撤収の遁走曲
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それはそれとしてスマホ変わりました。ホームボタン無いの慣れない!
「大葉さーん!!ご無事ですかーー!!ってなんですかその姿!?」
俺が『錬成』『錬金』で出した拘束具で樹と淳を縛っていると、陽菜が下からやってきた。
「ん、陽菜か。問題ないぞ。この姿に関しては、ほら俺ってば竜だし」
「そう言われればそうでしたね⋯⋯うわ、鱗硬いですね!」
こいつ遠慮なく近づいて触ってきやがった。ていうかついそのまま『竜人化』してるな。まあ何か起きるかもしれないからこのままでいいか。
まだギリギリ『覇王』が切れてないから鱗も銀色だし翼も生えたまんまだが、あと数分で切れるだろう。
『今丁度残り二分ですね』
サンキュー。てか、まだ殲滅開始時点から十三分しか経ってないのか⋯⋯
「⋯⋯あれ?なんか一人だけ倒れ方が綺麗ですね?」
そう言って、陽菜は東堂の死体の所へ行く。俺が姿勢を整えたからな⋯⋯
「ああ⋯⋯そいつは、東堂武蔵だ。何者かによって⋯⋯殺された」
「⋯⋯ええっ!?」
死体をつんつんしていた陽菜は、俺の言葉でバッ、と2mくらい飛び退った。何やってんだよお前。
「と、東堂武蔵って東堂ファミリーのドンですよね!?何がどうなってるんですか!?」
「お前がツッコミに回るとか珍しいな」
「そうです、私ツッコミも出来るんです!⋯⋯あれ?」
え、適当に誤魔化しただけなのに何故ドヤるんだお前は。流石に自分でも違和感を覚えたみたいだけど。
「あ、大葉さんが殺したのではないですよね?」
「失敬な。俺が殺したとしたら多分コイツはミンチになってる」
「想定外の答えです!?」
実際アレ食らわせてたら多分ミンチだっただろうし。
『いえ、消し炭ですね。肉が残らないかと思われます』
そっかぁ⋯⋯消し炭だったかぁ⋯⋯
「とにかく、俺もよく分からないが、何者かがこいつを殺した。後で詳しく説明するからとりあえずこの二人運ぶの手伝ってくれ」
「へ?この二人って⋯⋯あ、淳君じゃないですか、懐かしい!」
「え、知り合いなの?」
それは予想外だったな。
「昔は吸血鬼同士で仲は悪くなかったんですよ。その時は淳君とは一緒に遊んだりしてましたねー」
にへらと笑いながら陽菜はそう言った。そうか、仲がいい時期もあったんだな⋯⋯
「⋯⋯でも、今回は敵になっちゃいましたね⋯⋯しょんぼり」
「口に出してしょんぼりって言う奴いるか⋯⋯?あ、ちなみにこいつは?」
そう言って樹の方を見せる。
「え?知りませんね」
それに対し、陽菜はそんな反応を返した⋯⋯が、何か様子が変である。
「そんな何かにつけて私に迫ってきてスカート捲りだの胸を揉むだのの変態行為を行う男など私の記憶にありません。よってその男は私は知りませんね」
「⋯⋯そ、そうか⋯⋯」
いつもとまるで違う冷徹な口調と表情でそう言われては追求は出来ない。が、とりあえず樹が昔陽菜にいたずらしまくってた悪ガキだということは分かった。
「仁美は下か?」
「あ、はい!「周囲の警戒をする」って言ってフルフェイスヘルメット被ったまま待機してます」
あ、ヘルメット被ってたのかお前。
『念の為にと思ってな。お前は顔出しして良かったのか?』
変なことしたら美佳子に何か起きたりしないか不安だったから⋯⋯
『あぁ、成程な⋯⋯』
まあ、それはもういいだろう。
「じゃあお前淳の方持ってくれ。こいつは俺が運ぶから」
「はーい⋯⋯もう一人大葉さんがいるのは三号さんと同じ感じですか?」
ちらりと美佳子を抱えた分体に視線を向け、訊ねてくる。
「そうだな。こいつは四号だ」
「いえーい四号だぜー」
「⋯⋯何人まで増えるのか知りたいような知りたくないような⋯⋯」
俺のスキル見せる度に、陽菜が常識人みたいに見えるようなこと言うよな。
「というか気になったんですけど、二号はどこにいっちゃったんですか?」
「仁美に後で聞いてみな」
何となく俺が言うのが面倒だったのでそう流した。
――――――――――――――――――
エレベーターで一階まで降りると、そこら中に倒れた吸血鬼達がいた。
その中心に、仁美が立っており、その傍らに五人ほど意識のある吸血鬼が座り込んでいた。
「わ、若!?」
「ほ、本当に二人とも捕まってるなんて⋯⋯」
「ぼ、ボスはどうなったんだ⋯⋯?」
先にその吸血鬼達が俺に気づき、ふらふらと立ち上がって声をあげ始める。
「む、来たか」
「おう。そいつらはどうする?」
「そうだな⋯⋯お前らはまだ戦う気はあるか?」
仁美が聞くと五人とも直立不動になり、一斉に答えた。
「「「「「ありません!!」」」」」
「⋯⋯だそうだ」
「お前、こいつらに何したんだよ⋯⋯」
一切のズレなく答えた五人を見て、思わず仁美をジト目で見る。サッと目をそらされた。
まあ、そういうことならコイツらは放置していいだろう。流石にこの二人を捕まえてる関係上攻めてこなくなるだろうし。
⋯⋯あれ、図らずしも元々の高野家の目標も達成してね?やったぜ結果オーライ。
「さて、それじゃあとりあえず高野家にでも戻るか」
「そうだな」
「そろそろ眠いです⋯⋯ふあぁ」
まあ十二時過ぎたもんなぁ。そう思い、出口から一歩出た所で。
『⋯⋯!?マスター!!索敵に複数人のスキル保持者が引っかかりました!高速でこちらへと向かってきております!!』
なんだって!?まさか、吸血鬼の増援か!?
『いえ、そうではありません!!先頭の人物のスキルをご確認ください!!』
脳裏に、その情報が浮かび上がってくる。
――――――――――――
『加速』
『増加』
――――――――――――
っ⋯⋯このスキル構成は!!
『はい⋯⋯TFSP第六班班長⋯⋯岩田加奈です!!』
やがて俺達の耳にも、ザザザザザッ!という複数人の足音が聞こえた。
とりあえず分体!お前は中に戻って待機してろ!!
「了解、流石に色々と不味いもんな!」
そして、やがて目の前に十人程の人が現れる。
正面にいるのは、かつてTFSP日本支部にて見た、あの少女。だが、あの時とはまるで雰囲気が違う。
あの時は気弱そうでおどおどとしてた印象があったが⋯⋯今はまるで、自信に満ち溢れているというか、そんな印象を受ける。
「ありゃ、もう大分静かになっちまってるね?こりゃお祭りに出遅れたかね?」
岩田は口を開くと、そのようなことを言い始める。
「班長、戦闘をお祭りって言うのやめません⋯⋯?」
「お祭りじゃないか、アタシらのスピードを存分に発揮できるんだよ?これ以上楽しいことがあるかい?」
班員の意見に対し、岩田はそのように返す。どうやらいつもの事なのか、班員もため息をつき、諦めたようだ。
⋯⋯うん。突っ込んでいいよね?
お前・is・誰ぇ!?
どういうことだってばよ!!何がどうしたらあの気弱な少女がこんな姉御みたいなキャラになるの?
何なの!?多重人格か何か!?だとしたらやっぱりTFSP日本支部って個性強い奴しかいねぇじゃんかよ!!
あと普通に聞きたいんだけどなんでここいるの!?何がどうして吸血鬼の本拠地にTFSPが⋯⋯!?
「しっかし、変な奴らばっかだねぇ。ドラゴンっぽい奴に、フルフェイスヘルメットの女、ちんまい幼女⋯⋯」
「幼女じゃないです!!十七歳ですー!!」
はーい陽菜ちゃんは黙っとこうねー。
「あだだだだだだ!?無言のアイアンクローはやめてください!!」
「⋯⋯何をしてるんだいアンタら⋯⋯」
呆れた様子で岩田が呟く。
いやしかし、俺は「大葉隆二」だとバレてないのか。まあ、見た目が竜人だし、身長も伸びてるし、ライマ曰く『覇王』発動時は髪の色とかも変わってるらしいし、意外とバレないのかもしれない。
で、流石に班長なのか、意識をすぐに切り替えた様子で表情を真剣なものに変える。
「それで、アンタらはなんでこんな所にいるんだい?ここにいた吸血鬼達と、何か関係があるのか?」
「は、班長?もしかしたら一般人かも⋯⋯」
「あんな一般人いてたまるかい!!」
「⋯⋯ですよねー」
まあ、客観的に見て一般人は無いな。肩に人担いでるし無関係とも思われないだろうなぁ。
「特に⋯⋯そこのヘルメット。アンタには報告が上がってる。事情聴取がしたいし、アンタら、大人しくこっちに来てもらえないかい?」
TFSPとしては当然そう来るよな⋯⋯
『⋯⋯どうする、隆二?』
流石にここで言う通りにする訳にはいかんだろうよ。俺のことが色々とバレかねないし、説明も面倒だ。
『閃雷』があれば逃げ切れるだろうし、ここは全員で逃げるぞ!!
『だと思ったよ!』
「悪いが⋯⋯お断りだ!」
仁美がそう言葉を発すると同時に、第六班の面々はすぐに対応出来るような体勢をとる。
が、その程度は無駄だ。俺はアイアンクローしていた陽菜をひょいっと担ぐと、『閃雷』を発動、見えた細い路地に視線を向け、そこに瞬間移動した。
「なっ⋯⋯?」
「消え⋯⋯!?」
仁美も別の方へ逃げたようだ。当然、対応など出来るはずが無く⋯⋯
「待ちなああああああ!!」
うおっ!?まさか!?
俺がちらっと後ろを見ると、目を疑うような速度でこちらに走ってきている岩田が見えた。
俺は慌てて連続で『閃雷』を使用し、高い建物の上に逃げるが、岩田は忍者かよと突っ込みたくなるような動きで追随してくる。
だが⋯⋯流石にこの高さから見える街並みの端へと逃げれば追いつけないだろう。
と、思った次の瞬間、右肩に強い衝撃が発生し、俺は建物の屋上で体勢を崩しで立ち止まってしまった。
右肩には陽菜を背負っていたので、下ろして様子を確認するが、ダメージは無いようだった。
「お尻に直撃しましたぁ⋯⋯」
と、涙目で尻をさすっている程度である。
「悪いね、スピード勝負で無粋なことはしたくないんだけど、私も仕事でね」
そう岩田が言った直後に、五人程が追いつき、俺達を包囲する。
岩田の右手には特殊な形状の銃がある。恐らくは、あの痛みと衝撃だけの銃弾を撃たれたのだろう。
残り5人は仁美の方へ向かってるのだろうか⋯⋯どちらにせよ、面倒だな⋯⋯
『マスター、あと十秒で『覇王』の効果が切れます』
ちっ⋯⋯色が黒に戻ったら印象が俺に近づくし、あんまり見せたくない。
しょうがない⋯⋯スキルはあまり見せたくなかったが⋯⋯やるか。
俺は『錬成』を発動、相手の足元をコンクリートで固める。
「何っ」
「これは⋯⋯別の超能力!?」
同時に、服に対しても『錬成』を発動、形状を操り、一時的な拘束具とする。
「服がっ⋯⋯」
「何だこれ!?」
うーん『錬成』便利だなぁ。あとは『覇王』の効果が切れると同時に⋯⋯陽菜を回収して『閃雷』!!
「また消えた!」
「ちっ⋯⋯クソ、見失った!?」
俺の色が黒に変わったために、今まで銀色で目立っていた俺を探しても、もう見つからない。
流石に岩田も騙されてくれたようだ。これでなんとか撒けるだろう。
「さっきから景色が飛び飛びになって酔うんですけど⋯⋯」
「我慢しろ、捕まりたくは無いだろ」
「そうですけど⋯⋯」
俺が文句を言ってくる陽菜の相手をしていると、仁美から連絡が来た。
『こっちは撒いたぞ。そっちはどうだ?』
仁美も撒いたか。こっちは非殺傷の銃で撃たれたがまあなんとか撒けたよ。
『銃で撃たれたって、撃たれる距離まで近づかれたのか?』
ああ、岩田がめっさ速かった。
『流石に国家組織の班長なだけはあるのか⋯⋯』
とりあえず、あいつらは俺を見失った以上東堂ファミリーのビルに行くだろうし、今のうちに四号は離脱してくれ。
『あいあいさー。どこで合流する?』
うーん⋯⋯いいか。高野家に集合しよう。
もう、美佳子に隠し事をし続けるのもやめた方がいいかもしれないしな⋯⋯
いやしかし全く、今回は最後まで疲れる事件だった⋯⋯そう思いつつ、俺達は高野家へと向かって行った。
おまけって英語だとなんと言うんですかね
――――――――――――
四号「⋯⋯はぁ、まさかTFSPに追われるとか大変だな⋯⋯ん?」
背負った美佳子をチラ見
四号「⋯⋯動いてた気がしたけど⋯⋯気のせいか?」
――――――――――――
スキル変化
無し