騒動終結:逃亡阻止
とりあえずこの部分だけでも終了させておきます……
とりあえず奴……名前はえぇと、澤西洸だったか。そいつの新たな能力を見たままに和也さんに報告しつつ、地下5階へとやって来た。
こちらは先程とは違い、人が少ないようだ。その少数の人々も、複数人で固まっている様子で、奴を見つけたら楽にドロップキックをぶち込めそうな感じだな。
『今は……1箇所に留まっていますね、隠れているのでしょうか?』
ほぉん、しかし残念だったな、俺がいる限り場所はバレバレだぜ?
『私のお陰ですけどね』
いつもお世話になっております。っと、そろそろ着くか?
『はい、ここでじっとして……ああ、少々面倒かもしれません』
え?何で?反応のある場所はこっちなんだろ……あぁ、そういう。
俺達はとある場所の前で立ち止まる。それが何かと言えば……
「……トイレかよ」
「え、ここにいるの?」
なるほどドロップキックはぶち込めないと。けどまぁ、それなら素直にトイレ入ってぶちのめせば……あー、男子トイレなら雨宮に入ってもらうのはアレか?でもそんな事言ってる場合じゃないし……
『……いえ、違います』
え、何が?
『男子トイレにはおりません』
え?じゃあどこに……おいおいまさか、
『はい。女子トイレにおります』
「女子トイレにいんのかよ!?」
思わず叫んだけど俺は悪くないと思う。普通隠れるかよ女子トイレに!
「はぁ!?そいつ女だったの!?」
「いや男だった筈だ!……けど、もしかしたら女にも擬態出来んのかアイツ……」
でもなんで女子トイレに……?
『単純に、マスターが一番入ってこないであろう場所に隠れたのでは無いでしょうか。先程顔を合わせて慌てて逃げていましたし、マスターのことは記憶していたのでしょう』
あぁ、まぁ……俺に能力を破られて殴られたのは衝撃だったんだろうな。そりゃ警戒するか。
まぁとにかく、雨宮に女子トイレに突貫して貰って制圧してもらえばいけるかな……とはいえ触れられた時点で一時的に消されるからリスクは高いか?
てか一時的に消されるって何気にヤバいけど命に別状とかは無いの?
『全くもってありません。強いて言えば、復活時に全裸になる事くらいでしょうか』
なるほ……は?なんて?
『?……全裸になります』
な ん で ?
『なんで、と申されましても。『消失』の効果は『生物以外に対しては触れた部分から半径10メートルまで、生物の場合全体を消失させる』となっていますので……』
あ、服と本人は別判定……?
『服は生物ではありませんので。服に触れたならそこから半径10m以内の非生物を、人に触れたなら人のみを消失させます。つまり人を消す場合は服のみその場に残ります』
なにそれ傍から見たらめっちゃホラーじゃん……で、復活時も人だけだから全裸と。エロゲか?
「……大葉、何黙ってんの?」
「え?あーいや、女子トイレにいるから対応どうしようかなと……」
おっと、全裸でリスポーンが衝撃的で気を取られた。とりあえず生命的リスクは無さそうなの分かったが、どうしたもんかな……
「……どこの個室に隠れてる、とかは分からねぇが、お前から見てどの辺にいるかは端末で指示できるから、そこに雷撃ぶち込んで無力化して貰えないか?俺は一応出入口を抑えておく」
他の女性メンバーを呼んでもいいが、人の気配を嗅ぎつけられたらまた床に穴開けたり、壁に穴開けしたりとかで逃げられる可能性がある。
ならばさっさと雨宮単騎で突っ込ませた方がいいだろうと判断した。で、俺の役目は他にトイレに入る人物が居ないかの確認と、出入口から逃走した際の捕獲役、になる。まぁ逃げるとしたら穴開けだろうけど。
「了解したわ、指示出しお願いね」
雨宮もそれを理解したようで、あっさり頷くとすぐに女子トイレに踏み込んで行った。
直後、女子トイレから光が漏れてくる。あ、ここセンサーで勝手に光が付くタイプなんだな……
……いや待て、って事は女子トイレに誰か入った事に気づかれたのでは?
『!対象、出入口へ向けて移動してます!』
ちくしょうここの設計者に今度文句言ってやる!
「雨宮、警戒!」
慌てて俺は声を張り上げる。直後、複数の慌ただしい足音が聞こえてくる。
『雨宮様の横を通り抜け、対象がこちらへ向かってきます!!』
ライマの言葉に対し、俺は冷静にいつぞや貰ったスタンガン機能付きの警棒を取り出すと、飛び出し来るであろう相手を待ち構える。
「っ……どいてっ!」
女子トイレから出てきたそいつは、見覚えのない女性の姿をしていて、俺が居ることに驚いていた様子だった。が、すぐさま俺に向けて手を伸ばしながら突っ込んできた。
……逃げないならとりあえず念の為『封印』かけてから『武装術』で……腹部にスマッシュ!!
「ごふっ……!?」
あーんどスパーク!!
「うううううううっ!?」
そうしてあっさりとそいつは倒れ込んだ。
……立ち向かってこずに逃げられてたら面倒だったのに、なんでこっち来たんだろ?
『思いのほか焦っていたのかもしれませんね』
かもなー。
「……あら、終わったの?」
「おう。まだ気絶はしてないから一応近づくなよ」
おっと、雨宮が外に出てきたようだ。『封印』とか使ってるのバレると厄介だしさっさと気絶させて余計な行動取られないようにするか。
首筋にたっぷり流せばいいってどこかで聞いたから、とりあえず首にスタン警棒を当て、バチッ!とやる。
すると、そいつはビクン!と少し痙攣した後、姿が歪み、過去に見た事のある少年の姿へと変わった。
気絶するとスキルが解けるのかね?……ライマ、コイツ気絶してる?
『……あの、私は他人の意識状況等は分かりませんよ?』
あ、そうか、そこまで分かるわけじゃ無いか……
『ですが、スキルの方は分かります。気絶してもスキルは本来勝手には解けません。つまり彼は……』
気絶した振りって訳ですね、了解。ほいもう一発。
再びビクン!とすると、今度はグタッと顔を横に向け、白目を向いた。流石に気絶したようだ。
「……2回もやる必要あったの?」
「一回目の時点では気絶した振りだったからな」
「アンタの能力って、そういうのも分かるの……?」
「あ、うん。そうなんだよ」
そういうことにしておこ。
「相変わらず地味だけどほんっと便利ね……」
雨宮はため息を吐くと、軽く足先で澤西を蹴りつけた。反応が無いのを確認していたようで、動かないのを見ると納得したように頷いた。
とりあえず終わったし……和也さんに連絡しておくか。
なお、余談だがトイレ前でそのまま待機していたら、脱げた服で体を隠してる裸の女性が来たりして、見させまいとした雨宮に気絶させかけられた。俺は悪くねぇ。
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あの後、澤西は厳重に拘束されて運ばれていった。
幸いな事に怪我人、死人は共に0で、被害は一部のメンバーが少しの間裸にされた事と、雨宮による電撃で痺れた程度であった。
他に脱走した人間も居ないようですぐに騒ぎは落ち着き、俺達には軽い報告レポートが課された程度だ。雨宮の雷撃も事前報告したお陰で特にお咎めなしである。
「……今日は色々と疲れた」
レポートを書き終え、やる事も終わった俺はすぐに帰ることにした。
いやもう、朝から説教、昼時に料理、午後からは脱走者の確保って……肉体的にはそうでも無いが、精神的になんだか疲れた。
ライマ、なんかいい知らせない?
『いい知らせですか……『錬成』の強化段階が更に上昇していますね。その時は丁度アラームがなり始めた頃でしたので、報告はしませんでしたが』
ああそういやそうだったな……今何段階め?
『23ですね。どこまでいくのか少々恐ろしいです』
俺もだよ……『閃雷』といい、スキルによっては死ぬ程楽に強化出来るの謎だよなぁ。
……もしかして陽菜の例の『吸血鬼18』もそういった楽勝条件で強くなった奴なのかね……
『その可能性は高いかと。普通はスキルの解放条件は確認できませんから。簡単な、それでいて意図せず達成可能な条件でもなければそこまでの強化は不可能でしょう』
それもそうだな。例えばそうだな……アイツ17歳って言ってたし誕生日が来る度に強化入るとかそんなんじゃね?
『そうなると彼女は産まれた時からスキルを所持していた事になりますが……有り得ない話では無いかもしれませんね』
まぁ結局強化条件が見れる訳でもなし、想像するしかないだろ……
と、そんな思考内での雑談をしていた、その時だった。
『……!マスター、分体3号より連絡が』
ん?どうした?
『東堂ファミリーの、『憑依』を持っている吸血鬼がいたでしょう?』
ああ、アイツね……そいつがどうかした?3号に変な事言って殴り倒されたとか?
『違います。彼女から情報の提供がありまして……』
おや、意外だ。なんでまた?
『族長が『予知』の内容をチラつかせて聞き出したようです。その内容が問題でして』
族長やるなぁ……で、問題ってのは?
『……東堂ファミリーが関わっていたのは、ウロボロスだそうです』
…………な、ナンダッテー!(棒)
『……やはり分かっていましたか』
いやだって……なんか他に関わっていそうな奴とかいないじゃん……というか今日支部長から言われたばっかだし。
東堂武蔵が言ってたのもウロボロスか、その……なんだっけ?ゼウスって言われてたとこでしょ。多分。改めて聞くとよくこんな名前付けたよな……
『そうですね。なのでそこはいいのですが……もう1つ問題になりそうな情報がありまして……』
大方ウロボロスが動きそうだとかTFSPがどうとかそういう奴じゃねぇかな……
『―――ウロボロスに、『竜』がいる、という情報です』
…………なんだって!?
どうでもいいですけどすっぽんぽんの被害者はドジっ子スナイパーちゃんです。
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錬成22→23 up!