殲滅の行進曲
いいじゃんかさー!ご都合主義だってさぁ!
という訳でまた投稿出来ました。指が久々に止まらない。
二章開始からこの辺がずっと書きたかったんですよね⋯⋯という訳でどうぞ。
俺の力を目の当たりにした吸血鬼共は、臆したのか襲いかかって来ない。
今更ビビったのか?俺がこの程度で倒せる相手だと、そう思ってたのか?
まあいいさ⋯⋯それならそれで、俺からぶちのめしに行くだけだ。
そう思い、俺は別の集団へ向かって高速で突っ込む。
「っ⋯⋯くそ!」
「やってやる!」
突進してくる俺を見て覚悟を決めたのか、相手の吸血鬼達が臨戦態勢に入る、
「らあっ!!」
その前に『気功法』で瞬間的な強化を行い、急接近し、一番近くにいた男の顔面を殴り飛ばした。
「ごばっ⋯⋯」
「⋯⋯は?」
隣の仲間が一瞬でやられたのを見て、思わず呆けた声を上げた吸血鬼を、回し蹴りを当て、吹き飛ばす。
「ぎゃあっ」
「く、くそ⋯⋯か、かかってこいやぁ!!」
今挑発の声を上げたのは、あるスキルを持つ吸血鬼だ。
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『吸血鬼6』
『反発』
接触した物理的なエネルギーをベクトルを逆にして跳ね返すことが可能。ただし許容限界はある。
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物理だけだから平気と思ったか?その程度な筈が無いだろう。
俺は『蒼炎』を発動、左腕に蒼き炎を纏わせる。
「ひっ、そんな⋯⋯」
「どうした、いくぞ?」
思わず後ずさる『反発』吸血鬼に向かって、左腕を大きく振りかぶり、ラリアットを放つ。
「がはぁっ!?」
⋯⋯ん?普通に吹き飛びやがったな。肝心の『反発』の許容限界以上の威力だったのか?
⋯⋯ああ、そういや『覇王』には敵のスキルを弱体化させる効果があったな。それで受けきれなかったのか。
「あ、あああ熱い熱い熱い熱い!!」
と、さっきの接触で、炎が服に燃え移ったらしい。叫びながら床を転げ回っている。
俺はそちらから目を外し、東堂を守るように集まっている吸血鬼共の方を向き、そちらへと歩き始める。
「⋯⋯っ!お前ら、何をしている!全力でかかれっ!!」
それを見た東堂が、焦って号令をかける。それでようやく留まっていた吸血鬼共は動き始める。
「うおおおおっ!」
「死ねぇぇぇぇ!」
ほぼ全員が徒手空拳か金属製の武器を振りかざし襲いかかってくる。銃持ちは⋯⋯いないな。
まあ理由は大体分かる。下手に銃器を使うと味方を巻き込むし、ここにいるのは大体『吸血鬼』の強化段階が5を超えている。純粋な身体能力での方が戦いやすいのだろう。更に、『鋭爪』とか『痺手』とか近距離で使いやすいスキルを持った者も複数存在する。
⋯⋯まあ、無駄だが。
俺は真っ先に飛びかかってきた素手の吸血鬼を裏拳で吹き飛ばすと、吸血鬼達の殲滅を始めた。
素手で殴りかかってくる奴は、硬い鱗で容易に受け止め、腕や脚の一振りでなぎ倒す。
武器を持っている者は、その武器を力任せに破壊し、そのままぶちのめす。
武術らしき攻撃を仕掛けてくるものには『解析』と『武装術』を合わせて武術を模倣し逆に沈める。
攻めあぐねている相手には『蒼炎』を撒き散らし戦意を挫く。
『吸血鬼』以外のスキルで攻撃してくる者には、その全てをことごとく正面から叩き潰す。
⋯⋯やがて、『覇王』を発動して五分も経たないうちに吸血鬼共は全員無力化した。気絶している者。骨が折れたのか、動けずにいる者。目の前で蹂躙される仲間を見て、戦意を失いへたり込んでいる者。色々いるが、どれも動けないことには変わりない。
いくら精鋭でも、『覇王』によって大幅に弱体化されている以上、相手にならない。そもそも、『覇王』が無くともここまで楽勝では無かっただろうが、殲滅は出来ただろう。
そして、部屋の隅でこっそり美佳子に近づこうとしてる淳の足を、床から『錬成』で複数の棘を生やして縫い止める。
「ぎっ!?」
「お前は放置しようかと考えてたんだがな⋯⋯手を出してくるなら別だ」
『自爆Lv2』なんてスキルを解放しちまって可哀想だと思った俺がバカだったな。こいつに同情の余地はない。
俺は脚を地面に固定された敦に近づくと、乱暴に右腕で殴り飛ばした。すると、淳は面白いように吹き飛び、他の倒れ込んでる吸血鬼達の仲間入りを果たした。
「それで?」
俺は東堂の方を向き、訊ねる。
「最後はお前だが⋯⋯どうする?」
以前キレた時よりも冷ややかな声で、俺はそう言った。
「まさか⋯⋯これほど、とは⋯⋯」
流石に東堂も俺の力を見て驚きを隠せないのか、冷や汗を書きつつ呻いた。
「予想外だ⋯⋯全くもって予想外だ⋯⋯私の力もまるで効いておらぬ⋯⋯」
ああ、コイツのスキルのことか。
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東堂武蔵
『吸血鬼12』
『衰弱6』
視認した対象に、生命力を十秒毎に6%削る状態を付与する。ただし、一度に付与できるのは二人まで。
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そう、『衰弱』。これがかなり強力なスキルだった。普通なら170秒くらいで死ぬ。しかし、気功法の生命力のストックに、余剰生命力の吸収、『覇王』による効果の弱体化により問題無く相殺する事が出来た。
唯一の懸念が美佳子にこれを付与しないかどうかだったが、何故か付与しなかった為、特に焦ることも無く対処できた。
まあ理由は不明だが、気にする必要も無いだろう。
「いや、全く本当に予想外だ⋯⋯」
東堂は同じことをやたらと繰り返している。もういいだろうと俺が東堂に一撃かまそうと近づいた瞬間。
「まさか、奥の手を使わされる事になるとはね!!」
何?と、その言葉に警戒を強めたと同時に。
『っ、マスター!!後方に敵が⋯⋯一瞬で現れました!!』
「なっ⋯⋯」
俺が思わず振り向くと、先程までいなかったはずの男が美佳子の傍に立っていた。そして、美佳子を持ち上げようとしている。
「くっ⋯⋯離せ!!」
俺は身体能力を全開にし、その男に殴りかかるが⋯⋯
「うおっ、怖っ!」
その声と共に、バチッという音がしたかと思うと、美佳子と共にその場から消え失せた。今のは⋯⋯!
「消え⋯⋯!?」
『東堂の所です!!』
再び俺が振り向くと、確かに東堂の隣にそいつはいた。美佳子も瞬間移動させられており、肩に担がれている。
「おっと、動かないでくれよ?⋯⋯よくやってくれた、樹。本当に危なかったよ」
「ああ!見てたぜ親父、あいつめちゃくちゃつえぇな!まぁ⋯⋯俺より遅いけどな!!」
⋯⋯クソ、もう一人息子がいたってのか⋯⋯!?
隠し球かっ、集団のトップなだけあって用意周到ってことかよ⋯⋯!
俺の馬鹿野郎⋯⋯『分体』くらい出して美佳子を守らせれば良かっただろうに!!
「さて⋯⋯流石にここまで手勢がやられてはここに留まるのは危険だな。下でも戦闘が行われてるようだし⋯⋯」
下で戦闘⋯⋯?
『八坂様に吸血鬼が憑依していたことを知った仁美様が遠慮することは無いと乗り込んだのです。それに陽菜様も参加し、約六十人を相手に暴れ回っています』
なるほどな⋯⋯クソ、これだと仁美の援護も間に合わねぇ⋯⋯
「じゃあ親父、どうすんだ?」
「とりあえずこの場は引くとしよう。その子と私を連れて、ここから離脱してくれ」
「了解了解っと。ん?淳はいいのか?」
「ああ⋯⋯あいつにはここの後始末を任せよう。そこの竜に何をされるか分からんがな」
「はー!それってつまり見捨てるって事じゃん!ま、あいつ出来悪かったし仕方ねぇな」
クソが、こいつら目の前で堂々と逃げる算段を付けてやがる⋯⋯そうだ、ライマ!あの樹とかいう奴のスキル構成は!?
『お待ちを⋯⋯⋯⋯これはっ』
ライマのやや興奮したような声と共に、脳裏にその情報が浮かび上がる。
――――――――――――
樹
『吸血鬼9』
『閃雷4』
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⋯⋯やはり、『閃雷』か。それは、この状況では最悪に等しい相手だった。
なんせ、ほぼ瞬間移動だ。本来は身体に負担がかかるから連発が出来ないが、『吸血鬼』の身体能力向上のお陰で常人より遥かに連発が出来るだろう。
さらに、問題は瞬間移動先が目視できるところならほぼ際限がない事だ。逃げの一手を打たれたら、同じ『閃雷』持ちの俺ですら即座に見失う。半径200mから出れば、ライマの索敵も届かない。
相手のスキルが『閃雷』だと判明した時点で、俺の負け⋯⋯そうなる筈だった。
『マスター、ご報告致します。スキル解放条件、『自分の持つスキルと同じスキルを持つ人間を五人確認する』を達成致しました。解放されたスキルは⋯⋯
『封印』
です。効果は⋯⋯分かりますね?』
ははっ⋯⋯奇跡みたいなことって、本当にあるんだな?
さぁ⋯⋯これで終わりだ。
おまけだよおまけ
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今回いた吸血鬼の持つスキル一覧
『鋭爪』
爪が鋭くなる(任意発動)。鱗で弾かれ、隆二の爪で逆に切り裂かれた。
『痺手』
TFSP第十班班長の持ってたのと同じ。触る前に蹴りを叩き込まれた。
『硬皮』
皮が硬くなる。関係なくグーパンで気絶させられた。
『蛇眼』
目が合った敵を痺れさせる。が、強化段階の差で弾かれるため無意味だった。
『気合』
心が折れない限り全能力に補正。が、心が折れたので効果発揮出来す。
『不退転』
前に進む限り身体能力が上がり続ける。が、より強い身体能力でねじ伏せられた。
『捨身』
攻撃に高い補正がかかるが防御に高いマイナス補正がかかる。頭突きされて気絶した。
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隆二のスキル
『封印』←NEW!