互いの出会い
その日、あの人は突然やってきた
深くフードを被りこげ茶色のマントを羽織って……
ここはフィンタール王国の奴隷収容地。各国から奴隷たちが連れてこられる場所である。その奴隷たちは己を買い取る主人が現れない限り、その収容所で汗水流して辛く苦しい重労働を強いられる。だが、己を買い取る主人が現れたからといって労働が軽くなるとは決して言えない。人によれば今より過激なことをさせる輩もいるだろう……そんな中、自分を買い取ってくれる人を待ち続けひたすら働く少年が一人居た。彼はこの収容地に来て早十年。未だに主人は現れない……
「おら!さっさと働け」
そう言って奴隷たちに鞭を叩きつける監督者。その鞭は少年にも向けられた。それは奴隷として仕方のない事だった。そこへ主管が一人、客を連れてやってきた。
「全員整列しろ」
その声でみんな作業を中止する。縦列二十名、横列六十名。計百二十名が並ぶ。並び方は番号順で当然ながら客の目を見てはならない為後ろ向きである。
(はぁ…どうせまた俺じゃないんだろうな…)
少年は最初から諦めていたのか、心の中でそう呟き肩を落とした
「奴隷番号十四番!前へ」
主管の叫びには誰も答えなかった。と、少年の後ろに居た奴隷が少年を軽く蹴った
「十四番ってあんたじゃねぇのかい」
その言葉にハッとした少年は大きく返事をした。返事の遅れで主管は鬼の血相をしていた。
「じゅ……十四番は俺です」
主管の前でぼそぼそと言うと、主管は
「声が小さい!そして、私はそんなこととっくに知っている!私ではなく客人に挨拶をしろ!」
すると、クスクスと客人が笑った
「初めまして十四番さん、今日から僕の連れ人さんだよ」
客人の顔はフードのおかげで見えなかったが、声や身長から察すると男性のようだった。
「はっ始めました!!」
思いっきり噛んでしまったようで、何を始めたのかと言う疑問が浮かぶような発言をしてしまった