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逆襲の大火

 

 始業無情の鐘がなる。


「オラ! 陰の当番。黒板掃除しとけって言ったろ」


 教師が陰の烙印を押された生徒へ、掃除を指示する。

 指示された生徒は、物言わず黒板の文字を消し、物言わずに席に戻っていく。


 そう、学校は既にさながら地獄と化していたのだ。


 そんな中、桜ヶ丘高校二年A組の教室には一際目立つ生徒がいる。


 神々しささえ感じてしまう程の、艶やかな黒髪に。前髪から覗く目鼻立ちは、凝視された女性が卒倒しそうなほど容姿端麗。


 そして成績は特優、スポーツ万能のパーフェクト振り。


 彼の名は白雪 帝(しらゆき みかど)


 名前からして選ばれし陽の者。


 他を圧倒する存在感。


 陽キャ オブ 陽キャである!





 だが、そんな彼は重大な秘密を抱えていた。


 放課後のこと。


 図書第2準備室へ向けて歩みを進めるイケメンの姿があった。


 陽キャが放課後に行く場所は、体育会系の部室と相場は決まっているが……


 ちなみに、スクールカースト最上位の体育会系部活動は、陰キャの入部は禁じられている(卓球部は除く)。


 図書第2準備室は『文学研究部』の部室である。


 スクールカースト最底辺の陰の掃き溜め。

 そんな場所にイケメンが現れるなど、通常はあり得ないだろう……


 だが、例外は存在する!



 部室へ近付くイケメン。

 出で立ちは堂々としており、自信に満ち溢れているかのよう。



 そして、部室へ近付く足音がドアの前で止まった。


「――合言葉は?」


 ドアの中からは、妙にノリノリな意味不明な言葉が聞こえるが、そのイケメンは動じない。


「顕現せよ! 我、陰の者の尖兵なりッ!」


 カオスである。


 だが、ドアがゆっくりと開いた。


 迎え入れるは、支離滅裂に伸びた前髪から覗く眼鏡。


 この気配、ただならぬ陰の者……


「部長。お待ちしておりました」



 そう……


 文学研究部の部長は、かのイケメンスーパー陽キャである白雪帝なのである。


 陽の中の最上位に君臨する(キング)が、どうして文化部に?


 冷静に考えよう。


 彼ほどの男、もはや陽を超越し、部活がどこだろうが関係ないのではないか?


 陰の者が文化部…… 納得。

 陽の者の最上位が文化部…… 白雪君って頭良いのね~キャ~痺れるゥ~。


 選ばれし者を語るには、もはや理屈ではないのだ。



 部長の白雪は早速だが、椅子に座る。


 部屋は薄暗く、机はまるで会議室のように並べられ、皆が白雪の部長席を注視している。


 そして、白雪が口を開いた。


「今日の作戦…… 手筈はどうかな? 参謀長」


「ハッ! B組の田原を現在ストーキング、いえ、追跡中です。抜かりはありませんよ……」


 白雪は即座に返答する。


「フッ…… 愚問だったな」


 一呼吸の後に、白雪が続ける。


「今日のオペレーション『地獄の大火(サン オブ デッド)』を開始する!」


 すると、会議室にいるメンバー達は全員がスマートフォンを取り出し、SNSを開いた後、じっと微動だにしない。


 何をしようと言うのだろうか……


 部長席にいる白雪は瞳を閉じ、足と腕を組み、何かを待っている様子である。


 すると、一人の男が沈黙を破った。


「捉えましたッ! トレース完了! 総員行動を開始せよ!」


 その刹那…… 白雪が開眼と同時に立ち上がり、腕を天に掲げ叫ぶ。


「時は来た。憎しみの業火で咎人(ヨウキャ)を焼き払うのだ!」


 部室は異様な空気に包まれるものの、部員はスマートフォンを執拗に弄り倒しているのみ。


 なんとシュールな光景だろうか。


 臭いセリフとは裏腹に、何が起きているのか一切が理解不能。



 暫くその光景が続き、白雪までもがスマートフォンを弄り始める。


「部長自らが咎を背負うなど、滅相もございません! 貴方は我々の希望です」


 部員の一人が白雪に駆け寄り懇願、その行動はまさに異様。


 しかし、白雪が部員の一人を制する。


「フッ、俺はお前達の罪も背負うさ。我らは陰の者の尖兵たるぞ!」


「オオーッ」

「お、おお」

「……」


 やはりイマイチ盛り上がらない……



 ――10分後


「素晴らしい…… 我々は十分な戦果(リツイート)を挙げ、作戦(サン オブ デッド)は完了した。総員撤退! 」


 白雪の号令により、ロクでもなさそうな作戦とやらが終わったようである。


「やりましたね、部長! フォロワー千人のアカウントを10個用意した甲斐がありますね」


 白雪はいちいち格好良く頷いた。


 そして白雪が開いているSNSには、大炎上し、大騒動になっている二年B組の野球部所属、田原のアカウントが写っていた。


 相当数拡散された彼の画像は、顔にはモザイクがあるものの、桜ヶ丘高校野球部の生徒が、喫煙していることが分かるようになっている。


「諸君! またも我々の手により、一人の咎人(ヨウキャ)が葬られた…… 良くやってくれた! 追跡任務にあたった者も労わねばな」


 白雪の言葉に皆が、歓喜の表情である。


「では皆。今日のアンダーテイカーの活動を終了とする! 解散!」




 桜ヶ丘高校 文学研究部。


 表向きは冴えない者たちと、白雪が文学を研究する部活動。


 しかし、彼らは別の顔を持つ……


 絶大な勢力(ヨウキャ達)に対抗すべく、絶望に抗うため、秘密裏に作られた抵抗組織『アンダーテイカー』なのだ!


毎日が戦い!

そんな彼ら抵抗者達。いずれは支配層たる陽の者達、ひいては権力に対し、打ち勝つことができるのであろうか……


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