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003  作者: Nora_
5/27

05.『十分』

読む自己ー

「お兄ちゃん起きてっ」

「……ん……」

「……起きないと……キス」

「おはようございますっ!」


 起きてあげたというのに葉は明らかに不服と言った表情を見せてくれた。

 彼女を部屋の外で待たせて制服に着替えつつ考える。

 関係は戻ったのはいいが、この距離間はよくない気がすると。

 義理とはいえ兄にキスするとか言う、一緒に寝るとかそういうのは控えるべきだろう。

 俺らは年頃の男女だ、彼女はともかくこうやって接近されていると間違いをおかしそうだから。


「葉、これからはああいうのやめてくれな。それと、一緒に寝るのも昨日限りだから」

「え……やっぱり信用できないってことだよね? だ、大丈夫っ、これから頑張るから!」


 家事に関しては自分も手伝おうと決めていた。

 だから彼女が朝食を作ってくれている間に風呂掃除をすることにする。

 昨日短時間とはいえ妹と入ったんだようなあと考えて、慌ててあの白さを忘れることに専念。

 終わらせてリビングに戻ったタイミングでインターホンが鳴った。

 少しだけ嫌な予感を感じつつも玄関に行って扉を開ける。


「高橋君おはよ!」

「お、おう、おはよ佐藤」

「昨日決めたのだけど、今日からあなたの家に住むわ」


 うん、変な勧誘だったみたい……だから扉を閉じようとしたら怪力で閉めること叶わず。


「もう荷物を持ってきてしまっているから拒否権はないわよ」

「まあその大きい荷物を家の前に置かれてても邪魔だし入れよ」


 命の恩人だし何となく逆らい辛い。

 リビングに入ってもらってわざと炭酸を渡してやった。


「うゅっ……だ、だから炭酸は……」

「ふっ、馬鹿なことを言うなって話だよ佐藤」

「……だってあなたはご飯……あ、あれ? あの子……」

「昨日裸の付き合いをしてな」

「は、裸っ!?」


 確か頭も良いってクラスメイトは言っていたのにその反応の仕方はアホっぽいものだ。


「あの……昨日もお兄ちゃんといましたけど、どういうご関係なんですか?」


 葉を指差して慌てている彼女に「昨日の人間と同じだぞ」と答えたら余計に酷くなってしまった。

 とりあえず葉作の久々朝食ができたみたいなので、食べさせてもらうことにしたのだが――


「うっ……美味すぎるよぉっ……」


 空腹だったというのと実は妹の作るご飯が大好きだったので涙がボロボロと溢れてしまう。

 泣いている場合じゃない、しっかりと味わって最後までお皿についた胡椒まで味わないと!

 ……食べ終わったので食器を洗うことにした。


「葉、お前の作るご飯は世界1美味いよ!」

「……う、うん、ありがと……」


 これまでのあれだけ辛かった毎日をたったこれだけでふっ飛ばせてしまったようだ。


「葉ちゃん、今日からここに住むからよろしくね」

「え……も、もう自分も直しましたから大丈夫ですよっ? お兄ちゃんと2人だけで大丈夫です!」

「大丈夫よ、お金なら50万円くらい持ってきたから」

「そ、そういう話ではなくてですね……お、お兄ちゃ――」


 さて学校行くか!

 もう茜と距離を置こうとする必要もないので途中寄っていくことにした。

 茜のお母さんから許可を貰って彼女の部屋へと入らせてもらう。

 ベットの上で眠る小動物を起こすべく必殺の頭撫で行為をしてやることに。


「ふみゅー……」

「早く起きろー」

「な、なんでっ!?」

「お前いつも遅刻しそうになってるからさ、昔みたいに俺が起こしてやらないとな」

「うん……制服に着替える」


 せめて俺が出てから着替えてもらいたいものだが……。

 こういう点も離れたくない理由ではあった。

 だって俺が見てないと無防備すぎて仕方がないのだ。

 着替え終わった彼女が鞄を持ったのを見てから洗面所まで輸送する。


「ほら、歯を磨け。その間、髪梳いてやるから」


 こうして朝から世話するのも久しぶりで少し手に力が入った。

 クシで彼女の髪を梳かしていく。

 一応普段から綺麗にしているのか引っかかるということは全然なくて楽と言えた。


「顔洗えよ」

「あい……」


 さて、これで彼女を学校に連れてって問題は起きないわけで。

 朝食を食べるタイプではない彼女を抱えて家を後にした。

 学校及び教室前廊下に着いて彼女を下ろす。

 しっかりと乱れがないかを確認してから「行ってこい!」と彼女の背を押して。

 行ったのを確認してから自分の教室に向かおうとすると――


「言」


 彼女に袖を引っ張られて足を止める。

 どうしたと目線で聞いたら「ありがとっ」と可愛らしい笑みを見せてくれた。

 頭を撫でて俺も礼を伝え今度こそ教室へと入る。


「おはよう高橋君」

「おはよう」

「葉ちゃん説得して住むことになったからよろしくね」


 うへぇと内心でため息をつく。

 俺だって葉が言っていたように2人で頑張っていこうと決めてたんだ。

 それなのにこんな命の恩人で綺麗で胸が大きくて手足が細いくらいしか分からない彼女に来られても困ってしまう。

 それでも葉が認めたのなら尊重してやるべきなのかもしれない。

 上手くいくと信じてそれくらいのおかしなことは受け入れてみせよう。

 それに彼女がいてくれても何だかんだで面白そうだし常識も一応ありそうだしな。

 ただ、どうして彼女はここまでしてくれるのだろうかとずっと悩む羽目になった。




 彼女と一緒に過ごすのは良いことばかりでもなかった。

 無駄に男子に絡まれるし女子からは何回も「どこまで進んだの?」なんて聞かれる羽目になった。

 どこまで進んだのってまだ友達にもなってないんですけどっ。

 帰る時も同じ家に住むことになったせいで一緒に帰ることになってしまった。

 ちなみに一緒に帰る時に葉も来たせいでずっとわーわうるさかったのは言うまでもない。

 何ていうか家というのは本来落ち着ける空間でなければいけないと思うのだ。

 家族でもない女の子と一緒に住むなど有りえないこと! それなのに佐藤ときたら……。


「うゅゅゅゅ……」


 むかついたから炭酸を飲ませてやることにした。

 というか、どうして気泡が見えるのに毎回引っかかるのだろうか。

 綺麗なのにそういうところが無防備じゃ危険で仕方ないだろう。


「だから炭酸は……」

「悪かった」


 ちくしょう、困ったような顔も綺麗じゃねえかよ。

 元両親の部屋で寝てもらうつもりなので案内をする。


「ここで寝てくれ」

「え、こんな大きな部屋で寝て良いの?」

「一応佐藤も女だし1人部屋が欲しいだろ? だからここを存分に使ってやってくれ」


 お金だっていちいち払ってもらわなくてもあの人達が毎月沢山振り込んでくれていた。

 ちなみに、母さんが俺の実の母親で、父さんが葉の実の父親となっている。


「待ちなさい高橋君」

「土下座か? 分かった分かった」

「違うわよ、どうせ一緒に住むのならお互いに名前で呼びましょう」

「別に良いぞ。凛、よろしくな」

「言君、よろしくっ」


 荷物を出したいというので彼女を1人残しリビングに戻ることにしたのだが。


「言、正座」


 彼女が当たり前のように存在していて、尚且、俺も当たり前のように正座をしていて。

 相変わらず軽い彼女が俺の足の上に乗る。


「葉、よく凛の要求飲んだな」

「ほ、本当は嫌だったんだよ? だけど私だって完璧じゃないから協力してもらおうかなって」

「ただ、金だけは受け取ってくれるなよ?」


 他はともかく金銭のやり取りは発生してほしくない。

 飯を提供したり風呂や他を利用させたからって取るつもりもなかった。

 あれだ、色々なことを教えてもらいつつ彼女にも葉のサポートをしてもらえばいいだろう。


「当たり前だよ! で、どうして茜さんはいつもそうやってお兄ちゃんの上に座るのっ?」

「昔からしてきたことだから、そんなこと言われても困るよ」

「だからっ……」

「分かった、後で葉もしてもらえばいいじゃない?」

「え……でもお兄ちゃんはまだ許してくれないし……」


 そういう会話は裏でやってほしいものだ。

 ま、少なくとも2人の仲が悪くないようならそれで十分かもしれないが。

ちょろいんばっかりか。

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