ifルート:竜化解禁
今回も二話連続投稿です。こちら一話目です。
51話「決闘の日曜日 その4」のifルートです。ルート分岐条件は『隆二が我慢出来なかった場合』です。
ここまで正規ルートと同じ。
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「あんた、まだ諦めて無いでしょ。」
「はっ・・・・・・当然、だろ?」
俺はそう返答しつつ、以前立川や坂口さんに言われたことを思い出す。
立川には「超能力が物凄く強い」と言われ、坂口さんには「支部長よりヤバい」と言われた。だから俺はこう思った。
それなら、もう、我慢せずスキルを使えばいいのではないか?と。
『・・・よろしいのですか?マスター。』
ああ。寧ろ今の方が力が無いから立川と坂口さんが感じた強さと合わないんだ、何か強いスキルを使って圧倒してやれば、逆に違和感が無くなる筈だ。今まで使わなかった理由も、「知らなかったから」で通せばいい。
・・・というか、もう我慢できないんだよ。自分でやっといて何だが、勝てるスキルを持ってるのに制限しなきゃならないって、ストレスが溜まる。相手は神の名を冠するスキルを使ってんだ、俺が多少強いスキル使ったって・・・別にいいだろう?
俺は壁によりかかり、フラフラしながら立ち上がる。
「・・・おい、生意気少女。」
「・・・あんたもまだそれ言うのね・・・何よ?」
さて、なんて言って発動させるか・・・適当でいいや。
「なんかいけそうな気がするから使わせてもらうぜっ!」
「は?」
『えぇ・・・?』
呆れたような声が聞こえたが無視。さて、初めての実戦使用だ・・・『竜人化』起動!!
「・・・なっ!?」
俺の体が変化する。手首から先、足首から先、首元に黒い鱗が現れ、爪は鋭く、目は瞳孔が縦に開き、頭部からは角が生え、身長が伸びた。
同時にこっそり『気功法』で回復しておく。竜化使った時に回復する仕様とでもしておけばバレないだろ。
「ははっ、本当に出来たな・・・」
俺は自分の腕を顔の前に持ってきて眺めつつそう言い、偶然上手くいった風を装う。
「何よそれ・・・ここに来て力の覚醒でもしたとか言わないでしょうね・・・!?」
雨宮は俺の姿を見て、動揺している。俺はそれに対して何も答えず、拳を握り、雨宮へ向かって突進する。
「はぁ!?」
雨宮は意味がわからないとでも言いたげな表情をしている。相手を追い詰めたと思ったら急に覚醒してしかも徒手空拳で突進してきたりしたら混乱もするか。本来自殺行為だしな。
「オラァっ!!」
俺は鱗に覆われた拳を握り締め、左足で強く踏み込み、『武装術』で洗練された右ストレートを放つ。
雨宮は腕を上げ、防御の体制をとっている。自分の身体能力に飽かせて受け止めることに決めたようだ。体に纏った雷で痺れさせるつもりだろう。それを見て俺はニヤリと口角を上げる。
「あめぇんだ、よっ!!」
俺はガードの上から思いっきり殴りつける。『竜人化』は身体能力も向上している、それに三段階の強化がなされてるんだ、その性能は『雷神』の身体能力強化に引けを取らない。
あとは『武装術』と素の身体能力の差だ、となれば俺に軍配が上がる。結果として、
「うぐっ・・・!?」
雨宮はガードしきれず、体勢を崩した。
「次だオラァっ!!」
当然俺は追撃する。今度は右足を踏み出し、勢いそのままに左足で後ろ回し蹴りを放つ。
「がはっ!?」
俺の足は容赦なく雨宮の腹に突き刺さり、吹き飛ばした。そして先程木刀で突いた時のように地面を転がり、しかし途中で受け身をとり体勢を整える。しかしかなり効いたようで腹を抑えて苦しそうにしている。
「げほっ・・・・・・なんで、痺れてないのよ・・・」
どうやら俺が思いっきり雨宮に触れてたのに全く痺れた様子が無いことに疑問を持ってるようだ。
「鱗のお陰じゃね?」
俺はしれっと知らない風にそう言っておく。鱗のお陰ってのは本当は知ってたが。
以前鱗の防御性能を確かめるため分体三号で実験しておいたからな。鱗がある部分は雷を通さず、熱に強く、金槌で殴っても大した痛みが無かった。流石ファンタジーの代名詞なだけはあって、竜の鱗はかなり強靭なようだ。
「さぁて・・・もうあんまりお前と差が無い訳だが・・・覚悟はいいか?」
その腐った性根を叩き潰してやる。
俺は手をポキポキ鳴らしながら雨宮に近づいていく。雨宮はその場から動こうとしないが・・・
『・・・!マスター!!』
分かってるってー・・・のっ!!
雨宮がノーモーションで放って来た雷を、半ば予想していた俺は腕を振り・・・雷を拳で弾いた。
「・・・は、はぁっ!?」
雨宮は俺が今やった事が信じられないようで、驚愕の声を上げる。しかしその状態でも二回連続で雷を放ってきた。油断ならないやつめ。というかサラッと遠距離解禁しやがったなこいつ!!
こちらも同様に気づいていたため、両手でそれぞれ叩き落とす。
「また不意打ちしやがって、卑怯とか思わねーのかー?」
「・・・・・・いやいやなんでさも当然のように迎撃してんのよ!!」
「勘!!」
「はぁーーーー!?」
実はあながち嘘でもない。『極ノ旗』の効果でライマが強化された影響か、スキルの違和感を感じやすくなっており、違和感を感じた瞬間に、何となく狙って来そうな場所を拳で払ってるだけなのである。
前半はともかく、後半は本当に勘なので防げているのは恐らく雨宮と俺が思考が似てるせいだろう。あーくっそイライラする!
「ここならどう!?」
「ど真ん中じゃねぇか!」
「ならこれで・・・!」
「顔面連打は怖いからやめれ!」
「そこなら!!」
「お前なんてとこを狙いやがる!?」
貴様っ!!男の急所を電気マッサージでもするつもりか!?しかし流石に接近しづらい、回し蹴り直後にすぐ追撃しに行けば良かったか。
まあ、過ぎたものは仕方ない、今どうするかだ。まあ・・・ハンドガン使えばいいか。
俺は右腕で雷を捌きつつ、左手でハンドガンを引き抜き、狙いを付ける。大体距離は7m。外すような距離ではない。
「げっ・・・でも、銃なんて使いこなせる訳、」
俺は脇腹に向け発砲する。
「痛ぁっ!?」
怪我はしないとはいえ、銃弾を食らったら当然強い痛みに襲われるだろう。雨宮は痛みに怯み、雷の射出を中断する。
俺はその瞬間、全力で走り出した。
「こ、このっ・・・」
それでも雷を放ってくるが、集中出来てないからなのか、威力も低いし数も少ない。狙いも散発的・・・危なっ!
しまった狙いが分かりづらくなったか・・・けど、こんくらいならごり押せる!
そのまま俺は雨宮の元まで辿り着くと、勢いそのままに中段蹴りを雨宮に向けて放った。
「がっ・・・!」
雨宮は防御しようとしたが、痛みで動きが緩慢になっており間に合わず、俺の脚はモロに雨宮の腹に突き刺さり、吹き飛ばした。
「あぐっ!」
そのまま俺がぶつけられた壁とは反対側にあった倉庫の壁にぶつかり、ガシャンと音を立てた後地面に落下した。
俺は油断無く雨宮に近づいていく。そして少し手前で立ち止まり話しかける。
「さっきと立場が逆だな。気分はどうだ?」
「っぐ・・・最悪よ・・・」
雨宮はそう言いつつ立ち上がる。流石に『雷神』を持ってるだけあって頑丈だな・・・でも、そろそろ王手だろう。
「あんまり舐めてるからこうなるんだよ・・・覚悟はいいか?」
「私が・・・負けるわけ・・・!」
雨宮は諦めず雷を放ちつつ殴りかかってくる。が、雷はあらぬ方向へ飛んでいき、パンチも左手で易々と受け止められる威力だった。
「なっ・・・」
「もう限界だろ。大人しく最後の一発貰っとけ。な?」
俺はにこやかにそう言いつつ右手に力を込めて引き絞る。ついでに今までの怒りや鬱憤を全て乗せてやんよ・・・遠慮はいらねーからな?
雨宮は慌てて避けようとするも、さっきパンチを受け止めた時にその腕を掴んで置いたので逃げられない。それを確認して雨宮の顔が引き攣る。
「ま、待って・・・」
「待たん!!」
雨宮の制止を無視し、俺は全力の拳骨を喰らわせた。
「ふぎゅっ!?」
最後はそんな少し可愛らしい悲鳴を残し、雨宮は倒れ込んだ。
「・・・・・・」
『・・・完全に気絶してますね。』
ライマもそう言ったなら確かだな。ってことは・・・
「・・・・・・いよっっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」
俺は勝利を確信し、思わずガッツポーズしつつ叫び声を上げた。
ムカつく雨宮もぶちのめせたし!使いたかった『竜化』も使えたし!!あー気分がめっちゃいいな!!
・・・『竜化』について質問攻めにあうだろうけどな。やべぇ、どう誤魔化そう。
おまけ
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〔はい、こちらが隆二の『竜化』解禁ルートとなります。〕
「微妙に途中ふざけたろお前。」
〔だって隆二も『竜化』使って余裕だったので、あまり深刻に書けなかったんですよ。急所狙いを隆二が必死な時にやられたらツッコミ入れずに毒づきながら避けさせてたと思います。最後の拳骨は隆二が余裕持ってたから出来たことですし。〕
「あんまり深刻じゃないルート、ということか。」
〔実際脳内で考えてる時もこんなノリでしたので。竜化使って必死になるのがあまり想像出来ませんでした。〕
「ちなみにこのルートだと今後の展開どうなるんだ?」
〔主戦力扱いされてTFSP本部行きですかね・・・あ、雨宮は少し丸くなります。〕
「そのルート八坂さん関われないんじゃ・・・」
「(八坂さん)・・・作者さん?」
〔いやいや事件に巻き込ませる形で関わらせようかと・・・それにこっちifルートですし・・・〕
「じゃあさっさと本編進めるんだな。」
〔そうですね。では、読者の皆様、ここまで読んで下さりありがとうございました!面白かったならブクマと感想お願いします!!〕
「いっつも言わないくせにお前・・・」
〔一回くらい言っといた方がいいのかなと思いまして。〕
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