01.『綺麗』
読む自己ー
作品の内容がワンパターンなので注意。
物語もなくただ好きになって終わるだけだから注意。
喋るだけでイベントも特にないから注意。
俺の名前は高橋言。
現在の居場所は薄暗い体育倉庫の中となっている。
扉を開けようとしてもガシャガシャ音を立てるだけで、動く気配は感じられない。
体育の後そのままと閉じ込められたため、スマホで時間を潰すこともできなかった。
虐めを受けているというわけでもなく、俺がまだ片付けている最中に閉じられてしまっただけだ。
だから適当に地面に座ってゆっくりと過ごしていた時だった。
ガチャガチャと音が聞こえてすぐに扉が開く音及び光が見えたのは。
内側との差に思わず目を細めた。
落ち着いてきて数回瞬きをしてから開けてくれた人を見ると今度はあまりの綺麗さに呆然とした。
「やっぱりここにいたのね」
顎だけで出ろと合図をされてゆっくりと外に出た。
大人しく従ったものの俺はこの女の子とは面識がない。
腰くらいまで伸ばした髪が綺麗だなーとか、胸もでかいなーとか、腕や足が細いなーとか、ジロジロと眺めてみてもやっぱり分からないままだ。
「ありがとな……誰かは分からないけど」
お礼を言って教室に戻ろうとしたのだが、気づけば俺は青空を眺めていた。
少しして痛みがやってきて顔を顰めた俺を見下ろして彼女が言った。
「土下座をしなさい、この私が助けてあげたのだから」
「あ、おう、分かった」
彼女の前でご下座をして「ありがとうございました!」と真面目に感謝を伝えた。
だって彼女がいなかったらあのまま夜を越すことになっていたかもしれないのだから、助けてもらったのならお礼を言うのが当たり前だろう。
「え……普通する?」
「え、だってあんたが求めてきただろ? ところで、どうして開けてくれたんだ?」
「どうしてって……先生が探してたからよ、嫌だったのに頼まれたら仕方ないじゃない」
「そりゃ悪かったな、俺のせいで無駄な時間を使わせてしまって申し訳ない本当に! それじゃ戻るわ」
教室で制服を着て鞄を持ちそのまま教室を後にする。
体育が最後の時間で良かったと心底思った。
だってやむを得ない形とはいえ、無断で欠席とかよくないだろう。
靴に履き替え歩いて行くと先程の彼女がこちらを睨んで立っていた。
「ま、まだ、不満があったのか?」
「そういうわけではないわ、一緒に帰りましょう」
「は? あ、俺、あんたの名前も知らないんだけど」
「……同じクラスなんだから名前くらい覚えていなさいよ……佐藤凛よ」
「あー! あの佐藤か!」
人気だけどいつも厳しくて近づきがたいと言われているあの佐藤凛か。
いや……あくまでこれはクラスメイトが言っていたのを小耳に挟んだだけだが。
そういえばこんな子がクラスにいたっけかと思いだしていた。
全然関わりないし何ならクラスメイトとも全然関わりがないので覚える必要がなかっただけだ。
「どういう風の吹き回しなんだ?」
「別に一緒の方角なのだから問題はないでしょう?」
「え、あ、そうなのか? まあいいけどさ、俺としてはこんな綺麗な美人と歩けて嬉しいからな」
「いいから行きましょう」
で、歩いていたのだが、その割には彼女の雰囲気はおかしなものだった。
学校から離れていく度に落ち着きがなくなる、何度もきょろきょろと見回す、俺を見て「ど、どこ連れていくつもりっ?」なんて言って涙目になっていた。
俺は途中を足を止めて彼女と向き合う。
「一緒の方角って嘘だろ? 知らねえ所に行くと迷子になるから止めておいた方がいいぞ」
「そんなわけないでしょう? いいから早く行きましょう」
「俺の家にか?」
「……そんなわけないでしょう?」
「変な言い方しないでさ、別にストレートに聞いてくれれば教えるよ」
友達0の俺にとって彼女みたいな子が友達になってくれればと密かに期待を抱いているのだ。
「土下座しなさい、私に偉そうに言える立場だと思っているのかしら」
「はいはい、これでいいですかい?」
「……だから何でするのよ!」
「俺は佐藤と友達になりたいからだ、そのためなら家を教えてもいいし求めるなら土下座だってするぞ?」
「……プライドとかないの?」
「ないな、そもそも友達0の時点でな」
流石に靴を舐めるとかは少し汚いし無理だがと重ねておいた。
「それに今回もそうだけどさ、土下座すると佐藤のパンツが見えるからな」
「こ、このくそっ!」
「嘘だよ、早く行こうぜ」
うちの高校のスカートは脛より長くなっているので見えない、うん、見えない。
家に着いたので鍵を開けて中に入る。
「おい、どうした?」
「……いいのかしら」
「いいよ、別に減るもんじゃないしな」
リビングに入れて飲み物をの準備をした。
女子はジュースの方が……適当に余っている炭酸をコップに注いで彼女にそれを手渡した。
「ありがとう……うゅっ、た、炭酸じゃないこれ!」
「あ、駄目だったのか? まだ口つけてないからお茶飲めよ」
彼女からコップを奪って自分のを手渡す。
「炭酸飲めないとかおかしいな」
「……昔から……苦手なのよ」
「あ……悪かった、今度の時はちゃんと聞いてからにするよ」
それにしても何故俺の家に来たかったのだろうか。
綺麗な彼女が興味を持つ相手にしては微妙だろう。
友達もいない、運動及び学習能力もあまり高くない、顔もよくない、性格も……自分で言ってて悲しくなるが、とにかく平凡より下だと思っている。
クラスや他クラスや他学年には沢山のイケメンがいるというのに。
「それで? いきなり知らない男の家に行くなって教えられなかったのか?」
「あなただけなのよ、友達になっていないの」
これだから人気者は困ると溜め息をついた。
「それでなってくれるのか?」
「なってあげてもいいわ、でもそのかわり条件があるの」
「言ってみろ、佐藤は助けてくれたからな」
「1日1回必ずどこであったとしても私が求めたら私を抱きしめてちょうだい、土下座をできる人なら簡単だと思うのだけれど」
「悪いがそれは無理だな、そういうことは気軽にやるべきじゃない」
至極最もな返しだと思ったが佐藤は驚いたような顔をし目を見開いてこちらを見ていた。
「自分で言うのもおかしいけれど、私を抱きしめられるのよ?」
「駄目だ、それが条件なら友達になれなくていい」
「あ、そう……」
「おう、今日は本当にありがとな! 佐藤のおかげで家に帰ってこれたよ」
鞄を持たせて触れないようにしつつ玄関まで彼女を押しやる。
「そんな無理矢理追い出そうとしなくてもいいじゃない」
「佐藤はもっと自分を大切にしろ、本当に感謝しているんだからさ。そんな子が1つのミスで犯されたりしたら嫌だろ、クラスメイトなら尚更そう思うだろ」
「犯されるって大袈裟ね」
「いやいや、まじで頭がおかしい奴らは案外近くにいるかもしれないんだって、気をつけろよ」
彼女を見送ってコップを洗うことにした。
彼女のためにも血迷ったことを言ったのは黙っておいてやろう。
「そもそも言う友達いないし、仮にいても言うつもりはないけど」
ソファに寝転がってスマホを弄る。
どうやら幼馴染からメッセージがきていることに気づき開くと、
『来て』
『早く』
『……今の女誰?』
『来てくれないと本人に直接聞く』
『やっぱり家に行く』
『着いた、今あなたの前』
なんてサイコパスな内容だった。
そして実際に本当に目の前にいるのだから怖い話だろう。
「茜、合鍵使うなよ」
七瀬茜。
まあ彼女も一言で言えば“可愛い”かな。
「うるさい、それよりさっきの女とどういう関係なの?」
「命の恩人なんだ」
「ふぅん、言、正座」
「はいはい……」
俺が正座をすると彼女がそこにちょこんと座る。
「言は私だけ見ていればいい」
「それは無理な相談ですね」
「そうしないと寝ている時に辛子チューブ鼻に突っ込む」
「い、いや……それはないわ」
実際にやりかねないから妥協しておかなければならない。
「これで我慢してくれ」
「あ……ふにゅぅ……」
頭撫でてればこうして大人しくなるので特に問題だとは思っていなかった。
「髪伸びたな、前は肩くらいまでしかなかったのに」
「言が長いほうがいいって言ってたから」
「言ったかな?」
「い……ってた」
短いとか長いとか正直どうでもいいだろう。
あまりにも奇抜すぎては困るものの、似合っていれば似合っていると言うつもりだ。
「言」
「ん?」
「私、告白された」
「多いな……振ったのか?」
今は1月の10日ではあるが、今月に入ってから10件目だぞ。
幼馴染なことが信じられない。
「格好良い人だったから保留中」
「ちゃんと考えてやれよ……いったっ!? な、何だよっ?」
「普通怒るのが正解でしょ? それでその子をボコボコにする流れでしょ?」
「しないよ……どんだけ怖い奴なんだよ俺は」
何で茜の魅力に気づいた奴をボコボコにしなければならないって話だ。
この通り可愛くても基本がぶっ飛んでいるので特別な目では見られないのだ。
残念美人とは彼女のことを言うのかもしれない。
「盗聴器で聞いてたけど、「犯したい」ってどういうこと?」
「盗聴器の件がどういうことか聞きたいですけどね! それに犯されるかもしれないから気をつけろって話をしたんだ同じクラスの佐藤凛に」
「さとう……分かった、明日消しておく」
「だから怖いって! 命の恩人を消すなっ」
一応何かされないよう俺が見ておこう。
何か困ったことがあっても頭撫でておけば大人しくなるしな茜は。
書いていくか。