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逆襲の同士討ち

 

「昨日さぁ、最悪だったよ~。バトルフィールズでキ○ガイクランに粘着されてボコボコよ」


 クラスのリア充達が騒いでいる。

 白雪は平静そのもので、まるでその言葉が聞こえていないように振る舞う。


 そう、犯人はすぐ傍にいるのだ。


 白雪達は、ゲーマーを32人集め、クラスの陽キャに粘着し萎え落ちさせたのであった。


 また、陽キャ陣営のチームにもスパイを派遣し、リスポーンする度に場所を的確に伝達し、32人が襲いかかったのであった。


 考えてみよう。陽キャ達のようなライトユーザーのパーティーに、陰キャのゲーム廃人が総出で戦うサマを……


 さながら地獄絵図である。


「聞いてくれよ白雪~」


 陽キャ達が白雪にも話題を振る。


「ああ、相手も本当にやることが陰キャだよな。女の子は守れたの?」


 白雪の問いに、陽キャ達はため息をつく。


「いやー、なんか粘着されてサーバー変えても着いてくるから、萎えたみたいでもうやりたくないんだってさ」


 白雪達の完勝である。


「そ、そうか。それは不運だったね」


 当たり障りのない言葉で、本心をひた隠すこの男の精神は、もはや壊れている。


 ここまでの二面性を持ちながら、学校生活を送る様はもはや天性の才能だろう。



「粘着の犯人はこの学校の陰キャドモだと思うんだけど白雪はどう思う?」


 いきなりの核心を突く質問に対しても、白雪はボロを出さない。


「どうだろう。考えすぎじゃない?」


 陽キャ達は、自分たちへの妬みから、学校の陰キャを疑っているようだ。


 百点満点の正解である……


「白雪は文学研究会だよね? 嫌だと思うけどちょっとスパイしてきてくれよ。アイツらならやりそうだし」


 陽キャの一人が指をポキポキ鳴らしている。


 既に自分達の懐には、イケメン風エリート陰キャのスパイがいることも気付いていない間抜け振り……


 さながら二重スパイの様相を呈する。



「オッケー! キモい陰キャ達だし軽く探っておくよ」


 白雪は二つ返事で了承した。


 実は白雪帝という男。


 教師達からも、文学研究会のスパイを依頼されており、白雪としても教師達へのスパイも兼ねている。


 二重スパイではなく、四重スパイという狂気の四重奏(カルテット)が形成されていたのであった。



 文学研究会は何の実績もない陰キャの巣窟である。

 白雪がいなければ、既に教師達からも目をつけられ、解体に至っていただろう。


 部の陰キャ達に文学の素養がある筈もなく……


 白雪が定期的に、活動発表として俳句の研究成果などを発表していなければ成り立たない状態であった。



「じゃあ早速今日探ってみるよ」


「おう頼んだぜ白雪」



 そして、放課後……


 いつもの光景が出来あがっていた。


「白雪部長殿! 昨日の戦いは我々の完勝でしたな」


 そう声をあげるのはゴッドである。


 不気味な笑い声とは裏腹に、自信満々な表情だ。


「皆、昨日はご苦労。だが、問題は他にある!」


 白雪は声を張り上げた。


 部室は不穏な空気となり、白雪の言葉の真意を探ろうとするが、如何せんIQの低い者達の集まり…… 分かる筈もないだろう。


「昨日の戦いにより、奴等(罪深い陽キャ)は、我々(正義の執行者)の犯行だと疑っている!」


 白雪は一呼吸置いて続ける。


「まあ、実際我々が犯人なのは置いておこう。私自らがスパイであるが故に、奴らを騙すことなど造作もないことである。よって作戦を提案する」


「我々の犯行(神の裁き)を陽キャ共に擦り付けようぞ!」


 部室は「オォー」と、沸き立った。


「白雪殿。しかしどのようにして?」


 参謀は口を挟んだが、皆へ即座に内容を説明していく。


 校内には、陽キャ達がFPSの上手さでマウントを取りたい者が複数いる。その者達にアカウントを譲渡し、先日の行動を擦り付けようという腹積もりであった。


 陽キャ達は、運動部で忙しいが、そんな中でFPSも上手いとイキり散らすことができるのだ。


 そう、「おれ勉強してないけど90点取ったわ~」と同様の心理に基づくモノだろう。


 そんな奴らにKD比率4のアカウントを無料で渡せば、喜んで飛び付いてくるに違いないだろう。


 そして、白雪から陽キャ共に他のクラスの○○君のIDだとリークすれば、陽キャ同士でやり合ってくれるという算段だった。


 白雪帝という男…… それにしても卑怯である。

 それも底なしのクズとはよく言ったものだ。


「ではオペレーション"憎しみの同士討ち(デュエル オブ サン)"を開始する」



 大層な作戦名からの、作戦内容は室内でスマートフォンを弄るだけ……


 ゴッドはFPSで見せるフリックショットのように的確に文字をフリックしていく。


 ターゲットはサッカー部派閥とは、相容れない存在の野球部員がターゲットとなってしまった。


 何故か? 野球部はサッカー人気も相まって、サッカー部員に女を取られているからに他ならない。


 輪をかけて、先日の喫煙炎上騒動のため、野球部員も苛立っている。


 それはアンダーテイカーにとっての追い風、いや神風が吹いている!



 そして、野球部員のSNSへアカウントの譲渡を持ちかけたが、喜んで受領したようだ。


 これにて作戦はほぼ完了となる。

 ただDMを送信しただけの作戦なので、些か地味ではあったが仕方がないだろう。


 そして、野球部の相沢氏のSNSプロフィールには、早速受領したIDと戦績画面のスクリーンショットがこれ見よがしに掲載されていた。


 白雪はクラスの陽キャに電話をかける。


「ああ、もしもし。例の件だけどさ、犯人はE組の相沢らしいよ。KD4の有名プレイヤーなんだってさ。多分サッカー部に嫌がらせしたかったんじゃないかな?」



「マジかよ! 白雪、有り難う恩に着るぜ!」


 プツッ……


 電話はすぐに切られた。

 その後の展開は容易に想像がつく。



 そして、そのあとサッカー部が野球部の相沢と喧嘩になったことは言うまでもなく……


 サッカー部は一ヶ月の活動自粛処分となったようだ。


 結果から鑑みて、本日も文学研究会(アンダーテイカー)の勝利である。しかし、終わらない戦いは明日も続いていくだろう。


 虐げられる弱き者(陰キャ)が居る限り……



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