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003  作者: Nora_
8/27

08.『妥協』

読む自己ー

「聞いてるのっ? 早く貸しなさない!」

「あ、まあいいけどさ」


 俺は彼女にボールを手渡してボール拾いでもしてやることにした。

 恐らくこんなだから下手くそだと思っていたのだが……。


「綺麗だな」

「へっ!?」

「いや、シュート全部入って凄えなって、音を立てずに入るのが1番凄いんだろ?」


 バスケをよく知らない俺でもフォームが綺麗だと感じたし、綺麗な縦回転がかかっていたと思うし、今も言ったが綺麗に入っていた。

 ボールを奪われて良かったとすら思った、こんなに綺麗なシュートを見られたのだから、と彼女に言う。


「ふんっ、例え綺麗だとしても協調性がなければレギュラーにはなれないの、あなたには分からないでしょうけどね」

「協調性がないのか」

「……みんなに合わせるのは苦手なの」


 何でもかんでも合わせればいいというわけでもないが、空気読めない人間を排除したくなるのも集団心理の1つなのかもしれない。

 だって自分は我慢をしているのに何であの人は自由にしているのって、どうしたって不満が出るから。


「まあ倉庫に行けばまだボールはあるのに物を奪う奴は確かにレギュラーにはなれないかもな」

「……だってこのボールがお気に入りなんだもん……」

「そういう拘りがあるのは良いことなんじゃないのか? スポーツをやる人間には必要かもな」


 それであの綺麗を見られるのなら幾らでも使ってほしいと思っている。

 それにしてもレギュラーか、中学の時の部活は人数が少なくて試合に無理やり出されていたものだが。


「練習の時は使えるけどミニゲームの時や試合の時に使えるわけじゃない……こんな拘りはないほうがいいの、全然駄目なの他のボールじゃ、だから協調性云々はただの言い訳……」

「近くの公園にバスケットゴールあるよな、で、バスケ部員なら外用のボールくらい持ってるだろ?」

「あるけど……」

「毎日放課後に付き合ってやるよ、練習しようぜ」

「な、なんで?」

「は? あんたは試合に出たいんだろ? だったらどんなボールでもあの綺麗さを出せるようにするだけだろうが。部活中だと自由にはできないだろうし、夜遅くまで付き合ってやるよ」


 なんてな! 細かいことはまるで分からないし偉そうに言える立場ではなかった。

 それでもこいつのシュートに見惚れてしまったのだから仕方がない。

 試合中に俯いてベンチに座ってちゃこいつの魅力を知ってもらえないわけで。

 しかも門限もなくなったのでこちとら暇つぶしができて最高だとしか思えなかった。


「……浅見唯あさみゆい……」

「俺は高橋言、よろしくな」


 それから結局1回も打ってくれはしなかった。




 屋内スポーツということもあって年中活動時間は19時までとバスケ部は決まっている。

 そのため6時45分に家を出てゴールのある公園で待っていた。

 一応、俺も実力がなかったとはいえ中学ではバスケをやっていたわけだし、少しくらい力になれればいいのだが……。


「何であんな綺麗なシュートができるんだか」


 打ってみると分かる、どうしたって自分の理想とはどうしてもズレが生じてしまう。

 しかも意識すればするほどズレたり距離が足りなかったりしてしまうのが難しいところだ。


「あの……」

「よお、悪いな疲れた後なのに」

「いや……」


 部活後そのままで来たんだろう、詳しくは言えないが動きやすそうな格好をしていた。


「ほら」

「あ、持ってたの?」

「まあな、打ってみろよ」


 外用のボールを渡してゴールの横に陣取る。


「でも……ここのは少し低いしそれこそ感覚が狂いそう」


 しかし、彼女は不安そうな顔でこちらを見るだけだった。


「とはいっても調整できないしな……」

「あ、ねえ、実は部活の後に居残りする子もいて体育館使えるの。あなたさえよければ……」

「お、だったら体育館に行こうぜ、内外で差があるのは確かだしそっちの方が良いだろ」


 というわけで早速移動。

 なるほど、確かに2人くらい居残り練習をしている人がいた。

 片方は壁にひたすらアタックするバレー部員と、シュート練習している男子が1人、と。


「やろうぜ、いつまでも使えるわけじゃないんだろ?」

「うん……20時までって決まってるの」

「ま、明日からは俺が待っていればいいわけだしな」


 とりあえず適当に倉庫からボールを持ってきて彼女にパスをする。

 先程と違って悩む素振りを見せずにゴールへとシュートした……までは良かった。


「……本当にボールが違うと入らないんだな」

「そうなの……」


 こっちへきたボールを拾って確認しつつ「あのボールと何が違うんだ?」と聞いてみる。


「重さ、かな、他にも色々あるけど」

「ちなみに、すぐに分かるのか?」

「うん、沢山のボールがあっても分かる」

「じゃあ持ってきてくれ」

「え、でもそれじゃ練習にならないんじゃ?」

「外してばっかりだと気分が滅入るだろ? どうせなら練習も楽しくやらないとな」


 そのボールを持ってきてからは雰囲気が変わった。

 めちゃくちゃ楽しそうに打つじゃねえかと俺も少し気分が上がる。

 何よりも近くでまたあの綺麗が見えるのが嬉しいとしか言いようがない。


「浅見さ、感覚が変わらないようにって練習の時は毎回使ってたんじゃないのかそれ」

「うん、誰かに取られた時は奪い返してたっ」

「……流石にそれはやりすぎだな。同じくらいの雰囲気でこのボールも打ってみてくれ」


 うーん、まあ先程よりは綺麗じゃないが入ってるしそこまで悪くない気がする。


「思い込み、気の持ちようだな」

「今だけだと思う」


 あまりこういうことは言いたくないが……。


「あのか、かか、可愛い笑顔を浮かべつつ打ってみてたら大丈夫だ!」


 後ろでギュッと手を握りつつ、蓮みたいなことを女の子に言うなんてと葛藤していた。


「……笑顔?」

「……ああ、浅見はお気に入りのボールでやっている時は笑ってるんだよ」


 ほぼ確実にリングに沈める上に見惚れるくらいの綺麗さと、打つ時に毎回あの思わず動きを止めてしまいそうなくらいになる可愛い笑顔を目にしたら、敵は萎縮してしまうだろうなんて考えていた

 ただ……可愛いをドスルーされたことに俺は悲しくてどうしようもなくなる。


「けれど真剣にやっている時に笑っていたら相手に失礼じゃない」

「あ、そうですね、でも良いと思うんですけどね。だって好きなスポーツを心から楽しくやれているということなんですよ? 観客として見るなら、選手の方々が一生懸命なのもいいですけど笑顔で楽しそうにしているところが見たいと思います。格好良いし楽しいスポーツなんだな、自分がやってみたいなってなるかもしれないじゃないですか。それが逆に不機嫌や仏頂面でやっていたらどう思います? つまらないし怖い人しか好かないスポーツなんだなってなりますよね? ……まあこんな言い方はともかくとして、俺がもっと浅見の綺麗なシュートを見たいし可愛い笑顔を見たいだけだよ」


 もう1度アピールしてみた。

 完全スルーというのは流石に悲しいし簡単に諦めることはできない。

 俺はもう1人の高橋じゃないが、思ったことを口にできる権利があるのだから。


「なるほど、寧ろ好きだからこそ楽しめって話ね!」

「おう、そうだっ」


 うんまあ笑顔を浮かべてくれるなら別に良いよ届かなくても。

 20時まで続けて好きなボールで打った時は百発百中だった……いや結局好きなボールばかりでしか打ってなかっただけなんだけれども。

 体育館を後にして浅見と夜道を歩いて行く。


「家はどこら辺なんだ?」

「すぐ近くにあるの、だから送ってくれなくても大丈夫よ」

「そういうわけにもいかないだろ」


 そこで彼女は黙ってしまう。


「分かった、少し近くまででいいからさ、別に浅見の家を知りたいわけじゃないから安心しろ」

「……ねえ」

「ん?」

「上手くなれるかな? 私、もっと試合出たいの、自分が出れていない試合で代わりに出た子達が微妙なプレイをしていると気になる……私なら上手くできるのにって!」

「それもスポーツマンには必要な考えだけどさ、相手に合わせられない人間は受け入れられないよ。もどかしい気持ちは確かにあるんだろうけど、表に出しすぎては上手くいかないんだよ」


 浅見の方が上手いとは確証を持って言うことができない。

 だって俺は彼女がシュートをするところしか見てないし、他の部員の能力を見ていないから。

 だからある程度のところで妥協しなければ余計に出れなくなって悪化して終わるだけだ。

 顧問からは認められてもチームメイトに認められなければ楽しくはできないだろう。

 楽しくできなければ彼女の綺麗も伝わらないし、恐らく余計なことに気が散ってシュートが入らない。 


「独りよがりになってはいけないんだよ、何よりそれは浅見に似合わない。さっきだってお気に入りのボールに触れている時は本当に楽しそうだったじゃないか、それと同じように他のボールや仲間に先生に向き合えばきっと大丈夫だよ」

「……明日も」

「ああ、言ったからには手伝う、ボール拾いくらいしかできないけどな」


 結局彼女の家の前まで送って帰路に着いた。


「ただいま……」

「お、おかえり! お、遅かったねっ?」

「ああ、ちょっと悩めるバスケ少女に協力してやっててな……あ、悪いな手伝ってやれなくて」

「凛お姉ちゃんも手伝ってくれたから大丈夫! あっ、明日早いからいまお昼代渡しておくね?」

「おう、朝早く行くなら気をつけろよ」

「うん! 待っててっ」


 リビングのソファに座って深く腰掛ける。

 何をやっているんだろうかというのが正直な感想だった。

 偉そうに協力するとか言っておいて何もできちゃいないし浅見にとっても余計なお世話かもしれない。


「お兄ちゃんはい!」

「ありが……1000円もいらないぞ?」


 購買のパンはそこまで高くない、最安値は80円で最高値は300円だった。


「い、いいの! そ、そのかわり……頭撫でて?」

「ほら」

「んん……」


 蕩けた顔を見せてくれている妹を眺めつつまあいいかと考えていた。

 塩分補給が大事だろうし浅見に余ったお金でスポーツドリンクでも買えばいいだろうと。


「……いま他の女の子のこと考えたでしょ」

「……ち、違います、俺は目の前の妹様をちゃんと意識していますよ」

「えっ? い、意識……」


 あの時の雰囲気に戻りかけて変なことを言ってしまったようだった……。

バスケは楽しかったけど、いつも1人でシュート練習してたな……

下手くそだったし全然知識ないからこういう書き方しかできなかった。

アニメとかで見たそれっぽいのを。

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