練場の丘陵である。
喋るなと忠告を受けていた背後の面々だったが、これには歓声が上がった。
「最後だ!」
そしてもう一発、最後のこれこそが早辺子に捧げたかった渾身の射撃である。
一筋の光が無人の公転館を跡形もなく消し飛ばした。
さようなら、早辺子さん、お元気で……。――航は早辺子の涙が混じった笑顔を確認し、ミロクサーヌ・改を南へと飛ばした。
確かに受け取りましたと、無言の内に謝意を述べられた気がした。
七月二日、13:35、岬守航以下六名、超級為動機神体『ミロクサーヌ・改』により霜北半島に位置する『武装戦隊・狼ノ牙』碧森支部を脱走。
⦿⦿
「おのれぇ……おのれえぇぇぇっ‼」
屋渡は半狂乱になって罵声を挙げる。
「屋渡君、彼に為動機神体を預けたのは君の采配だったね……。」
首領Дが険しい顔で屋渡を睨み付ける。
怒号を挙げていた屋渡は一瞬で固まり、強張った表情で首領へと顔を向けた。
「ち、違います首領! 違うんです! 私はあの男を始末しようとしていたんです! そうだ、扇! 扇が余計なことを! 全てはこの女のせいなんです!」
必死に言い訳を繰り返す屋渡に、指差され責任を擦り付けられようとした早辺子は毅然とした表情で冷たく言い放つ。
「そもそも屋渡様が岬守航を上手く育てられなかったのが原因では? 貴方の訓練指導がいかに怠慢だったか、この際だから洗いざらい話しましょうか?」
「だが、お前が粛清を止めたのは事実だろう!」
「私はあくまで切り捨てるよりは有効活用しませんかと申し上げたまでです。貴方がそれでも粛清を選ぶならば従いますとも申しました。そして、お忘れですか屋渡様? 彼に為動機神体の整備を任せろというのは、貴方ご自身が自信満々で自画自賛しながら申し付けられたことですよ。」
丁寧に逃げ道を塞がれた屋渡は涙目でわなわなと震えている。
「扇、貴様……貴様……。」
「もういい、止し給え!」
そんな二人を、首領Дは一喝した。
「いずれにせよ、最終的な責任が同志屋渡にあることは変わらんのだ。これ以上被害が拡がる前にどうにかすることを考え給え。」
「これ以上?」
屋渡は立ち去ろうとする首領の背中に縋るように問いかけた。
「済んだことはどうにもならん。せめてミロクサーヌ・改だけでも取り戻し給え。」
「しかし、どうすれば……。」
その時、公転館のあった湖から巨大なもう一体の為動機神体が水飛沫と共に飛び出した。
「ほう、同志土生は逃げたのではなかったようだ。性能比べをしたいと持ってきたアレが、四方や活躍の場を得るとはな。」
超級為動機神体『ダイダラス・改』。
ミロクサーヌと並び皇國で汎用される超級為動機神体『ダイダラス』を狼ノ牙で鹵獲し、独自に改造した代物である。
普段は本部のある巫璽山にて厳重に保管されている。
「我輩は娘息子と共に本部へ戻る。君は同志土生と協力しこの件のけじめを付け給え。さもなくば今ある地位からの降格も考えねばならん。」
首領Дはそう告げると、その場を後にした。
見るも無残な姿となった格納庫には、ただ屋渡と早辺子だけが取り残されていた。
苦難の末、武装戦隊・狼ノ牙から漸く脱走した航達一行。
だがここからは彼らを追い掛ける者達との必死の攻防が始まるのである。
・椿 陽子
皇紀2663年(西暦2003年) 3月22日生
身長 164糎
三位寸法 胸86 胴58 腰84
血液型 A
・道成寺 陰斗
皇紀2663年(西暦2003年) 3月22日生
身長 168糎
体重 60瓩
血液型 A
脱走寸前連続更新中
次回更新は、10月9日㈮




