説教開始時の絶望感
無課金でボイジャー3枚抜きしたのでモチベが復活しました。
追記(2020/11/09)
最後の展開に違和感があったので修正しておきました。
おっはー!!今日は日曜日、本来なら家でダラダラしたり友達と遊びに行ったりするのだが、支部長が「おこだよ」との事なのでTFSP日本支部へ行くことになった。ちくしょう。
自業自得なので仕方ないのだが、憂鬱である。
課題終わってないけど当然ながら学校の課題より国家機関の呼び出しが優先だよな。最悪スキルで終わらせれるしいいか⋯⋯
「仁美はどうする?」
「私は現状特に出来ることは無いし、3号から連絡が来るまで美佳子の周辺を警戒しておこう」
「それは助かる。頼むぞ」
「任せておけ」
高野家にいる隆二3号からは『念話』でちょくちょく連絡が来る。昨日引き渡した『憑依』持ちの吸血鬼が3号を見て死ぬ程驚かれたらしい。なんかゴメン。
で、今は目を覚ました最初に襲撃してきた『跳躍』持ちの吸血鬼と、東堂ファミリーの兄弟と合わせて情報を話してもらってるそうな。
その情報次第で仁美は行動を決めるとの事だ。
「では私は行ってくる。隆二、お前も頑張って来い」
「はぁ⋯⋯短く済めばいいなぁ⋯⋯」
俺はそんな儚い願望を抱きつつ、TFSP日本支部へと向かうのであった。
――――――――――――――――――
「ほう、こんな朝早くから来るとは感心だな?出来れば報連相にも気を使って貰えたら良かったのだがな?」
えー⋯⋯支部に着いて早々、転送室の出口で仁王立ちしていた和也さんがいた。しかもこう、背後に『ゴゴゴゴゴ』という効果音を背負っているのを幻視するレベルの迫力で。
「えーっと、その⋯⋯」
「正座だ」
「え?ここガッツリ床じゃ⋯⋯」
「いいから正座」
「でも支部長待たせるし」
「せ・い・ざ・だ」
「⋯⋯はい」
ささやかな反論をしたが、有無を言わせぬ迫力に逆らえず正座する俺。
「まずは言い訳を聞かせてもらおうか?」
「え、えっと⋯⋯」
俺はまず正直に話す事を考えた。
(実は恋人か攫われちゃったんで吸血鬼の本拠地に乗り込んでスキル使って全員まとめてボコボコにしてたんですよ!その時巻き込まないように端末を置いてきちゃって!)
⋯⋯うん!言える訳ねぇだろ!!
となれば誤魔化すしか無いのだが⋯⋯
「⋯⋯⋯⋯」
無理だわこんな怒気を発してる人相手に下手な嘘ついてバレたらどうなるか分かんねぇだろ!?
「⋯⋯おい、黙るんじゃない」
そ、そう言われても⋯⋯と目を逸らせば、
「目を逸らすな!」
と怒鳴られる。どないせぇっちゅうんや!!
しょうがない⋯⋯ここは単純に謝ろう!
「ご、ごめんなさい、端末の確認を忘れてました⋯⋯」
「それぐらい既に知っている!!」
じゃあなんだよ!どうすりゃいいんだよもー!
「大葉、私は何故その確認を忘れたのか、それを聞いているんだ」
だから言える訳ないじゃんかよもー!
「その、特に原因があったとかじゃなくて、普通に頭からすっぽ抜けてて⋯⋯」
「何故頭からすっぽ抜ける!お前が所属しているのは国家機関だ!その事をまるで昨日の夕飯のように忘れるとはどういう事だ!!」
昨日の夕飯⋯⋯あー豚の生姜焼きだったな。美味かったなぁ⋯⋯
「聞いとるのか大葉っ!!」
「あ、はい、聞いてます」
ちくしょう現実逃避もさせて貰えねぇ!!助けてライマ!!
『なんですか、自業自得の体現者たるマスター』
何その不名誉な称号!?ほら、和也さんを宥めるいい案は無いか!?
『ないです。諦めてください』
この役立たずぅ!!
『役立たずなので黙ってますね』
待って待って俺が悪かったから!ごめんって頼むから見捨てないで!!見捨てないでぇーー!!
『⋯⋯⋯⋯』
⋯⋯うわーん!!
――――――――――――――――――
説教開始から約30分。
「⋯⋯私は君のことを常識人だと評価していたんだぞ?だと言うのにこれでは以前の雨宮と変わらないではないか。いつもそうだ、少し何かがマシになったかと思えば何か別の問題が起きる⋯⋯」
気づけば雨宮に流れ玉が飛び始めた。ていうかあの、あんまり説教に時間かかると支部長も怒るからほら⋯⋯
とはいえ、もう半ば諦めた状態で嵐が過ぎ去るのを待つように和也さんの説教が落ち着くのを待っていたのだが。
「いいか、君は⋯⋯」
「和也?大葉君はまだ来てな⋯⋯あっ」
突如姿を見せたのは和也さんの奥さんである後藤摩利さんだった。あなたが救世主か⋯⋯!
「もう、ずっと説教してたのね?五分程度にしなさいっていつも言ってるじゃない」
「しかしだな⋯⋯」
「『しかし』じゃない!もう30分は経ってるわ。支部長を待たせる事になるでしょう?それに、説教は後でも出来るわ」
「むう、それもそうか⋯⋯仕方ない、説教はこの辺にしておいてやろう。立っていいぞ」
「すいませんでした⋯⋯」
まさか俺がここまで説教される側になるとは思わなかった⋯⋯そう思いつつ立ち上がろうとして、
「あだぁっ!?」
正座してたので足が痺れてずっこけた。
あっ、待ってすごい痛い!ビリビリする!ビリビリするっ!!
「?何をしているんだ、さっさと行くぞ」
「無理に決まってんだろ⋯⋯!」
その後足が復活するまで追加で2分程足止めされた事をここに伝えておく。
⋯⋯次から海斗達への説教は短めにするか。
――――――――――――――――――
支部長室の前に、上田、雨宮、坂口さんと第五班の面子が揃っていた。
「あ、来たわね。これで賭けは私の勝ちね」
「うえー、負けたっす⋯⋯」
「あははー、賭けなんてするものじゃないですね〜」
おい待てコラ。
「お前ら何の賭けをしてたんだよ⋯⋯」
「アンタがいつ頃ここに来るかの賭けね。私は大体九時頃って予想してて、この二人はそれより早く来るって予想してたの。で、一番近かったのが私」
今は⋯⋯九時過ぎか。
「何となく真面目なイメージあったからもう少し早く来ると思ったんすよー」
「右に同じくです〜」
いやまあ時間帯的にはそんくらい早く来てたんだけど。
「どうせ後藤に捕まると思って遅く予想して大当たりね!じゃ、後で二人ともジャンボパフェ奢ってもらうからね?」
勝ち誇った笑みで雨宮はそう言うが、
「馬鹿者、そんなくだらん賭けをするんじゃない!雨宮はともかく、貴様らまで賭けに乗ってどうする!」
「ちょっ、私はともかくってどういう意味よ!」
まあ当然和也さんが怒り出すよなそりゃ。その言葉に反応して雨宮も和也さんに噛み付く。
まぁでもさ、
「とりあえず、さっさと支部長の所行っておきたいから喧嘩は後にしてくれないか⋯⋯?」
これ以上支部長待たせるの怖いから!マジで!
「元々確認していなかったのは大葉だろうに⋯⋯」
「それを言われると反論できないけどこれ以上待たせるのも不味いだろ。主に俺が」
だって和也さんですら30分説教したんだぜ?立場が上の支部長はもっと長いだろ。校長先生の話だって長いんだし。
『その考え方は間違ってると思うのですが』
何が間違ってるってんだよさっきまでずっと沈黙していたライマ君?ん?ん??
『見捨てた事を怒ってます?』
はい!(力強い返事)
『見捨てられるマスターが悪いので水に流してください』
絶対零度並にライマが冷てぇや。
「大丈夫ですよ〜支部長も今日来るようにとしか言ってませんから、来る時間によって説教の長さは変わりませんので〜」
⋯⋯坂口さん。そういう問題なのか?
――――――――――――――――――
結局、俺が来たんだからさっさと支部長の所へ行くことになった。ちなみに他の第五班の面子は俺が呼ばれた理由とは関係ない理由で支部にいたらしいので解散していった。賭けの為だけに集まってたのかお前ら。
また、摩利さんも和也さんの様子を見に行っただけなので既に研究室へ帰っていった。
よって、今支部長室へ入ったのは俺と和也さんだけであり、
「⋯⋯⋯⋯」
真面目な顔でこっちを無言で睨んでくる支部長から助けてくれる人は居ないという事である。
やべぇよ⋯⋯どうしようライマ⋯⋯あ、ダメだどうせコイツ見捨てるわ⋯⋯
一回烈火のごとく怒って済むタイプだったらいいんだけど⋯⋯いや良くねぇわ国家機関に所属してる人のガチ怒りとか絶対怖いわ。
⋯⋯どう転んでも地獄だなチクショウ!!ふざけんな!!自業自得だけど!!
そんな事を考え、冷や汗をかきながら支部長が言葉を発するのを待っていたのだが。
「⋯⋯その様子だと、後藤クンに大分絞られたみたいねぇ?」
支部長の雰囲気が軟化し、そのように訊ねてきた。
「えっ、あっ、はい」
「もう充分反省もしたみたいだしぃ、お説教は勘弁してあげるわぁ」
「⋯⋯⋯⋯マジですか?」
え?ホントに?待って、このオカマがブッダに見えてきた。
「あらぁ?それとも⋯⋯説教をして欲しいのか?」
「いえそんな事は無いです既に猛省致しましたので大丈夫ですありがとうございます!」
低いトーンでそんな事を言われるものだから慌てて頭を下げ、一息で言い切った。
「ならいいわぁ、反省したご褒美に今度マッサージでもしてア・ゲ・ル♡」
「いやそれは結構です」
それとこれとは話が別だぞ支部長。
「つれないわねぇ⋯⋯ともかく、大葉クンは今後こんな事が無いようにね?」
「はい!」
次から定期的に端末は確認しないとな。
「じゃあこの話はこれでおしまい。ここからは⋯⋯仕事の話だ」
と、また支部長の雰囲気がオカマから真面目なものに変わる。
多分これが今日呼ばれた理由なのだろうと察し、俺も気を引き締める。
「先日、吸血鬼を名乗る者たちを多数捕縛した。それは知っているか?」
ああ、俺が東堂ファミリーを襲撃した時の⋯⋯端末にも詳細が送られてきてたな。
「確か、52人捕らえたとか⋯⋯」
「そうだ。そして彼等から幾つか有用な情報を聞き出す事に成功した。今回、呼び出した理由に関係があるのはそのうちの一つだ」
⋯⋯あれ、今更だけどやばくない?俺の顔とか普通に知られてそうだし⋯⋯もしかしたら俺の正体がバレたとかそんな事だったりしない?
いや、まだそうと決まった訳じゃ無いし、毎回深読みして拍子抜けしたりしてるから気楽に行こう気楽に。
という訳で聞いてみよう。
「それで、その情報とは?」
「ウロボロスのアジト、その一部の場所についてだ」
予想外の所の情報が来たぁっ!?
いや待ってウロボロスとか久しぶりに聞いた気がするぞおい。俺が雨宮と決闘騒ぎ起こしてる時とかマジで音沙汰無かったし。
いやしかし、そうか、東堂ファミリーはウロボロスと関係があったのか。⋯⋯もしかしたら東堂武蔵が言ってた『あやつ』とやらはウロボロスに所属してる存在なのかね。
っと、考察は後にしよう。今は話をちゃんと聞いとかないとな。
「世界征服等という馬鹿みたいな目標を掲げた連中のアジトの場所を、一部とはいえ知れたのだ。当然放置しておく訳にはいかん。その為、戦力をそこへ派遣する事にした」
「そこに、俺も参加するという事か?」
俺を呼び出してこの話をするということはそういう事だろうと思うのだが。
「そうだ。⋯⋯今回の作戦は、柏木と中澤も参加する。そこから君を省く訳にはいかないだろう。君がTFSPに所属した理由を蔑ろにする事になる」
「!」
二人が参加するのか!なるほどそれを知ったなら俺は結構無理に参加させてくれと頼み込んでいた事だろう。
マジか支部長、わざわざ個人の事情を加味して俺を参加させてくれんのか。指揮官としてはアウト感がするけどいい上司だわ。
うわぁ、ますます連絡を見逃してたのが悔やまれるわこんなん。
「⋯⋯ありがとうございます」
「ああ、気にしなくていい。TFSPとしては、超能力者が反抗的だと管理が面倒なだけだからな」
なんだその返答。オカマの癖にカッコイイじゃねぇか⋯⋯オカマの癖に。
『何故二回も⋯⋯?』
大事な事だからな。どうせ後でオカマに戻るからしっかり心に刻んどかないとギャップで困惑する事になるから。
「それで、その作戦はいつ⋯⋯?」
「ああ、まずはメンバーミーティングを二日後に行う。各々の役割を決めなければならないからな」
なるほど、多分初顔合わせする人も結構いるだろうしなぁ。
「参加メンバーやミーティングの時間帯等は端末に資料として送信する。今度は見逃さないようにしてくれ」
「絶対見逃しません」
流石にもう見逃さねぇわ。
「連絡事項は以上だ。何か質問は?」
こういった場面で質問は?って聞かれて質問する事ってあんまり無いよな⋯⋯まぁ俺も無いんだけどさ。
「いや、特には」
「分かった、では⋯⋯また二日後に会いましょうねぇん?退室していいわよぉ。あ、後藤クンはまだ残っててねぇ」
「⋯⋯あっ、はい」
ほらやっぱりオカマに戻った!
――――――――――――――――――
「失礼しましたー」
大葉隆二が支部長室から退室した後。和也は扉の方を見つつ、訊ねた。
「⋯⋯支部長、彼に聞かなくて良かったのですか?『竜』について⋯⋯」
当然、情報はあったのだ。彼等を壊滅に追い込んだ『竜』と『フルフェイスの人物』について。
しかし『竜』に関しては直接相対した吸血鬼の大半が実力者の為逃げ切る事に成功していたため情報が少なく、また、しっかり相対した第六班の面々からの情報でも、確定には至らなかった。
「顔立ちが似ている、その日は家にいなかった、程度じゃ疑う理由にならないわよぉ。身長も違ったみたいだし。それに⋯⋯」
支部長は一つため息をつき、
「一緒に戦えるって聞いて露骨に態度を変えるくらい友達思いのいい子だもの。敵対する事は無いと思うわぁ」
「⋯⋯そうですね。ただ、良くも悪くも、彼は子供ですから」
「そうねぇ、正体がハッキリするまで下手なことはしない方がいいかもしれないわねぇ」
隆二の知らぬ所で、彼は色々と探られているのであった。
おまけ(原点回帰)
――――――――――――
第五班の面子がいた理由
坂口:書類仕事
雨宮:家にいると兄がうるさい
上田:片思いの女の子に会いに来ている
――――――――――――
スキル変化
なし
⋯⋯あっ、やべっ、聖光の説明忘れてた