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告白の祝歌

投稿遅れてすみません⋯⋯新人マスター故、北斎ちゃんを迎えるのが大変で⋯⋯


⋯⋯あとは、自分の信じた通りに書き進めてたらルートCを開拓してしまったんですよね⋯⋯ルートAにする筈だったのにどうしてこうなった⋯⋯


それはそれとして、アンケートに答えてくださった皆さん、ありがとうございます!


そんなこんなで俺達は高野家の前へと戻ってきた。俺は『竜人化』を解き、肩から陽菜を降ろす。


「う、うっぷ⋯⋯酔いました⋯⋯」

「正直すまんかった」


あの場面ではノンストップが求められるとはいえ、次々景色が切り替わったら酔いもするか。俺?なんか昔っから酔いには強いんだよね。


「うっ⋯⋯ぐぅ⋯⋯今込み上げて⋯⋯うぷっ」


陽菜は、顔を青ざめさせながらえずいている。うーん流石に可哀想だなぁ⋯⋯


「おーい、着いたぞー⋯⋯どうした?」


お、仁美も着いたか。⋯⋯そうだ!


「丁度いい所に来てくれたな。こいつに回復かけてやって」

「む?さっき言っていた銃撃のダメージか?」

「いや、連続瞬間移動で酔った」

「あぁ、なるほど⋯⋯まあいいだろう」


少し呆れた表情でそう言うと、仁美は『聖光』を発動させる。贅沢な使い方するなぁ。『気功法』使うかと思ったのに。


『⋯⋯おや?これは⋯⋯』


はん?どうしたライマ。


『⋯⋯今、陽菜様にかかっていた何らかのデバフが解除されたことを確認しました』


⋯⋯はぁ?


え、待ってこいつ何か状態異常かかってたの?酔い関係無く?


『はい、酔いではなく、スキルによる弱体効果ですね。流石にその詳細までは分かりませんが⋯⋯陽菜様より排除されたことで察知することが出来ました』


しかし弱体なんていつ受けたんだ?東堂ファミリーの吸血鬼か第六班のメンバーにいたか?


『いえ、東堂武蔵以外は弱体系スキルを持っておらず、更に東堂武蔵も死亡しているのでスキルの効果は消えています。よって、今回の件で弱体が付与された可能性は低いです』


となればそれ以前からか⋯⋯?それだと判断のしようが無いな。


「⋯⋯⋯⋯」


見ると、陽菜の顔色は戻っており、何事か考え込んでいるようだった。黙って真面目な顔で考え事してるの初めて見た気がする⋯⋯


「⋯⋯成程」


やがて何事か結論が出たのか顔を上げると俺の方を向いた。


⋯⋯あれ、雰囲気がまるで違うんだけど?今までとなんか反対方向というかなんというか⋯⋯



「大葉さん。回復ありがとうございました」

「お、おう⋯⋯?」


陽菜は、笑顔0%の真面目な表情で俺にお礼を言ってきた。



当然、俺は困惑した。




「貴方のお陰で私はあのような思い出したくもない状態から元に戻ることが出来ました。改めて、感謝致します。同時に、今までに多大な迷惑をお掛けした事⋯⋯」


そこで彼女の中で何があったのか、ギリリッ!という強烈な歯ぎしりの音がした後、


「⋯⋯申し訳ありませんでした」

「⋯⋯あ、えっと⋯⋯?」




そう言って深々と頭を下げる。



当然、俺は混乱した。




「勿論、この程度で貴方へした行為の償いと、貴方の与えてくれた恩を返せる等とは思っておりません。今後、貴方へ全面的に協力する事で、挽回させていただきます」

「⋯⋯そっかー」




強い意志を感じさせる口調と表情で、陽菜は俺にそう宣言した。



結局、俺は思考放棄した。



「もう二人共着いてたかー⋯⋯あれ、なんか本体が明後日の方向見てるんだけど」

「⋯⋯まあ、仕方ないだろうよ」

「いや何があったんだよ」



――――――――――――――――――



「おや、帰ってきたのね。その様子だと上手くいったようで良かったわ」

「お母さん、幾つか重要な報告もあるので、話は奥でいいでしょうか?」

「⋯⋯⋯⋯陽菜?戻ったの?」

「はい⋯⋯長い間、迷惑をお掛けしました」

「陽菜〜~〜〜!!」


族長が感極まって陽菜へ抱きついている。うんうん、良かったなぁ⋯⋯


「⋯⋯⋯⋯(口を開けてポカーンとしている三号)」

「おいこら、俺の顔でアホ面してんじゃねぇよ」

「無理だろあんなん!!」


うん。ごめん、理不尽だった。



つまるところどういうことか?簡単な話である。




陽菜は アホの子になる 状態異常を 受けていたのだ!!




いやもうびっくりだよそりゃ。まさか真面目丁寧語系が素だとは思わなかったっての。そういや樹を散々こき下ろした時もちょっと口調変わってたが、もしやあれは素が出ていたという事なのだろうか。


『私も驚きましたね。恐らくはIQが著しく低下するスキルでもかけられていたのでしょう』


おっそろしいスキルだなぁ⋯⋯いやしかし、あれだな。


『?』


この陽菜、なんかお前とキャラ被ってない?


『⋯⋯心底どうでもいいことを真剣な顔で言わないでください』


辛辣!キャラ被ってなかったわこんちくしょう!!


「陽菜⋯⋯本当に良かった!これでもう暴走するのに悩まされずに済むのね!」

「うぐっ⋯⋯その節は本当にご迷惑をおかけしました」

「いいのよ!あなたが元に戻ったのだもの、損害が20万を超えていたことなんて些細なことよ!!」

「ぐうっ⋯⋯!こ、これからは全身全霊で償わせていただきます⋯⋯」


ちょい族長さんよ。無意識に傷口抉るのやめたげて?あと仕方ないのかもしれんがいつまで抱きしめてんの?


「お、お母さん⋯⋯人前ですし自重を⋯⋯」

「⋯⋯あら、ごめんなさい、感極まってしまって⋯⋯」

「いや、気にしてないさ。寧ろ親愛表現としてほっぺにチューでもしてやったらどうだ?」

「大葉さん!?ふざけないでください!!」


いやーついね。からかいたくなってね。


「流石にそれはやめておくわ⋯⋯人前では(ボソッ)」

「えっ?」


族長がボソッと言った一言に陽菜が「嘘ですよね」みたいな顔をしている。やっぱり族長ポンコツなんじゃなかろうか。


『単純に愛が深いか喜びが大きいだけなのでは?』


そうだと信じとこうか⋯⋯



――――――――――――――――――



「それじゃあ、本題に入ろうか。まず、俺の目的については達成出来た」

「そのようね。無事に救い出せたようで何よりね」


今、美佳子は大谷が用意してくれた布団に寝かせてある。なお、大谷は陽菜の様子を見て感涙していた。苦労してたもんなアイツ⋯⋯


美佳子は特に苦しそうな様子はなく、安らかな表情で寝音を立てている。誘拐された事がトラウマになったりしなきゃいいんだが⋯⋯


「⋯⋯とても大事に思ってるのね。やっぱり、恋人なのかしら?」


俺の心配が顔に出てたのか、族長が訊ねてきた。


恋人⋯⋯恋人かぁ。


「⋯⋯どうだろうな」


正直な所、踏ん切りがつかないというかなんというか⋯⋯


『え?』


え?どうしたライマ。


『いえ、てっきり既に心は決まってるものかと⋯⋯』


いや、そんな事は⋯⋯


『だって、言ってましたよ。「俺の美佳子」って』



「⋯⋯なんて?」



『「俺の美佳子」と、思考していました。私以外には聞こえていませんが、ええ、確実に聞きました』



⋯⋯⋯⋯マジ?



『マジです』



そっかー⋯⋯うん。



「⋯⋯悪い、ちょっと仁美、代わりに話しといてくれるか?」

「は?何故私が⋯⋯ああ、うん⋯⋯そうか⋯⋯」


ライマが説明してくれたようで、仁美はすぐに納得してくれた。


「⋯⋯えっと、どうしたのかしら?」

「いや、ちょっと⋯⋯穴に入りに」

「は?」


俺は困惑する他の面子を置いて、外に出た。


そして、『錬成』で足元に穴を開け、そこに入り込む。


よーし準備完了。



「⋯⋯ぬあああああぁぁぁぁぁっっっ!!!」




超!!!!恥ずかしい!!!!!



『物理的に穴に入るとは思いませんでした⋯⋯』



だって!だって!!恥ずかしいじゃん!?思い出して来たぞそのセリフ!!『俺の美佳子』ってなんだよ超クセェセリフ吐いてんじゃねぇか俺ぇ!!


しかもそれ絶対黒歴史ワースト二位の『この俺様モード』入ってるよね!?もうやだ!!おうち帰る!!


『何故そこまで恥ずかしがる必要が⋯⋯実際に口に出した訳ではありませんし、男ならクサイ台詞の一つや二つ言ったぐらいで恥ずかしがらないでください』


性別とか関係無さそうなお前にだけは言われたくないっ!!


『失礼な。私は女性ですよ。声から分かるでしょう?』


世の中には両声類とかいう人がいてだな⋯⋯いやそうじゃない、そもそもお前スキルだから性別とか意味無いだろって話だよ!!


『そんな事は⋯⋯いや、そうですね⋯⋯でもそれはマスターがヘタレである言い訳にはならないと思います』


クサイ台詞言えないとヘタレなのかよ!?


『あーんしたり告白しようとしていた八坂様に比べれば愛の言葉一つ囁けないマスターはヘタレでしょう』


いやいやまだ俺、美佳子が恋人とか認めて無いからな!?


『じゃあマスターは彼女は好きではないと?』


え、いや、それは⋯⋯その⋯⋯


『はぁ⋯⋯いい加減受け入れてくださいよマスター。無意識に「俺の美佳子」なんて言葉が出るのですから』


ぐぅの音も出ねぇよ⋯⋯そうだな。


もう今更思い悩んだって仕方ないな。彼女が俺のせいで何かに巻き込まれるかもしれないという心配は、既に手遅れだった訳だし。




なら、俺が傍にいてもいいだろう。傍にいて、俺が彼女を守るんだ。



――――――――――――――――――



そんな決意を固めた俺は、穴から出て高野家の中に戻った。


「む、戻ったか。 」

「ああ。どこまで話した?」

「その前に私について訊ねられた。今まで会っていなかったからな」


そういや確かに。そこんところどう説明したんだ?


『今までと変わらないな。ボロボロの状態で倒れていたことにした。能力については記憶が無いと誤魔化してな』


記憶喪失って便利な言葉だよなぁ⋯⋯信じるかどうか怪しいところだけども。


「ところで⋯⋯恥ずかしさで悶えるのはもういいのか?」


仁美がからかうようにそう聞いてきた。だが、俺は真剣に返す。


「ああ。もう大丈夫だ⋯⋯それと、俺はもう迷わねぇ⋯⋯」

「⋯⋯ん?」

「族長、さっきの話だが⋯⋯」

「あ、まずい。ちょっと待て」


え?なんだよ仁美。人が重大な告白をしようとしてるって言うのに。あ、そう考えると緊張してきたじゃねぇか。どうしてくれる!


そんな俺の気持ちは無視され、族長、陽菜、仁美、三号で集まり何か相談を始める。


「これは⋯⋯待った方がいいのかしら?」

「私には判断が難しいのでお二人にお任せします」

「あー⋯⋯三号、お前はどうすべきだと思う?」

「多分、そのまま言わせた方がいいと思う⋯⋯俺のことだから、いざとなったらヘタレる気がするし⋯⋯」

「やはりそうだよな⋯⋯」


え、一体なんの話をしているんだコイツら。なんか三号は失礼なこと言ってるし。


「ああ、中断して悪かった。続けていいぞ」

「え、なんなんだよ⋯⋯」


そう言われると不安になるんだが。とはいえ、聞いても教えてくれなさそうな雰囲気がしているのでそのまま続ける。


「まぁ⋯⋯その、美佳子が恋人かどうかって話なんだが⋯⋯」


そこで少し躊躇するが、



「⋯⋯その通りだ、と言わせてもらう。まだ、美佳子には言ってないが⋯⋯彼女のことは、好きだ」



そう、言い切った。



「(よし⋯⋯よく言った!)」

「(あ〜あ〜俺まで恥ずかしいぞこれ)」


なんか俺の分体共がうるさいが気にしてる余裕は無い。顔がかなーり熱いので。


「⋯⋯だそうだけれど、どうなのかしら?」


ん?族長、誰に向かって⋯⋯?



その瞬間、俺は気づいた。

あれ?布団に寝てたはずの美佳子がいないぞ?

と。


⋯⋯ライマ。


『なんでしょうか?』


正直に言え。美佳子どこ?




『族長の後ろの障子の向こう側です。声はよく通りますよ!』

「よし、俺は帰る」


俺は刹那の間にそう決意した。


「いや、手遅れだから大人しく座ってろ⋯⋯」

「どうぞ八坂さん。お入りください」


仁美に制止(物理)され、その間に陽菜が障子を開ける。やめろ!顔真っ赤だから今!!恥ずか死ぬから!!


「では、大葉さんに一言⋯⋯あーこれは⋯⋯」


⋯⋯障子の向こうにいた美佳子は、顔をものっすごく真っ赤にして、「あうあう」と言いながら立ち尽くしていた。


⋯⋯えっと?俺はどうすればいいのかな?


「りゅ、りゅりゅ、隆二くん⋯⋯っ!」

「えっ、あっうん隆二です」


急に呼ばれたせいで、思わず変な返しをしてしまう。


「えっと、あっとその⋯⋯わ、私も!」


美佳子は、必死な様子で何かを言おうとする。俺は、恐らくは間抜けな顔でその言葉の続きを待った。






「私も⋯⋯隆二君の事が⋯⋯ずっと前から!!大好き、でした!!」






「⋯⋯⋯⋯」


俺は、その言葉を聞くと、美佳子の方へ歩き始めた。


彼女が、ここまで言ってくれたのだから⋯⋯それに応えるのが、男だろう。


俺は美佳子の元へと辿り着くと、黙って、彼女を抱きしめた。


「ひょわ⋯⋯」

「⋯⋯美佳子」

「はい!?な、何?」



「ありがとう⋯⋯俺も、美佳子は、大好きだよ」



「⋯⋯うん」


美佳子は、短く返事を返し、俺を抱きしめ返した。









――――――――――――――――――



「⋯⋯私達、お邪魔ですか?」

「「あっ」」


そのあと周囲の状況に気づいて二人して羞恥心に悶えることになるのは別の話。


after word

――――――――――――

雨宮「はっ⋯⋯!?どこかから尊さの気配がするわ⋯⋯!」

雨宮兄「尊さの気配ってなんだよ⋯⋯それより、俺のことをお兄ちゃんとだな」

雨宮「あら、死にたいの?それならそうと直接言えばいいのに(バチバチ)」

雨宮兄「ちょっまっ(顔面パンチ)」

――――――――――――


スキル変化無し

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