26.『最低』
読む自己。
「なんだ、こんなものなのね」
濡れたままぼけっと立ってたら凛がそう呟いた。
こんなものなのね、か、俺も同じ気持ちでしかない。
「学校云々のことは嘘だったけれど、されてみたらこんなものなんてね」
「つまり、俺もお前も互いを好きじゃなかったわけだ」
キスしたことを後悔することはない、寧ろしてよかったとすら思っていた。
このなんとも曖昧な関係をはっきりさせるには必要だったのだ。
「すっきりしたわ」
「そりゃよかった」
無理しているようには感じられない。
当たり前だ、俺はもう1人の高橋ではないのだから。
「帰るわ、冷たくて仕方ないもの」
「おう、気をつけて帰れよ」
彼女を見送って背を向ける。
歩くと黙ったままだった唯が横に並んできた。
「ねえ、なんで2人ともそんなにあっさりとしていられるの?」
「え? あーいや曖昧な状態から変われたからだろ多分」
「……私とキスしてなにも変わらなかったら同じ対応をするの?」
「そうだな、抱きしめることよりは1歩踏み込んでいて、体を重ねることよりは1歩手前の行為だ。それで大して感情が変わらないなら好きじゃないってことだろ」
意味はないが傘を渡してくれたので手に持って彼女がこれ以上濡れないよう傾けてやった。
「するか?」
「いい……少なくともあんな状態の凛さん見てからじゃ怖いよ」
「そうかい、帰ったらさっさと風呂入れよ」
帰宅、彼女には洗面所に行かせて俺は玄関に居座ることにした。
唯と話していた葉がこちらへやって来る。
「お兄ちゃんキスしたって本当?」
「ああ、それでなにも変わらなかったよ、あいつもあっさりしてた。だから家に戻ってくることはないぞ、それと、一応俺も動いたんだからおかず減らすとか責めるとかやめてくれよ」
「……凛お姉ちゃんといたかったな」
「どっちにしろ、あのときしていたとしても同じ結果になったさ」
今日か先日か、という差でしかない。
真冬の夜のなかキスをして別れなんてそれっぽじゃないか。
あのときそのままキスをして消えられるよりかはマシな気がする。
少なくともなにかをしてから関係が消滅したということが俺には嬉しかった。
だって中学生のときは何度も言うが興味すら抱かれなかったから。
それが多少でも興味を抱かれて、キスして本当のところが分かって関係が散ったというだけだ。
「お友達もやめちゃうの?」
「さあな、向こうが近づいてくるなら普通に接するぞ」
ただ相手を特別な意味で好きになれなかったというだけで、そんな完全に関係を絶とうとはしない。
俺も彼女と同じで「なんだこんなものか」というのが感想だったわけだし、ショックはなにもない。
もっとも、それは凛の方から近づいて来た場合の話で、自分から動こうとは考えてはいなかったが。
「おかしいなあ、あれだけべったりとしていたのに」
「そうか? うーんまあ、最近のを見ればそうか」
抱きついてきたり抱きしめ返したり、でもお前らが後悔しないならと言い続けてきたわけだしな。
いまがよければいいと彼女だって納得しそれをしていたわけで、だったら後腐れもないわけだ。
「最初から好きじゃなかったのかなあ」
「どうだろうな、一緒に寝れるのは逆に考えれば男として見ていないと捉えられるけどな」
幼馴染みたいな感覚、かな。
幼稚園を卒園し小学生低学年の頃には茜とも寝る機会は多くなったが、俺には1度も「言君好き」なんて言ってくれなかった。あのときの茜と現在の凛は同じような心理状態となるのかね、知らないけど。
「まあ、これですっきりしたよ、唯でてきたし風呂行ってくる」
やめる云々は嘘だと言っていたし不安のタネはもうない。
洗面所に行って服を全て脱いで浴室に入る。
今日は流石に洗わないで入るということはできなかったので温かい湯をかぶって洗うことにした。
木曜日。
教室に行くと意外にも彼女は普通に近づいて来て言う。
「高橋蓮君と関わりたいのだけれど」
「おう、連れてってやるよ」
というわけで彼のクラスまで輸送。
男友達と会話していた蓮を手招きし廊下へと連れだした。
「蓮、佐藤がお前と関わりたいんだってさ」
「え、佐藤さんが?」
「あとは2人でやってくれ」
教室へと戻ろうとしたとき唯が階段を上ってきた。
「来るの遅いぞ」
「朝は弱くて……それで凛さんは?」
後ろを指差してから教室に入る。
なぜか彼女も来たのは予想外ではあるが。
「高橋君と……なんでだろう」
「分からない」
俺と過ごして格好良いに気づけたのかもしれない。
「バスケ集中できてるか?」
「うん、あ、他のボールでも結構綺麗に入るようになったんだよ?」
「おお、よかったな! なんでも一生懸命になれる人間は素晴らしいよ」
波風立てないよう生活したいなんて言い訳をしていただけだった。
ただ単に自堕落な生活をしているだけでしかないのに。
「言、少しいいかな?」
「おう、悪いな唯」
「ううん、行ってらっしゃい」
蓮と一緒に廊下へとでる。
別にどこかへ行くというわけではなかったらしく教室の壁を背を預けこちらを彼は見た。
「佐藤さんが家に住みたいって言ってきた」
「うーん、自分の家が嫌いなのかもな」
「一緒に住んでなかったんだね」
「ああ、日曜日からな」
「どうしたらいいと思う? 自分の家が嫌なら住ませてあげるべきかな?」
「そこはまあ蓮次第だとしか言えないけどな」
うちは馬鹿みたいにお金が振り込まれていたしなにも問題はなかったからよかったが、蓮の家の経済状況次第じゃないだろうか。
「それで佐藤は?」
「トイレ行ってくるって」
「あいつトイレ好きだな、でもまああんまり流されるなよ。したくないなら、無理なら無理ってきちんと言ってやるべきだ」
またでていくかもしれないし、余計なトラブルに巻きこまれる羽目になるかもしれないから。
「そうだね。ところで……好きな人できた?」
「いいや、昨日あいつとキスして好きじゃないって分かった」
「き、キスしたんだ」
「あ、勘違いするなよ? あいつが軽い人間というわけじゃないからな」
あいつから求めてきたことであったとしても、俺が悪く言われるぶんにはどうでもいい。
口撃には耐性がある、耐性がなければとっくの昔に人生からフェードアウトしているだろう。
「それは分かっているよ、しなければならない理由があった、だよね?」
「いや、俺が無理やりしたんだよ、それで見事に嫌われて終了だ」
「嘘つきだね言は、言がそんなことする人間じゃないって俺は分かってるけど」
「買いかぶりすぎだ、俺はまともな人間じゃない。だって優しくしてくれたお前を勝手に嫉妬して憎んでいたくらいなんだぜ? 手前が努力しなかっただけだというのにお前の才能や魅力にだ。だから中学時代はイライラしていただろ、それがなによりもの答えだと思うけどな俺は」
おまけにどちらに対しても思わせぶりな行動をする優柔不断野郎が俺だ。
「変なことを言わないでくれるかしら」
「変なことって?」
急に来たと思ったらそんなことを言うお前の方が変だと思うが。
「私から求めたことじゃない、被害者面するつもりはないわよ? 寂しくて甘えていたのも本当のこと、それでも分かったのよ、あ、この人には響いていないのねと。その証拠に、あなたは全然ドキドキなんてしていなかったでしょう?」
「そうだな、心地良さはあったけどないつでも」
「それも一種の信頼ではあるけれど、少しもドキドキしないなんておかしいでしょう。それに……キスをしてもあなたは同じだった、もう少し違う態度を見せてくれると思ったのよ?」
「あ、それで「こんなものなのね」って言ったのか」
「ええ、あそこで反応が変わってくれていれば私だって……でも、終わりなのよね? 脅迫によるキスだったとしても変わらなかったら終わりなのよね」
ということは無理していたってことかよ。
女心が複雑すぎて分かんねえ、俺が蓮だったらどんなに楽だったか。
「佐藤さんは言のことが好きなんだよね?」
「抱きしめさせるなんてほいほいさせる女じゃないもの、彼だからよかったのよ」
「だったらもっと素直になろうよっ、言は少しアホなだけだから!」
「アホて……というかなんだよ、本当は好きだったのかよお前」
だったらキスしたときに泣くでもこちらを叩くでもしてくれりゃあ……。
「あなたからするって言ってくれたのに……キス拒まれて悲しかったのよ本当に。……だけどそれは私だけだったのでしょうね、だってあなたは話しかけてもこなかったわけだし」
「それは……逃げたくなるくらいの相手から来られたら嫌だと思ったから……」
また曖昧な関係に逆戻りになったことに溜め息をつく。
「言君」
「あ、悪かった――」
おい待てよ、横には蓮がいて廊下には他にも人間がいる。
蓮が動けば友達は気になるし凛といれば女の子だって気になるだろう。
だというのに、あろうことかここでキスするなんて正気の沙汰じゃない。
「……どう?」
「どうってお前は馬鹿かよ!」
考えなし、綺麗なのは見てくれだけかよ結局!
「唯さんに負けたくないのよ」
俺の後方を指差しそう言ってのけた彼女。
そしてどんな偶然だよと内心で吐きすてる。
「……終わったんじゃなかったんだね、もしかしてこれのためのフラグだったのかな」
「違う」
「いいよべつに、2回も目の前でキスされればさすがに分かるよ」
「俺のせいなんだ、俺が無理やり……」
互いを見ないで俺らは変な会話を続けていた。
少なくとも凛にダメージがいかないよう振る舞い続ける必要がある。
「言、それは無理があるでしょ、だって俺も横で見てたんだから。それに俺は言が無理やりする人間じゃないって分かっているし、いくら周りをそういう風に納得させても変わらないよ」
「でもぼっちだった俺とは違うんだぞこいつは、いまだって沢山の人間が見てる、イメージ低下や心無いことだって言われるかもしれないんだぞ?」
こんなことを野次馬の前で言っている時点であまり意味はないが。
「こんなところでキスなんかした佐藤さんは確かに悪いかもしれないけど、もし悪口なんか言う人がいたら俺が絶対に許さない。だってなんの権利があって人のことを悪く言えるのかな、自分が完全に素晴らしくて一切間違ったことをしていないならともかくとして、微小でも間違いを犯している人に相手を貶せる権利なんてないでしょ。俺らは人間だしふとしたときに犯しているかもしれない、完璧人間なんていないんだよどこにも」
無理があると思うけどな、いくら蓮が人気であったとしても結局は表面上にしか周囲に影響を与えられなで終わるだけだ。だって縛る権利だってこちらにはないのだ、それは相手が蓮でも国のトップでも同じことで。
「べつに軽い人間だと思われても構わないわよ」
「お前は黙ってろ、誰のせいで蓮も俺もこうしていると思ってるんだよ」
「そもそもあなたが少し態度を変えてくれれば、ここでする必要はなかったじゃない」
あー空気と流れ読めねー奴ー。
「私はこの人もう2回もしたわ! だって好きなんだもの、仕方ないじゃない! 好きでキスしたことは後悔していないし悪口言われたってべつに構わないわ!」
「ははは……強い人だね佐藤さんは」
「あら、あなただってこれくらい思っている相手はいるんじゃないの?」
「残念ながらいないんだよねそれが」
「意外ね、七瀬さんと仲良いものだと思っていたけれど」
「茜ちゃんはいま言に振られて傷心中だからね」
振ったのかあれは……あ、でも、凛と唯のことしか考えなかったのは確かだしと納得する。
そういえばと唯はと確認してみたら後ろにはもう後ろにはいなようだった。
こっちに彼女が教室があるというのにこれは……。
「佐藤、俺は唯を追ってくる……あと……」
「あ、そういうこと……分かったわ。つまり、2回しても響かせられなかったということよね」
「……悪い、あとありがとな」
さてどこだと考えて俺は上へと向かうことにした。
階段を1段ずつ踏み進んで屋上へと続く扉の前で立ち止まる。
「……どこ行くの」
「あ、ま、誰かさんを探しに来たんだが……どうやら屋上にはいないようだ」
取っ手から手を離して体操座り少女を見つめた。
「言……ここでキスしよ、それで終わらせるの」
「……お前がいいなら、まあ分からないけどな終わるかなんて」
先程あいつに感じたのは外面が綺麗なだけ、というところだった。キスされても変わらない、柔らかいくらいにしか感じなくて。
「唯、後悔しないか?」
「……うん」
よろよろと立ち上がった彼女の両肩を優しく掴み軽く口付けをする。
「えへ……」
「あ……」
小さく柔らかい笑みを見せてくれた彼女にいまドキリとしたような……していないような。
ただ、少なくとも凛にされたときとは違うのは確か、か?
「……えへへ、ありがと」
じゃあと階段を下りていこうとする彼女の腕を掴んで止めた。
「ど、どうしたの?」
いやそれだけではなく抱きしめていて。
彼女を自分から抱きしめたのはこれが初めてで。
「……やめてよいまこんなこと、失恋……したんだから」
「……なあ唯、俺はさっき凛が言ったみたいに2回あいつとキスをした……というか見てたよな唯は。で、だけど……そんな俺でも受け入れてくれるか?」
「え……だ……って凛さんのことが」
「あー……遠回しな言い方だったけど佐藤が察してくれたよ」
雰囲気や表情にでていたのかね、……一応後悔しそうならやめろとは言って彼女も了承してやっていたわけだが、それでも弄んだことには変わらない。
「保険かけていたみたいなものだろ……だから無理なら断ってくれ」
抱きしめるのをやめて彼女と正面から見つめ合う。
「……他の人と簡単にキスする人と付き合ったら私も軽い子認定されちゃう?」
「あーないとも言えないな、まあお前は物理的に軽いけど」
「さっき凛さんが言ってたよね、好きだからキスしても仕方ないって」
「あ、唯は俺以外とキスしたことないのか?」
「当たり前だよ……バスケをしていないときは怖いんだから」
男が怖いのか? ……無理しやがってと笑った。
「そうか、だったら言う必要ないよな、それをしたということは、だろ?」
「うわーでも悪口言われたら嫌だなー」
「俺は言われ慣れてるけどお前は無理そうだな本当に」
「守るから大丈夫だ、とか言ってよ」
「俺みたいな雑魚で屑が守れるかよ、一緒にいてやるくらいしかできないな。そしたらよりイメージが悪化するだけかもしれないな」
言い方は悪くなるが唯は人気者というわけではないのであまり注目されないのではとも考えていて、……相手が俺なら尚更のことだろう。
そう、全ては勝手に悲観していただけ、クラスメイトは全然俺になんて興味を示してないのだ。
だから、こっちについては心配する必要はあまり感じなかった。
「でもさ、そもそもその子の家に住んじゃうような子だし軽いのかもっ」
「楽しそうに言うなっ、普通はおかしいんだぞ!」
「付き合ったら、さ……一緒のお部屋で寝ていいの?」
「全部お前次第だよ、自由だ」
俺に選べる権利なんてやはりなかったのだ。
いつだって相手次第、こうして隠した左手を握って彼女に影響を与えられることを願うしかできない。
「というか、私って言のこと好きなの?」
「お……はは、今日までありがとう」
「冗談、だって……あとは私が答えなければいけないんだよね?」
「そうだな、唯が好きにすればいいんだよ、俺が佐藤にしたようにな」
彼女は胸の前で両手の指を組み合わせてギュッと握りしめた。
「言、本当にいいの?」
「いや、俺が聞いてるんだよ」
「……好き」
「ふっ、ありがとう」
「んーでも全然アドバイスしてくれなかったよねーいつも簡単に惚れたとか綺麗とか言ってるだけでさー」
「い、いまじゃなくてもいいだろ……」
スマホで時間を確認するとHRまで15分は残っていた。
一応少し早めに戻らなければいけないので残りは10分か。
「しかもレギュラー目指して頑張っていたのに、だからなれないんじゃないのかっ、とか言ってきたし」
「あれはお前が馬鹿なことして風邪引いたから……」
「しかもしかも、バスケ以外のときの私は興味ないとか言った!」
「言ったのは事実だからなにも言い返せねー……」
それでも彼女はまだ言い足りないのかぷりぷりとしていた。
もしかして今更になって不満を思い出し振られるのではないかと構えたら抱きつかれる。
「でも練習には付き合ってくれたし……いつも感謝してたんだから」
「ツンデレかよ……」
小さい体を抱きしめ返しつつ「ありがとな」と言っておく。
「もう戻らないとな、続きは昼休みにしよう」
「……離れたくない……けど仕方ないよね」
「もうフラフラはしない、大丈夫だからそこだけは安心してくれ」
抱きしめるのをやめ手を繋ぎ下っていく。
「振ってすぐに違う女の子とキスなんてひどいわね」
「うわぁ……」
どうやら盗み聞き及び盗み見されていたようだ。
「そう嫌な顔しないでよ、唯さんおめでとう!」
「あ、ありがと……」
「言君、少しいい?」
「ああ」
手を離して手招きしてきた彼女に近づくと……。
「言、最低」
「ち、違うだろ……いまのは」
「ふふふふひゅ……ごほごほっ……ふぅ、私は悪い女の子でいいのよ、絶対に諦めないっ。でもいまのところは教室に戻りましょう」
くそこいつっ、今更気持ちのいい顔で笑いやがって。
ぷりぷり唯と別れて教室に戻る。
ざわざわはしていなかったため安心できたが……凛が面倒くさい存在になるなと溜め息をついた。
20時20分、俺らは家に帰ってきた。
リビングに行くと――
「こんばんは、遅かったわね」
「お前……」
見たくない人物がいて崩れ落ちた。
ただ彼女が勝手に来ていただけなのに唯が足を優しく蹴ってくる。
「安心しなさい、住んだりはしないわよ。今朝は悪かったわね唯さん、大丈夫、もうしないわ」
「凛さん、私の言に手をださないで」
「ええ、いまいるのは葉ちゃんと会ったからよ、お世話になったのに全然お礼も言わずでていってしまったからお礼がしたかったの」
「そういうことか……佐藤……凛、これまでありがとな本当に。ほら、これ飲めよ」
いるかもしれないからと買ってあったジュースを彼女に手渡した。
……気泡が見えるというのに警戒せずキャップを開け飲む彼女に笑いそうになるのを堪えつつ眺める。
「……うゅ……た、炭酸じゃない……」
「お前には悲しそうな顔よりそういう顔が似合う」
「意地悪な人ね、でも……そうかもしれないわね。後悔はしていないわ、あなたを好きになったことも寝たことも抱きしめたこともキスしたことも、ありがと言君っ」
「ああ、送ってくから」
「いいわよ、すぐ近くだもの」
「でもなあ……」
「優しくされたらキスしたくなってしまうわ」
彼女は「唯さんに優しくしてあげなさい」と言ってリビング及び家から出ていった。
「言、意地悪はだめだよっ」
「悪い、風呂入ってこいよ」
「うん、入ってくるっ」
凛がああいう性格で本当によかった。
もし最後まで謙虚でいてくれたなら……いや、考えても意味はないか。
唯と決めたのなら彼女だけを見ればそれでいいと俺はそう思った。
うん、ま、唯さんということで。




