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念力に限界は無いらしい  作者: BNiTwj8cRA3j
二章 命の定義
44/185

3-2

「やぁ、アビー。相変わらずきわどい格好をしているね」


「あ、ら、ミヤビ? ちゃんと、ブラは、つけているの、かし、ら?」



 ドアを開けると、生ぬるい風と、様々な花を擂り潰したような甘ったるい香りが飛び出してきた。置いてある作業台の上には、きらびやかな装飾品が置いてある。恐らくあれが、魔道具。いくつかの本棚も並んでいる。きっと並んでいる本は魔導書だろう。


 ミヤビの言葉通り、きわどい格好をしたお姉さんがそこに居た。

 裸エプロン、に見えるが、実際はそうではない。ただ、作業用の服はズボンだけで、上はブラジャーのみ。その上から丈夫そうな布でできた白と黒のエプロンをしている。あと、指ぬきのグローブ。艶やかで長い黒い髪には、大きなゴーグルが乗っかっている。

 なんだか眠そうな顔をしている。



「うんにゃ?」


「あら、あら。たれる、わ、よ?」



 独特の口調が、なんだか気になる。優しい声、ずっと微笑んだ口元、武器鍛冶のイメージとは正反対の人物なのだが、こいつはこいつで一癖も二癖もありそうな気がする。

 いきなり下着の話をする奴だし。



「あ、ら? そっちの、ぼっちゃん、は?」


「モトユキ。ま、私の弟みたいなもんだ」


「へぇー。かわいい、わ、ね」


「どうも」


「それ、で? 何の用、かし、ら?」


「単刀直入に言うと、魔法具を作ってほしい。ミヤビから、言語の違う人間でも、話せるようになる道具が作れると聞いている」



 もどかしい。ものすごくゆっくり喋る奴だな。

 そう思っていると、にこにこした顔が急に強張ったように感じた。そして、一言、



「大人に対しては、敬語、ね?」


「……すみません」



 ……なんなんだ、今の威圧。

 ふとミヤビの方を見ると、ニヤニヤしていた。「怒られちゃったねー」という表情だった。

 やっぱり、少し変なのか? このくらいの子供は、敬語を使えるのが普通、か。



「でも、どう、して? あなたは、ペラペラ、喋れて、いる、じゃ、ない?」


「僕の連れが話せないんです。ええと、その、僕は昔一回ここに来たことがあるので、喋れるだけで……」


「まぁ、いい、けど。で、も、タダという訳には、いかない、わ」


「え? あ、お金は……」


「大丈夫だよ、もっきゅん。ある程度は持ってきてるし」


「ううん。友達の、頼みだから、お金は、いらない、わ。ただ、『圧縮魔石』を、切らして、いて……ミヤビ、もってな、い?」


「あー、持ってない……」



 圧縮魔石、ってなんだろう。魔石というものを圧縮したやつなのだろうか?



「魔石じゃダメ?」


「だめ、ね。できないことはないけど、すぐに壊れてしまう、わ」


「それって、魔石を圧縮すればできるんですか?」


「そう、だけど……人間の、力じゃ、無理、よ。地中深く、で、採掘、される、の」


「ミヤビ、普通の魔石は持ってるか?」


「うん」



 そういうと、ミヤビは空間の裂け目、恐らくアイテムボックスという魔法で、黒くて大きな石を取り出した。光沢のある、綺麗な石。はっきり言って、黒曜石。

 アルトナダンジョンでも似たようなものを見たな。あの時は黒ではなくて赤や緑だったが、同じような光沢をしていた。魔力を感じ取ることが出来ないから、明確にどれくらい魔力に差があるのかは分からないが、ほぼ間違いなく、あっちで見たやつの方が魔力が大きい。

 まぁいい、やるか。



「何をするの?」


「……」



 俺はその魔石に全体に力が加わるようなイメージをした。地中深くで発見されるくらいだから、相当な圧力がかかっていると予想して、かなり強く。

 すると、その魔石はぐっと小さくなり、白く輝きだすようになった。まるで月の光でも浴びているかのように。アルトナダンジョンにもこの石があったのだろうか。ぱっと見、上層の方の照明として使われていた石にそっくりだけども。



「すごい、もっきゅんそんなことも出来たの?」


「……!?」


「……これでいいですか?」


「え、えぇ。ばっちり、よ」


「ありがとうございます」



 少し戸惑いつつも、アビーは承諾してくれた。

 良かった、成功した。これで成功しなかったら、地面をえぐり返して魔石を探そうと思っていたが、やっぱり地形を破壊したくはない。



「あと、これもお願いできませんか? 『エミーの魔導書』……これの言語が、どこのモノなのかを調べてほしいんです。シューテルではないところの言葉を知りたいのですが」


「……いいわ、よ。いい、けど……あなた、何者な、の?」


「へへー。もっきゅん凄いでしょ?」



 なぜがミヤビが嬉しそうだ。

 能力がバレるのは承知の上だ。どうせ、この人に知られたって特に損はないだろう。俺の能力を利用して金儲けを考えるような人じゃない、と思う。



「……あ、そうだ。アクセサリー、の形は、何に、する?」



 考えていなかったな。

 あ、そうだ。



「ペンダント……で、フェーリフラワーの形にしてください」


「フェーリフラワー? あの、白くて、いい匂い、のする……」


「はい。それで」


「分かった、わ」


「いろいろありがとうございました」


「いえ、いえ」


「意外と渋いチョイスをするんだね、もっきゅん」


「何となく浮かんだのがそれなんだよ」


「んじゃ、アビー、またね」


「また、ね」



 礼儀正しくするのが、何だか久しぶりに感じる。

 俺は一礼をして、そのまま部屋を出る。



「あ、待って、ミヤビ」


「ん?」


「あ、モトユキ、くんは先に……」



 彼女は何かを隠すように俺にそう言った。

 だから俺は、先に部屋を出た。



 ☆



「何? アビー」


「あ、えっと……モトユキくんは、なにか、変な感じが、する、の。圧縮魔石を、造り出す人間なんて、初めて、だわ」


「うんうん」


「それに、アタシが、言葉を、注意したら、すぐに、話せるように、なった……中身は、子供じゃ、な、い」


「おー、凄い推理力……」



「――――あの子、転生者で、しょ?」



「そうみたいだけどね。でも、『幻魔』出身ではないみたいだよ」


「……? なら、一体どこ、から……」


「心配しなくても大丈夫だと思うよ。そんなに、悪い子じゃないと思う。でなけりゃ、私もう、()()()()()し」


「でも、心配、だわ。もう一人、いる、みたいだけど、気を付けてね。何か、あったら、すぐに」


「はぁい」

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