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003  作者: Nora_
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03.『豹変』

読む自己ー

「なんで言が傷つけられないといけないの?」

「何でだろうな……俺も分からないよ」


 ベットに座っている俺の横に座って未だに彼女は涙を流していた。

 申し訳ないが、彼女が俺を思って泣けば泣くほど、何かを言えば言うほど、あいつからされるんだよな。

 だからできればそういう点からも来てほしくないのだが……。


「ほら、もう血出てないだろ? 大丈夫だよ」

「……ふみゅ……」

「いつもありがとな」


 お礼を言いつつ彼女を抱きしめてから部屋の外に出てもらった。

 こちらを不安そうに見つめる彼女にこくりと頷くと、1回葉の部屋の方を睨んでからとぼとぼと階段を下りていってくれた。

 それから少しして葉がやってくる。


「ねえ、何で兄貴が悪いのに茜さん使ってるわけ?」

「茜が優しいからだろ」

「手、見せて」

「……ほら」


 最初は優しげに触れていた彼女は俺の傷口を爪で弄りだす。


「ちゃんと洗わなかったのね、ばい菌が入ったらどうするわけ?」

「……消毒するよ後で」

「じゃあその前に新しいの作ろうか、二度手間になっちゃうもんね」


 ポケットから取り出したのは……サバイバルナイフ、と。


「そんなのでやったら犯罪だぞ」

「嘘だよーやるわけないじゃない、でも、口答えしたから腹蹴りはするわよ」


 倒れてもいいように俺はベットに寝転んだ。

 すると見惚れるくらいに綺麗に足を垂直に上げて踵落としをしてくれる妹様。


「……………………ふぅ、もう……いいか?」

「ええ……」


 妹が部屋に戻って1階へと直行し外に出る。

 痛む腹を抱えながらいてぇええええと内心で叫びつつ走るしかできなかった。


「……言」

「まだ外にいたのか……」

「蹴られたんでしょ? ……盗聴器」

「あ、本当にあったのか?」

「だって、言の部屋でやられることが多いでしょ?」


 両親が帰ってきたら一応不味いと考えているのだろう。

 んなこと考えなくても結局どっちもあいつの味方しかしないというのに、律儀な女としか言えない。

 もし仮に同じことをあいつにしたら、腕1本消えるかもしれないな。


「ねえ、家に住んでよ、傷つく言を見たくないよ……」

「悪いが無理だ、茜と関われば関わるほど俺が傷つくだけなんだ。つまり逆効果なんだよ」


 恋愛対象として見られないとか言うのは嘘だ。

 それをしたらあいつは何でも簡単に壊すし傷つけてくるから遠ざけたいだけで。

 下手をすれば対象が彼女に移動することもある。

 それだけは避けたかった。


「学校でも見て見ぬ振りをしてくれ、それが1番俺のためになることだ」


 じゃあなと言って家に戻る。

 門限があってそれを超えて外にいると殴られる蹴られるご飯も食べられなくなるんだ。

 しかし、家を出たのが間違いだったことにすぐ気づいた。

 俺が大切に使っていた音楽プレーヤーがバキバキになっていた。

 葉と違って10円の小遣いをずっと貯めてやっと買えた物が無残な姿になっているのは中々堪える。


「駄目でしょ? ちゃんと家にいなくちゃ」

「……悪い」

「今日はご飯無しね」

「……ああ」


 リビングから出ようとしたら背中を蹴られて扉に思いきり衝突する形となった。

 すまない、悪かったって呟いて扉を開けて廊下に出る。

 今日買った購買のパンだって10円を貯めて買った物。

 それ以外の日はほぼ昼飯を食えないまま生活していた。

 そもそも両親の心配は必要なかったのだ。

 だって一緒に暮らしてはいないのだから。

 つまり、こいつが問題なだけで両親は優しいし小遣いだってきちんとくれていた、暴力を振るうどころか止めてくれるくらいだった。

 しかし、あまりの娘の豹変ぶりについていけず、出て行った形となっている。

 金だってきちんと振り込んでくれているが、管理しているのはこいつで。

 逆らえば日に食えなくなることだってザラではない。


「本当に……何で、だよなっ」


 本当にどうしようもなくなってあいつを殺したいという話を茜にした時、彼女が「駄目っ」って言ってきてなければ俺は今頃刑務所にいたんだけどな。

 とにかく昼食えててよかった、腹減りすぎてたら授業もまともに受けられないからな。




 翌日の昼休み、金がなくて突っ伏していると前に誰かが座った気配が伝わってきた。

 俺の机の端を2回タップし「ご飯食べないの?」と呑気に聞いてくれる。

 んっと伸びをしてすぐに失敗を悟った。


「高橋君、その手の傷はなにかしら?」

「こ、工作が趣味なんだよ、よくカッターで切ってさー」

「カッターね」

「な、ないからな? 自傷癖とか」

「じゃあ他人にやられたのね」


 あ……墓穴をほってしまったようだ。


「そんな手であんな可愛い子の頭を撫でているの?」

「……やっぱ汚いか」

「そうは言ってないわ、七瀬さんは知っているの?」

「ああ……まあな」


 優しいあの子と関われば関わるほど俺が傷つけられると分かっているが、あの子は優しいから放っておけないんだろうこちらを。


「誰にやられたの?」

「……言えない、悪い」

「ならその傷のことはいいわ、なんでお昼ご飯を食べないの?」


 体育倉庫に閉じ込められてなければこの厳しそうな女の子と関わらなくて済んだのかと考えたら、溜め息がこぼれた。


「……今月の小遣いを馬鹿みたいに使ったからだよ。月の初めに一気に渡されてそれを工夫して使うのが高橋家の俺の家の決まりなんだ、だからこれは何もおかしなことじゃない。心配してくれてありがとう」

「その一気に渡される金額の合計は?」

「細かいな……310円」

「なっ……それじゃあ購買のを2回か3回買ったら終わりじゃない……」


 一気にってのも嘘だ。

 1日に渡される金額が10円で、昨日で100円貯まったから昼飯を買った。

 我慢するつもりだったが……その前の日から何も食べていなかったのでできなかった。


「バイトは駄目なの?」

「……無理だ、放課後働こうにも門限がある、18時」

「……破ったら?」

「そうだな、夜飯がなくなるな。ついでに言えば朝飯はそもそもない、勝手に調理しようにもそれをしたら次の日もなくなるだけだ」


 本当は傷つけられるからできないだけだが、細かいことを言う必要はないだろう。

 話はこれまでにして俺は突っ伏した。

 空腹に賑やかな声は突き刺さるものの、皆が悪いわけじゃない。

 悪いのは俺とあいつ、ただされだけでしかないのだ。

 拒絶オーラを感じ取ってか佐藤が話しかけてこなかったのが救いだった。

 



「待ちなさい」


 帰ろうとした俺を彼女が止める。

 土下座でも何でもするから帰らせてくれと伝えたのにそれでも駄目だと言ってきた。


「何でだよ」

「あなたを家に帰らせない、今日から私の家に泊まりなさい」

「それは無理なことだ」

「何でよっ?」

「だって」


 廊下にあいつがいるんだ、できるわけがない。

 こう言ってくれるってことは彼女も優しいんだろうが、優しいからこそ巻き込みたくない。


「兄貴、帰るわよ」

「ということだ、じゃあな佐藤」

「待ちなさい、あなたが原因ね?」

「あの、邪魔したら兄貴が傷つくだけですから」


 首を左右に振ってからもう1度別れを告げて階段を下りた。

 靴に履き替えて校舎から出ると葉がとたとたと追ってくる。

 これだけ見れば美少女で可愛いんだけどな……。


「兄貴、余計なことしないでよ」

「……俺から言ったわけじゃない」

「あっそ、どうでもいいけど。でも、見ちゃったから今日も腹蹴りね」


 気持ち悪い……ぶん殴りたくなるくらい魅力があるなこいつは。

 しかも人気がないと分かったら外でもしてくれるんだから質が悪いとしか言いようがない。

 しかし俺は1つ決めたんだ。

 切られても蹴られても殴られても大切な物を壊されても。

 決して声を出さないって決めていた。

 勿論、茜や佐藤に手を出した時がこいつと俺の最後ではあるがな。

うーん、勢いでばっと書いてみたけど

こういう殺伐のって書きやすいんだけど収拾をつけにくいんだよね。

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