第八十六話 理想の瓦解
前回
椿陽子との接触を隠していたことを問い詰められた久住双葉はそれまで溜まりに溜まっていた不満を吐き出し、岬守航、麗真魅琴との決別した。
一方皇國では神瀛帯熾天王の集まりの中で宣告された通り、魅継家の東風美を除く一族全員が集められ、そして閏間三入によって皆殺しにされた。
最寄り駅で車を降ろされた久住双葉は空を見上げ大きく溜息を吐いた。
終わった……終わらせてしまった……。――スマートフォンの画面に映る麗真魅琴からのメッセージ受信の通知に、彼女は内容を見ることなく画面をオフにし、ポケットに仕舞った。
双葉にとって魅琴は初めて深く付き合った友人である。
親の仕事の都合で通う学校が安定しなかったことと、彼女自身の内向的な性格もあって、中々友達を作れなかった。
いつしか彼女は漫画やアニメにのめり込み、暇さえあれば絵を描くようになっていた。
そんな彼女は、高校の時、辛い境遇に置かれることになる。
彼女をそこから救い出してくれたのが、ついさっき決裂してしまった岬守航と麗真魅琴だった。
ずっと応援してきた二人の恋、それは実った。
だが、同時に二人とは考え方が変わり過ぎてしまっていた。
最早二人の友人でいることは出来ない、そう強く感じさせたのが椿陽子を巡る一連の出来事だった。
そんな双葉に、聞き覚えのある声が掛かった。
「あれ? 久住さんじゃん、久しぶり!」
ぞくり、と双葉の背筋に寒いものが奔った。
そう、この声の主に良い思い出はない。
高校の頃の同級生、曽良野千花。
おそらくは、双葉に対して陰湿な虐め行為を陰で行っていた中心人物。
それでいて確定的な証拠は航や魅琴をしても上げることは出来なかった。
とは言え、二人との付き合いが始まってから虐めは鳴りを潜めたので双葉自身深追いはしていなかったし、高校卒業後進路も分かれたので、拉致されてから今の今までは双葉の記憶から完全に消えていたのだが。
「曽良野さん……。ひ、久しぶり……。」
双葉はまるであの頃に戻ったかのようにおどおどとした対応しか取れなくなっていた。
相変わらず、この千花は双葉の事を見下したような浮かべている。
「今何してんの? まだ漫画家とか目指してるの?」
「ええと、今は……。」
答えに詰まる。
何より、千花が双葉を莫迦にしていた、見下していた、そしておそらく虐めていた理由は、双葉の絵の「下手の横好き」であった。
ここで双葉がばっちり成功を収めるか、あるいはその途上を順調に歩んでいれば見得を切ってぎゃふんと言わせられただろう。
だが、現実は甘くなかった。
「ま、まだ諦めてないんだったら頑張ってよ。私、久住さんの事も応援してるんだから。」
「も……?」
千花の言葉に双葉の顔から血の気が引いていく。
彼女にとって最も耐え難い現実は、自身の夢が行き詰っていることではなかった。
千花は得意気な笑みを浮かべ、スマートフォンを操作して画面を双葉に見せつけてきた。
「だから久住さんもぜひ応援して欲しいんだよね。今度アニメになるこの漫画、作者は私の妹だからさー。」
「あ、うん……。青空千絵……先生だよね……。あの歳で凄いよね……。」
人気漫画家、青空千絵、本名、曽良野千絵。
実は双葉は彼女とも面識があった。
「あー、そう言えば千絵と久住さんってアシスタント仲間だったんだって?」
「うん、まあ……。」
「そっかそっかー。ま、千絵は昔から絵も話作りも上手かったからなー……。」
千花の言葉は露骨に双葉と比較し、彼女の才能の乏しさを貶していた。
だが、双葉に返す言葉は無かった。
さっさとこの場を切り上げて立ち去ってしまいたかった。
「あの、曽良野さん。私、もう行くね? 妹さんの事は私も応援してるから……。じゃ……。」
双葉はその場から逃げるように立ち去った。
背中越しに千花のあの心底存在を見下した薄ら笑いを想像し、吐き気を覚えながら。
きっと千花からは尻尾を撒いたように見えて可笑しいに違いない。――そう高校時代の苦い記憶と共に反芻しながら……。
⦿⦿⦿
久住双葉は高校卒業と共にかねてよりの夢であった漫画家を目指し始めた。
アルバイトの合間に出版社への持ち込みを繰り返し、担当編集の紹介でプロ漫画家のアシスタント業に就くなど、本人なりに手応えのある日々を送っていた。
だがそれは、後輩アシスタントとして青空千絵こと曽良野千絵が入ってくるまでの事だった。
才能のある後輩が入ってくる、そのこと自体は双葉にとって大した問題ではなかった。
周りから凄い逸材が出たからと言って、自分には自分の道があるとは思っていた。
だが、彼女はよりにもよってあの曽良野千花の妹だったのだ。
勿論、千絵は何も悪くない。
だが、千絵が心底楽しそうに自分には到底描けないような絵を書く度にどうしても思ってしまうのだ。
この娘は自分と同じ目に遭わなかったに違いない。
つまり、千花は自分の事を「絵を描く様な陰気な趣味だから」莫迦にして嫌がらせをしてきたわけじゃない。
だとすればこの妹も自分よりもよっぽど的にされ、こんなに心底楽しそうに描ける筈が無い。
つまり、自分が千花の虐めに遭ったのは、自分が下手糞だから。
誰と比べてか、最も身近な妹だ。
千絵との才能、技量の差を思い知る度に、どうしても高校時代の記憶を思い出して辛くなる。
彼女は彼女、自分は自分と考えはしたものの、それでも千絵だけが成功して自分は夢を叶えられなかったら、それは千花の勝ちになるような気がしてしまった。
それからというもの、止せばいいのにと自分でわかってはいたものの、双葉は何かと千絵と張り合おうとした。
彼女がSNSでイラストをアップすれば自分もアップし、そのバズり方を比べたりもした。
そして当然の如く打ちのめされる。
千絵が賞に投稿すれば自分も負けじと投稿した。
千絵は処女作が佳作を受賞したが、自分は箸にも棒にもかからなかった。
自分はこのままじゃ駄目だ。
生まれてここまで嫌がらせにもめげずにやってきた意味が失われてしまう。
双葉は日に日に追い詰められていった。
⦿⦿
ある時、双葉は自分と千絵の差をどうしても知りたくて先輩アシスタントにアドバイスを貰おうとした。
それが彼女にとって、第二の不幸の始まりだと、この時は思いもしなかった。
「うーん、言っちゃっても良いのかなこれ……。」
その先輩はかなり躊躇っているように思えた。
だが彼の態度は一方で双葉にとってヒントになるようなことを何か知っているということでもあった。
双葉はどうしても知りたかった。
「あの、私、何でも聴きますから是非教えてください。どんなことでも。」
「うーん……。」
先輩は頭を掻き、そしてポツリと呟いた。
「久住さんってさ、ぶっちゃけ顔以外描くの好きじゃないでしょ?」
「え?」
双葉の中で世界が揺れた。
「あ、いや……。ちゃんと描けてるとは思うよ。ここまでアシスタントとしてやってきた仕事ぶりを見てもそれは間違いない。デッサンもしっかりしている。でも、そこには愛が無いって言うかさ……。」
「愛、ですか? そんなの、わかるものなんですか?」
「わからないならそれは問題だと思わない? 別の言い方をすれば、例えば千絵ちゃん、ああ、もうデビューするから青空先生って呼ぶべきかな。彼女の絵には『希求力』があるんだ。描き手が何を見せたいか、何で魅せたいかがよくわかる。」
そう言うと先輩は一枚のイラストを双葉に見せた。
最近千絵がSNSにアップしてバズった絵の一枚だ。
「これなんか、どう思う?」
「どうって、確かに凄く上手いですけど……。」
「うーん、じゃあさ、リンクの方を踏んでみな? 僕から言えることはそこに全部書いてあるから。あ、これ、皆まで言わせないでくれって意味でもあるからね。」
リンクされているのは、イラストコミュニケーションサービスサイトの同じイラストだった。
それを下にスクロールすると、双葉の顔は真っ蒼になった。
「え⁉ ちょ⁉ ええ⁉」
「察してくれたかな? 正直僕としてはかなりやっちゃった感を覚えて後悔しているよ。だから気を悪くしないでくれよ。後、このことはみんなには内緒にしておいてね。」
千絵のイラストに付けられたタグは露骨だった。
双葉から見て、そこには剥き出しの欲望が渦巻いていた。
先輩が暗に突き付けたもの、それは双葉の絵の「希求力」の不足。
その希求力の正体、即ち、フェティシズム、エロス。
双葉は眩暈がした。
これが自分と千絵の差なのか。
絵自体は普段の千絵のイラストと何ら変わりはない。
だが、一度そういう目で見てしまうともう彼女のイラストはとんでもなく如何わしいものに思えてしまった。
千絵は心底楽しんでこれらの絵を描いている。
いつものイラストだ、それは間違いない。
今の自分には、屹度こんなものを楽しんで描けはしないだろう。
先輩はそんな失意に暮れる双葉を置き去りにして、そそくさと出ていってしまった。
彼女にとってそれは、今までにない大いなる挫折だった。
⦿⦿
その後双葉は、どうにか千絵と自分の差を埋めようとした。
担当編集や他のアシスタント、それから師匠の漫画家やその仲間達にも相談してみることにした。
だが、結果は芳しくなかった。
時には彼女の控えめな体型について露骨なセクハラを受けたこともあった。
双葉は日に日に精神をすり減らしていき、遂には筆を折って別の道を進むことにした。
これ以上は保たないと、自分でもよく分かった。
漫画家の夢は一旦諦め、普通の生活をして落ち着いたら趣味で色々描いてみようと考えた。
それは「千花への負けを認める事」であるとも頭を過ったが、それを天秤にかけてもこれ以上の継続は不可能だった。
そうして双葉は漫画家になる夢に費やした二年に別れを告げ、一年の受験勉強の後大学へ入学。
嘗ての友人だった魅琴から三年遅れ、一年浪人した航からは二年遅れで大学生となった。
そしてそこで、双葉は出会った。
自分の夢を阻んだものの正体を知ってしまった。
この日本の社会構造に潜む根本的な欠陥が自分を追い詰めていたと、真実に目覚めてしまったのだ。
世の中に蔓延る悪しき欲望の搾取構造を壊さなければ、自分の夢は報われない。
「『あんな絵』が持て囃されるような風潮さえなければ、自分はあんなに苦しむことなく漫画家になれたのに。」
そう信じた彼女は、自分の生き方を大きく変えることになる。
これが久住双葉の、空白の四年間の事実である。
彼女が武装戦隊・狼ノ牙に拉致され、岬守航や麗真魅琴と再会したのは、まさにそんな最中のことだった。
彼女は自分の考えは「社会規範に抑圧され、まだ今は受け容れられない」と考えていた。
従って、「ちゃんと話せば受け容れられる」と考え、早い内から考えを開示していた虎駕憲進とは異なり己の考えを隠し通していたが、それでも虎駕とは考え方の反りが合わず衝突してしまうことになる。
⦿⦿⦿
家に帰り、ベッドに寝そべっていた久住双葉の電話が鳴った。
掛けてきた相手は椿陽子だった。
「もしもし、陽子さん?」
『双葉! 今から会えないか? 頼む、拙いことになったんだ!』
何やら急を要する様で、陽子の声は随分と慌てている。
「どうしたの、陽子さん? 拙いことって何?」
『この間捕まえた二人の内一人が逃げ出した! 私達の居場所もバレるしアンタが見つかったら狙われる!』
「この前の二人ってあの……!」
双葉は咄嗟に窓の外を見渡した。
どうやら尾行らしき人物は見当たらない。
「わかった。場所は私が指定していい?」
『……とりあえず聞くよ。遠すぎて辿り着けなくても困るからね。』
その後、場所を伝えた双葉は家族にアルバイトと嘘を吐いて家を飛び出した。
双葉にとって、陽子は何としても助け出したい人物だった。
もう自分には陽子しかいない、というのもあるが、何より「父親に自由を奪われ生き方を決められてしまっている。」というのが双葉にはどうしても許せないのだ。
⦿⦿
二人が落ち合うと決めたのは近くの公園だった。
陽子を待つ間、双葉は不安で胸が張り裂ける思いだった。
既に東瀛除丸を飲んでしまった彼女は神為が使えず、今敵襲に遭ったら一たまりも無いからだ。
「双葉!」
それだけに陽子の姿が見え、彼女に声を掛けられた時の双葉がどれだけ安堵した事か。
双葉は迷い無く陽子の方へ駆け寄った。
「双葉、アンタ神為が無くなってるね……。飲まされたんだね?」
「うん、まあ……。」
「拙いな……。今日は持って来てないんだよ。」
陽子は辺りを見渡し、敵襲を警戒する。
そして、彼女は何かを見付けたようだ。
「双葉、アンタ着けられたね。」
「え?」
陽子が見つけたのは根尾弓矢が伴堂明美に依頼した双葉の尾行だった。
プロフェッショナルである彼らは流石に双葉には気付かれなかったものの、陽子の目は誤魔化せなかったらしい。
陽子は目線で人数を数え、そして考え込む。
「参ったな……。これじゃ向こうに帰ることは出来ない……。」
「陰斗君は今、どうしてるの?」
「親父の所さ、相変わらずね。親父は今、陰斗のことをあまり自分の手元から離そうとしない。何時でも追い掛けられる術式を持っていた逸見さんもいなくなっちゃったからね。」
「そう……。」
双葉は今、陰斗の身を案じる陽子の態度を少し煩わしく思っていた。
彼女から見て、陽子は父親だけでなく弟の陰斗にも縛られて見えた。
陰斗君なんて放っておけば、全部解決するのに……。――頭の中にそんな考えが過る。
だが、そんなことを口に出せば陽子との関係も終わりかねない。
双葉にとって、自分を頼ってくれる陽子は失えない最後の友人だった。
「陰斗君って、確か陽子さんの所へ飛んで来れなかったっけ?」
「ああ、まあね。でもそれには親父が『支配』を解かなきゃいけないんだ。」
「支配?」
「親父の術式神為の一つさ。支配下に置いた者の神為を自由に使える。逆に、支配されてしまった者は神為を自由に使えなくなってしまうのさ。陰斗は基本、親父の手元で支配下に置かれているからね……。」
陽子の表情に悔しさが滲む。
「親父の奴は今、おかしくなってしまっている。何か新しい力に目覚めたらしい。それで前以上に冷静な話し合いが通じないんだ。」
「そんな……。それじゃあ陽子さんは一体どうするの? そんな状態のお父さんと運命を共にするなんて……。」
「勿論、真っ平だ! だが、勝てないんだよ私じゃ親父には……!」
頭を抱える陽子を見て、双葉はまるで自分の事の様に胸を締め付けられた。
自分ではどうしようもない力の差と環境に苦悩する姿が他人のものとは思えなかった。
「陽子さん、このままじゃ……。」
「わかってる。一旦、いくつか確保してある隠れ家の内の一つへ二人だけで行こう。後の事はそれから考える。暫く付き合える?」
「うん、勿論だよ。」
双葉と陽子はとりあえず場所を移動した。
この時漸く、双葉は自分の背後で何やら気配が動くのを察した。
「ごめんね陽子さん。私が鈍いばっかりに……。」
「双葉が謝る事じゃないさ。無理を言っているのはこっちなんだから。迷惑かけて私こそごめん。」
「そんな、迷惑だなんて……。」
「とりあえず、向こうについたら親父に連絡する。逃げた一人、牧辻野愛琉を捕まえるように言われてるんだ。『一人では無理そうだから、応援に陰斗を寄越してくれ。』って伝えてみるよ。」
陽子に先導され、双葉は夜の闇を走る。
道に沿って流れていくライトがなんだか双葉にはとても美しい光の芸術のように思えた。
その先に待ち受けている運命を、彼女はまだ知らなかった。
⦿⦿⦿
狭く、簡素なアパートの一室。
だがその扉は異様な邪気を放っていた。
中に人がいるのは察せられるが、同時に良からぬことが行われているようにも思える。
何かに怯える若い女の声と、高圧的な壮年男性の下卑た太い声がする。
バチン、と大きな音と共に、女の甲高い悲鳴とのた打ち回る音がする。
女は何かを強要され、少しでも逆らったり機嫌を損ねたりすると罰を与えられているらしい。
部屋の中で行われているのは、そんな邪悪な調教であった。
中にいるのは男が二人、女が一人。
壮年の長身男性がどうやらこの場を支配しているらしい。
小柄な青年は感情の無い死んだ魚の様な眼で女を見下ろしている。
そして若い女は怯えながらその碧眼で二人の男を見上げていた。
へたり込んでいなければその身長は恐らく小柄な青年よりも高いであろうが、その肉付きの良い抜群のスタイルを持った白く美しい裸体を煤塗れにした彼女は明らかに逆らう気力、心が折れていた。
皇國新華族の一角、別府幡家の令嬢である彼女黎子は今、下劣な叛逆者の虜囚となる辱めを受けていた。
「お願い致します……。もうお許しくださいませ……。何でも……何でも言うことをききます故どうかこれ以上は……。」
「そうかね。漸く素直になって来たようだねえ……。」
髭を蓄えた口元を歪ませて笑う長身の痩せた男は道成寺太、椿陽子の父にして武装戦隊・狼ノ牙の首領である。
そしてどうやら彼女に仕置きしているのはその隣に控えている青年、椿陽子の双子の弟である道成寺陰斗であった。
「どうか……どうか……。」
「まあ、流石に自らの神為を自由にできないとあっては素直に従う他無いよねえ? 逃げ出したお友達もじきに陽子が見つけ出すだろう。その時はあの牧辻家の娘にもあれこれ仕込んでやらなくては……なあ陰斗……。」
陰斗は答えない。
だが、その冷酷な眼差しは父の指示があればいつでも放電により彼女らに苦痛を与えるということを物語っていた。
「素直になってきたことだし、まずは服従の誓いでもして貰おうかね。新華族、別府幡家のお嬢様?」
「服従……? 誓い……?」
「何、簡単なことだよ。地べたに額を擦り付けて、我輩に絶対服従する誓いを立てるのだ。」
「そんなっ……!」
次の瞬間、父親の合図とともに陰斗の手から電撃が放たれ、黎子は悲鳴を上げた。
「ひぎゃああああっっ‼」
「この程度の事で一々息子の手を煩わせないでくれ給え。素直になったと思ったが、もう少し調教を継続しなくてはならんようだね!」
「ごめんなさい‼ ごめんなさい‼ 誓います‼ 誓わせて頂きますからぁっ‼」
黎子は泣きながら懇願し、額を床に擦り付けた。
所謂完全なる屈服の姿勢、全裸土下座である。
「さあ、誓いを述べたまえ。言っておくがこんなものは序の口だよ。何せ君には、我輩の子をたくさん産んで貰わねばならんのだからね。」
「こ、子供をっ……⁉」
黎子は肩を震わせる。
これから自分の身に降り掛かる災禍に身を竦めていた。
「ほら、早くし給え。それともまだ電撃が足りないかね?」
「い、いいえっ‼ 誓います‼ 私、別府幡黎子は道成寺太様に絶対の服従を誓い、一切逆らうことを致しません‼ どうかこの私の罪深き肉体を存分に革命のお役に立てるようご活用くださいませ‼ どうか道成寺様の元気なお子様を沢山産ませてくださいませ‼」
黎子の必死の、哀願にも似た宣誓を聞いた首領Д・道成寺太は身の毛のよだつ様な悍ましい高笑いをあげた。
屹度彼は今、自らの支配欲を満足の絶頂に高めているのだろう。
「実にいい誓いだ。そう、君は罪深い存在なのだ。わかるね、新華族のお嬢様?」
「はい、ヤシマを倒す協力をして済みませんでした。」
「そんな君の一族の罪も、我輩の子であり親となる息子を産むことで清めることが出来る。有難く思い給え。」
「はい……。黎子は果報者で御座います……。」
新華族にとっての誇り、それは国家奪還への功績を認められ、神皇自らの意思によって貴族に取り立てられたことに他ならない。
それを汚されることは、黎子にとって途轍もない屈辱であろう。
そんな黎子に追い打ちを掛けるように、首領Дは更に下劣な要求をする。
「では、黎子君。今度は我輩の足の裏を舐め給え。」
「え……?」
「……陰斗。」
再びの容赦の無い通電。
黎子には刃向かうどころか僅かな躊躇いすらも許されなかった。
「ごめんなさい……。舐めさせていただきます。」
「うむ。丹念に、感謝を込めて舐めるのだよ?」
「ふぁい……。」
首領Дは椅子に腰かけると素足を黎子に突き出した。
黎子は一瞬、臭いが鼻についたのか顔を顰めたが、それでも再びの通電は避けたいらしく水音を立ててこの男の足の裏を舐め始めた。
その青い両目からは涙が零れ落ちていた。
「今後は我輩の事は首領Д、首領様と呼びなさい。」
「ふぁい……。」
その小さなアパートの一室は悪徳が支配していた。
そして締め切られた窓の外では一人の少女が息を潜めていた。
「黎子……待ってて。すぐに助けるから……。」
人形の様に小柄な少女、牧辻野愛琉はその長い銀髪を靡かせてその場を颯爽と去って行った。
・曽良野 千花
西暦2003年(皇紀2663年)4月9日生
身長 164㎝
3サイズ B85W58H87
血液型 O
・青空 千絵/曽良野 千絵
西暦2005年(皇紀2665年) 11月3日生
身長 154㎝
3サイズ B91W57H88
血液型 AB
次回更新は、11月6日㈯




