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逆襲の西単騎

 

 先日は久しぶりの幸村の登場により、場が混乱したが次の作戦はコマンドー発案の"悪臭作戦(死霊のフレグランス)"に決定した。


 しかし、コマンドーが体調不良で休んだことで、作戦立案書が遅れているため、本日の活動は自由となった。


 部室は各人が自由(フリーダム)に活動している。


 そんな中にあっては、[白雪、参謀長、ゴッド、一年生部員]の四人が、麻雀によって有名アイドルである"羅々 明日美(らら あすみ)"の写真集を賭けて戦っていた。


 コードネームが付けられるのは、幹部のみであり、その他構成員は名前で呼ばれることになる。


 その一年生部員の名は"赤田 大樹(あかだ だいき)"であり、上級生からは"だいちゃん"と呼ばれ可愛がられている。


「では我らのアイドルである、ララちゃんを賭けての麻雀を開始しようか」



 赤田以外の三人は、麻雀においても最強である。ゲームと名のつくものは、大抵が上手い。


 インターネットでの麻雀ゲームにおいては、三人ともに十段であり、校内に敵う者などいない…… ハズだった。


「リーチ」

「リーチ」


 東一局、白雪とゴッドによる先制リーチが入る。


 しかし、赤田はいきなりドラを強打し、三者を驚かせた。


「当たらなければこんな牌、なんでもありませんよ?」


 この男エスパーか? と、言いたくなるように、その後も危険な牌をことごとく通していく。何を切っても全く当たらない……



 そして、場は流局し、その後は赤田の独壇場となり、対局は佳境に差し掛かる。


 南4局の最終局面の状況は、ゴッドと参謀長が互いに持ち点が千点と、点棒がもう持たない(とき)がきていた……


 赤田の戦いぶりから、アンダーテイカーにはトンでもない伏兵が潜んでいたようである。これは一年生の中でも出世頭だろう。


 ただし赤田も例に漏れず、頭は非常に悪い。


 そして状況は白雪と赤田の一騎討ちの様相だが、白雪も厳しい……


 麻雀における最高得点である、役満(やくまん)を赤田からアガらなければ勝てない状況となっていた。



「やるな、赤田!」


 白雪は、赤田を好敵手(ライバル)と認め称える。


「部長こそさすがです。ここまで食らいついてくるとは……」


 赤田も白雪を称賛、認め合う。



 そして、ララちゃんを賭けた最後の戦いが開始された。


 白雪の手には、ここぞとばかりに勝負手が舞い込む。進行次第では役満も成せる手であった。こればかりは、持って生まれたモノが違うのだろう。


 対して、赤田は余裕の表情だ。

 圧倒的な点差にして、対面から白雪を見下ろすかのような印象……



「リーチ!」


 赤田はトップなのにリーチをかけた。

 これは白雪への挑戦であり"舐めプ"といった類いに近い行為である。


 アウトボクシングに徹すれば、まず間違いなく勝利は固い状況で、インファイトの殴り合いを申し込む。



「今計算したところ僕は3巡でアガりますよ。もう止められない」


 赤田は自分が後輩であることを忘れたかのように、白雪や他二人を煽っていく。


 しかし、白雪もこのままでは終わらない。この勝負手…… 逆襲のチャンスはまだ残っている!


 また、その行いはゴッドと参謀長にも火をつけた。


 ゴッドが危険な牌である、南を切り出し、すかさず白雪が「ポン」を宣言する。


 それを見て、参謀長も何かを察したかのように、一枚も出ていない北を切り出した。


「部長。後は任せます……」


 白雪はまたもやポンを宣言し、口を開く。


「お、お前ら。俺に付き合う必要なんてないんだ。死ぬ気か!?」


 ゴッドと参謀長は覚悟を決めたかの眼差しで、白雪を見つめる。


「やはりこの組織では部長が一番でいてもらわないと……」


 そう呟きながら、参謀長は更に東を切り出した。


 白雪、涙のポン宣言を敢行する。

 二人の特攻とも呼べる後押しによって、白雪は役満テンパイで赤田に並ぶ。


 それを受けて赤田の表情が曇った。


「い、今さら何をしても遅いですよ! 僕がここでツモればいい話です」


 赤田が牌の山へ手を伸ばす……


 赤田は牌の感触を手で確認し、さらに表情が曇った。

 それは赤田のアガり牌では無かったようだが、それが原因といったモノではなさそうだ。



 赤田は、引いた牌を震える手で場に置いた……



「ロン! 小四喜(ショウスーシー)!」


 赤田が引いた牌は絶望の"西(しゃあ)"であった。


 白雪の西(しゃあ)単機待ちが炸裂し、この土壇場で白雪が逆転し、勝敗は決す。


 ララちゃんを逃したショックにより、赤田は放心状態(サイコショック)となり天を仰いでいる。


 対して白雪は、薄氷の勝利に冷や汗をかきながらも、勝利の余韻に浸り、ララちゃんの写真集へ手を伸ばした。


「フンッ! 赤田よ、この限定品の写真集は俺が貰っていくぞ」


 表紙のブランド物(ホルメス)のバッグを携えるララちゃんが、まさに白雪へ微笑みかけているかのような光景である。



 そして、白雪が格の違いを見せつけたその時であった。



「ああー! 白雪部長、(アイドル)が居ながらそんなものに鼻の下を伸ばして…… 没収デス!」


 幸村(チェリーキラー)が凄まじい機動で白雪から写真集を取り上げ、部室から去っていった……


 これには白雪も思わず放心状態(サイコショック)、この戦いに勝者はいない。


 結果として両者ララちゃんの写真集を逸し、両者敗北となった。


 こうして日は暮れ、本日の下らない抵抗運動(レジスタンス)はお開きとなる。


 はたしてこのような調子でいつか、陰キャラの逆襲を完遂することはできるのであろうか……


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