マリア、王子とお茶会す
エドワード王子とのお茶会です!美男と野獣な絵面!
ある日、突然エドワード王子からお茶のお誘いを受けた。
両親からお見合いの話も首席を譲る話も聞いてはいたが、実際に誘いを受けると妙にソワソワしてしまう。
前世では、母がキャリア重視の人だったので
「恋愛なんて無駄!勉強!仕事!」
と言った感じで私は恋という恋を経験できないままに死んでしまった。
そんな私に訪れた初めての春!
これが浮かれずにいられようか!
今ならば、月の満ち欠けさえも私の思いのままになるのではなかろうか?
そんな感じで結局、お誘いを受けてから1週間ほどずっとソワソワし続けてしまった。
何度も鏡を見ては笑ってみたり、家の中を徘徊してみたりとにかく落ち着かない。
そして、とうとう迎えたお茶の日。
エドワード王子が、初対面だと不安でしょう、と取り計らって下さり、我が家へといらしてくれた。
家の前で出迎えたのだが、馬車から降りて来たエドワード王子は金髪碧眼に透き通るような白い肌で大層麗しく、あまりの美しさに呼吸困難を起こしそうになった。
死因:エドワード王子が美し過ぎ
と書かれるところだった。
そこからお茶を初めてしばらく両親が付き添いながら会話をしたはずなのだが、緊張し過ぎて何も覚えていない。
気が付いたらエドワード王子と2人きりでお茶をしていた。
どうしよう、ヤバい!何か話さなきゃ!と考えていると、エドワード王子はため息を吐きながら口を開いた。
「はぁ、おいお前、言葉わかるよな?」
私はコクコクと頷く。
「いいか?まず言っておくが俺はゴリラを嫁にするような特殊な人間ではない。分かるな?」
グサッと何かが胸に刺さるが、なんとか頷く。
「だが、お前を嫁に貰えば王家と公爵家の関係は安泰だし、今回首席を譲って貰う事を考えれば婚約自体に異論はない。」
あくまで政治的判断での婚約だという事を伝えたいのだろうか?王子も大変だ。
続きを促すように王子を見つめていると、王子は困ったように頭をかく。
「あー、まぁ、いいか。お前口は堅いか?いや、愚問だな。」
愚問ですな王子、私の口はウホしか言えません。
と言いたかったが、ウホしか言えないので神妙な顔で頷くに留めた。
「実はな、弟の方が俺より優秀なんだよ。だから……。」
潰せってこと?!まさか?!血生臭い政争に巻き込まれちゃうの?!
「だから、まぁ、俺はある程度で王子の座を降りて弟を支えてやりたいんだよ。お前手伝ってくれるか?」
すいません、王子!私は心の薄汚れたゴリラでした!何でも!何でも協力します!
という気持ちで必死に頷いた。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか満面の笑みで王子は私に手を差し出して来た。
青い血管が目立つ白魚のような綺麗な手だ。
私は割れ物を扱うようにそっと手を握り返した。
「うむ!では、我々で第二王子派閥結成だ!」
その後、次の試験では負けないからな!という学生らしい話や、行き遅れた令嬢たちから言い寄られる時のプレッシャーからこれで解放されるとかいう王族らしい愚痴などを聞かされながら、その日のお茶会は解散になった。
少しばかり期待した分ちょっぴり切ないが、優しい世界で良かったとしみじみ思いながら王子を見送って私は部屋へと戻った。
その後、何となく私は自室の鏡に布を掛け、ベッドに腰掛けて窓の外を眺めながら夜を過ごした。
新月なのか夜空に月は見当たらなかった。
普通にウホしか喋れないの不便だなと思いました。