ifルート:独りの結末
はい、ifルートです。何故か酷いことになりました。
ルート分岐条件は十三話「ウロボロス」にて、海斗と理恵が「戦わないことを選ぶ」になります。
時間軸的には十三話の後になります。それではどうぞ、お読みください。
狭く薄暗い路地裏で、二人の男が会話していた。片方はガタイのいい大柄な男、もう片方は細身の男だった。
「おい、例のブツは持ってきたな?」
「へいへーい、ちゃんと用意してあるぜー」
軽い口調でそう言った細身の男はアタッシュケースを二つ持っていた。
細身の男はアタッシュケースを地面に置くと中身が相手に見えるように開いた。
「どーぞ確認してくれ」
「そうさせて貰おう⋯⋯」
アタッシュケースの中身を相手が取り出す。それは拳銃と、その弾丸だった。
「ふむ⋯⋯本物のようだな。」
「そりゃー偽モン持ってきたりしないっての。当たり前じゃん?」
「貴様⋯⋯喧嘩を売っているのか?」
挑発するような物言いに確認をしていた男は苛立ちを覚え、そう言ったが、
「お?やんの?俺は別に構わねーぜ?」
言われた方は丸腰だというのに余裕の態度でそう返答した。するとすぐに男は首を振り、
「⋯⋯いや、やめておこう。お前らが妙な力を持っているのは知っている」
少し悔しそうにそう言った。
「ははっ、賢明な判断だな。で?金は?」
「分かっている⋯⋯」
大柄な男は懐から分厚い封筒を取り出し、それを相手に渡す。細身の男は中身を確認し、にっこりと笑った。
「よっしゃこれで交渉成立ってことで。今後ともご贔屓にー」
「ああ⋯⋯武器の提供、感謝する」
二人がそう言い合った直後。
『悪いが、その交渉は無かったことにして貰おうか』
「「!?」」
急に二人の脳内にそのような声が聞こえてきた。
「なんだ⋯⋯!?今のは一体⋯⋯!」
「ちっくしょ、何処にいやがる、出てこい!」
二人は警戒して周囲を見渡すが、誰の姿も見当たらない。
と、唐突に上からカンッ!という軽い音がする。それに二人は反応し上を向く。
しかしそこには何も無くーー
「寝てろっ!」
「がっ!?」
細身の男は隣から聞こえてきた声にハッとして視線をそちらに向ける。
するとそこには、地面に倒れ痙攣している男とーー
緑色の雷を纏ったフルフェイスヘルメットの人物が存在していた。
そのフルフェイスヘルメットのシールドには罅が入っており、何処か不気味さを感じさせる。
「な、なんだお前は!」
細身の男は身構えつつ、正体を訊ねる。
その問いにその人物は、少し間を開けて答えた。
「ーーお前らの敵だ」
その言葉を聞いた男は、よく分からないが、敵ならば倒すべきだと判断し、自らの『力』を発動させた。
「くらいやがれっ!」
男が右手を突き出すと、唐突に強烈な風が路地裏の中で吹き荒れた。謎の人物は、その風に煽られバランスを崩す。
「オラッ!」
今度は腕を上に振り上げると、急に風向きが上に変わり、その人物は上に高く、高く吹き上げられた。
「ハッ、雑魚が、そのまま落ちて死ねっ!」
生身で落ちたら建物の上でも確実に死ぬ高さだ。細身の男は勝利を確信し、笑う。
しかし、そのフルフェイスヘルメットが向きを変え、こちらを向いたと思ったその瞬間。
その人物は、目の前に存在していた。
「⋯⋯は?」
男は訳も分からず硬直する。謎の人物はその隙を逃す訳もなく⋯⋯
「⋯⋯セイッ!」
「ぐはっ⋯⋯」
男の腹を殴り、踞らせた。男は状況が理解出来ず、そのまま為す術なくうつ伏せに地面に倒れ込んだ。
「⋯⋯さて」
謎の人物は、その倒れ込んだ男に近づくと、背中をガンっ!と踏みつけた。
「がはっ!?」
「お前は⋯⋯ウロボロスの構成員だな?」
男は痛みに悶える暇も無く告げられたその言葉に、驚きで目を見開いた。
「色々と⋯⋯知ってることを、吐いてもらうぞ?」
その言葉に、男は自分が今どんな立場なのかを理解した。
――――――――――――――――――
『⋯⋯フルフェイスヘルメットを被る意味はあったのですか?』
だってあれじゃん?顔バレたら日常生活の方にも影響出そうじゃん。
俺は今、ウロボロスの下っ端から聞いたウロボロスの本拠地へと向かっている。いやぁウロボロスのメンバー探して知ってる奴から聞き出そうと思ってたが、一発目で本拠地が聞けるとはラッキーラッキー。
『嘘を言われてる可能性だってあるんですよ?』
いやでも拷問するぞって脅したらガチ泣きっぽく泣いてたし⋯⋯信憑性は高いと思うぞ。
それに、そのー⋯⋯失禁⋯⋯してましたし⋯⋯
『あれには驚きましたね』
いやー⋯⋯そんなに怖かったかな?腕だけ『竜化』しての壁ドン。
『腕が壁にめり込んでましたし⋯⋯それが自分に向けられたらと恐怖したのでは?』
あー⋯⋯なるほど。そら怖いかもな。
しっかし下っ端のスキルが大したことないスキルで良かったよ。
――――――――――――
下っ端
『操風』
風を自由に操れる。ただし範囲や勢いなどに上限がある。
――――――――――――
範囲を狭めて威力上げてたのか、俺を高ーく吹っ飛ばしたのは良かったんだけどねー⋯⋯
『『閃雷』との相性が悪すぎましたね。その場に瞬間移動で戻れるので』
そうだな⋯⋯っと、そろそろ着くな。
『⋯⋯間違いないようですね。スキルを持つ人間が一箇所に集まっています』
ウロボロスのアジトは言われた通りの場所にあったようだ。
さーて⋯⋯突入しますか?
『⋯⋯マスター』
どうした?ライマ。
『⋯⋯本当に、良かったのですか?たった一人で立ち向かうなど⋯⋯』
ああ⋯⋯いいんだよ。
あの時、俺は自分の選択をあいつらに委ねたんだ。そして、あいつらは戦わない選択を選んだ。
だから、俺は一人で戦うことを選んだ。全てを打ち明け、一人でウロボロスに立ち向かう道を。
だから、問題無いんだよ。
『ですが!あんな事を言った二人の為に、ウロボロスを潰す必要はあるのですか!?』
あるさ⋯⋯例え、化け物と呼ばれたって嘘吐きと、罵られたって⋯⋯あいつらは、俺の、大切な幼馴染なんだからさ⋯⋯
『マスター⋯⋯』
「⋯⋯ありがとうな、ライマ。俺のことを、慮ってくれてるんだろ?」
俺は、全てを打ち明けた。持っているスキルのこと全てを。フルフェイスヘルメットの正体を。
余りの力に、化け物と言われた。
何もしなかったから、嘘吐きと呼ばれた。
⋯⋯半分は、俺のせいだ。恥ずかしいだのなんだの言わずに⋯⋯最初から全部言って、全面的に協力してやるべきだった。
だから、俺はあいつらを恨みはしなかった。ただ⋯⋯あいつらとの関係は、二度と戻りはしないだろう。
「⋯⋯あんまり思い詰めるなよ。全てがお前の責任という訳では無いのだから」
「仁美⋯⋯」
アジトへの道中から合流していた仁美が慰めてくれた。
⋯⋯なんつーか⋯⋯元自分と分かっていても、いい女だと思えてしまうな⋯⋯こんな状況だからか?
「⋯⋯分かってるっての。それよか、サポートは頼むぞ」
「ああ。任せておけ」
ちなみに仁美もわざわざフルフェイスヘルメットを買って被らせてある。理由も同様。
「さて、それじゃあ⋯⋯行こうか」
そうして俺らは、アジトへ殴り込んだ。
――――――――――――――――――
「あー⋯⋯腹減ったなー⋯⋯」
ウロボロスのアジトの外で見張りをしている男は、交代前の為腹を空かせていた。
そんな訳でボケーっとしつつ辺りを眺めていたのだが⋯⋯ふと、遠くからこちらに歩いてくる人物がいるのに気づいた。
「⋯⋯んあ?今外に出てんの誰がいたっけ?」
見張りは記憶を探ろうとしてーー目の前に急に現れた存在に中断を余儀なくされた。
「ぬおっ!?いつの間に⋯⋯」
見張りは驚き後退り⋯⋯唐突に身体中に痛みが走った。
「あがががががががっ!?」
そして見張りは意識を失い、地に伏した。
――――――――――――――――――
見張りをサクッと無力化に成功した。持ってるスキルは『鷹目』。遠くまで見えるというスキルだな。
さて、それじゃあ中にお邪魔して一人ずつ無力化して、全員縛っておくか。その後警察でも呼んどきゃいいだろ。
さて、正面以外入れるところは⋯⋯無くね?
一応一通り見て回るが⋯⋯窓も空いてない。これじゃあダイナミックお邪魔しますしか出来ないじゃないか。
『感知系スキルを持った人もそれなりにいます。不自然な音を立てた時点でアウトになるでしょう』
⋯⋯じゃあもうダイナミックお邪魔しますでいいか。
「行くぞ仁美!」
「了解だ!」
俺らは地面のアスファルトを『装甲・腕』で纏い、同時に正面のドアを全力でぶん殴った。
ゴガァン!!と、凄い音がしたかと思うとドアが吹っ飛び、そのドアにぶち当たり二人ほどがノックアウトされた。ラッキーだな。
「な、なんだ?」
「侵入者かっ!?」
轟音を聞きつけ、構成員が多く集まってくる。その数ざっと⋯⋯
『33人ですね』
結構いるな⋯⋯でも・・⋯⋯
俺は『竜人化』を発動させ、『閃雷』も発動させる。
仁美も『蒼炎』バージョンで発動させたようだ。
あー、ヘルメットつけたまま『竜人化』すると角邪魔だな?まあ仕方ないか⋯⋯
俺は、スキルを発動させようとしているのか、手をかざしてきた男の方へと突進し、ぶん殴る。
「がっ⋯⋯」
男は凄い勢いで吹っ飛び、壁に叩きつけられ、ドサリと地面に落ちた。
それを見た周りの人間はビビって動きを止めた。
その間に俺はぶっ飛ばした男の様子を確認する。⋯⋯呻いてるし死んでは無さそうだな。
それにホッとした俺は、すぐさま攻撃移る。『閃雷』を高出力で発動、周囲にぶっぱなす。
「いぎっ」
「ぐっ⋯⋯」
「ぎゃっ」
「あがっ!?」
複数の悲鳴があがり、同時に5人ほどの人間が倒れた。
「うわぁっ!」
「あちいっ!」
「ぐええっ」
仁美の方も順調のようだ。と、思っていたら。
『⋯⋯マスター。増援が奥から来ています』
ふーむ?何人?
『15人のようです』
今追加で3人ほど無力化したが⋯⋯もう2人合わせて半分以上無力化してるな。なら増援が来てもあまり問題はなさそうだ。
と、奥のドアが勢い良く開き、見覚えのある男が入ってきた。
「なんの騒ぎだ!!」
「に、西岡さん⋯⋯侵入者です!」
「なんだと?⋯⋯っ!貴様はっ!」
おお?あいつってたしか、海斗と理恵を襲ってた幹部のおっさんじゃね?
「くそっ、今度は攻め入ってきたか⋯⋯!」
幹部のおっさんは銃を構える。
『マスター、彼らのスキルはこちらです』
お、サンキュ。⋯⋯うわ、『炎王』に『反射』に『減速』と⋯⋯強そうな奴ばっかだな。幹部のおっさんもいるし、精鋭部隊なんだろうか。
まあ、どうとでもなるだろ。行くぜ!仁美!!
『ああ!』
――――――――――――――――――
「ぐっ⋯⋯くそっ⋯⋯」
今、最後の一人、あの幹部のおっさんが倒れた。
精鋭部隊は善戦したが、仁美が『覇王』を使うことで、3分で鎮圧できた。しかし、まだ終わっていない。
『⋯⋯これで残るは一人ですね』
そう。最後の一人が奥に居座っているのだ。同時に出てこないってことは、一人で充分ってことか?だがまぁ⋯⋯納得できる理由がある。
俺が『覇王』を使ってない理由は、そいつ相手には俺が全力を出さなければまずいからだ。それ程までにヤバいスキルを奴は持っていた。
「⋯⋯行くぞ、仁美。ラストバトルだ」
「ああ⋯⋯気を引きしーー」
唐突に、仁美の声が途切れた。
「どうした、ひと」
『マスター!!避けて!!』
その声に咄嗟に反応し、俺は『閃雷』を使い前方へと退避した。
その直後に背中に氷を入れられたかのような寒気が全身に走る。
「なんだっ今の⋯⋯!」
理屈はも何もあったもんじゃないが、今避けなければ死んでいた。終わっていた。そんな確信があった。
『あの反応は動いてませんし、新手の反応はありませんでした⋯⋯いつの間に⋯⋯!』
「くそっ⋯⋯何者だよちくしょう⋯⋯」
俺は振り返り、乱入者の顔を見ようとしてーー
その場に、崩れ落ちた。
「⋯⋯あ?」
体が動かない。
「いっ⋯⋯たぃ⋯⋯なに⋯⋯⋯⋯が⋯⋯⋯⋯」
口も動かない。
手も。
足も。
全身が全く動かない。そう⋯⋯動いているべき器官までも。
『マスター!?『聖光』を!』
俺はライマに言われるがまま『聖光』を発動させようとして⋯⋯発動、しなかった。
『そんなっ!?まさか、もう、マスターは⋯⋯!?』
だんだんライマの声がとおくなってきた。
なにも感じなくなってきた。
何が起きてるのかもわからない。
⋯⋯こちらに歩いてくる足音が微かに聞こえた。その音は近くで、止まる。
『マ⋯⋯ー!しっか⋯⋯⋯下さ⋯⋯!!し⋯⋯⋯⋯て⋯⋯⋯⋯り⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
ライマの声ももうほとんど聞こえない。
そんな中、こんな声が聞こえた気がした。
「残念、ゲームオーバーだね!」
その声を最後に、俺の意識は永遠の闇に沈んだ。
おまけ的なもの
〔作者〕
「隆二」
『ライマ』
「最初っから重いなぁ!?海斗も理恵もこんな酷い奴じゃねぇぞ!」
〔ifルートなんで・・・あと、書いてたらこうなってて・・・〕
『何がどうしたらそうなるんですか・・・』
「つか、最後!何!?俺死んだ!?」
〔おお 隆二 よ 死んでしまうとは なさけない!〕
「おめーが書いたんだろが!?」
『しかしまさかバッドエンドとは・・・』
〔なんでこうなったんでしょうか・・・(すっとぼけ)〕
「いっぺんしばいたろかテメー!」
『落ち着いてください、マスター。本編はバッドエンドになりませんよね?』
〔基本的にハッピーエンドの方が好きなので大丈夫です。安心してください。〕
「(嘘くせぇ・・・)」
〔それに、ifルートもバッドエンドばかりなのもアレなのでギャグ的なものも書こうと考えております。〕
「『自爆』とか?」
『『自爆』ですか?』
〔まあ・・・『自爆』ですよね。〕
「まあ感想で『自爆』を望む声多かったもんなぁ・・・」
〔まあそれはさておき、初のifルートでしたがいかがだったでしょうか?宜しければ感想をお願いします。〕
「ストレートに感想下さいって言うか普通?」
〔いや、感想を参考にして次のifルート書こうかと・・・ともかく、よろしくお願いします!〕