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「今日のお昼は屋上で食べない?こんなに晴れてるし風も少ないから、気持ちがいいと思う」
瀬戸くんのその言葉で、今日のお昼は屋上で食べることになった。教室を出る際、静江と菜々が意味深な笑みを浮かべて私に手を振っていたので睨んでおいた。笑われた。
「もしかして、俺とお昼は嫌だった?」
屋上について早々に瀬戸くんにそう聞かれた。
「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……瀬戸くんこそいいの?いつも一緒に食べてる人とかいるんじゃない?」
そう聞くとちょっと困った顔をされた。
「いや、いたんだけどね……」
「何かあったの?喧嘩したとか?あ、これ聞かない方がいい感じ?」
「いや、大丈夫。元々昼は生徒会のメンバーと食べてたんだけど…」
と煮え切らないような返事が返ってくる。あれ?
「そういえば生徒会の人達昨日三条さんといたね~もしかして、それが原因だったりとか?」
「うん。まあ、ちょっとそんな感じ。それより、数学の話なんだけど……」
曖昧に笑われた。もうこれ以上聞かないで欲しい様子だ。会話も別のものに変えようとしていることだし、それ以上聞くのはやめることにした。
「あっ、それほんとに教えてくれるつもりだったの?」
「うん、勿論。嘘なんてつかないよ。それで、どうする?いつが空いてるの?」
「うーん、明後日とか?」
「分かった。じゃあその日の放課後は空けておくよ」
「用事とか無いの?生徒会の仕事とか、大変そうだよね」
「いや、今はまだ大丈夫。夏休み近くになったら秋の文化祭に向けて忙しくなりそうだけど」
「そっか、じゃあその日よろしく」
トントン拍子にその話が具体的になっていく。その場の冗談かと思っていたから驚いたけれど、うん。ちょっと嬉しいかも。
空は青空で雲が所々散らばっている。そよそよと吹く風が気持ち良い。
「屋上でご飯もいいね~」
「そうだね。明日も晴れてたらここで一緒に食べようよ」
瀬戸くんがそんなことを言う。
瀬戸くんは今お昼食べる人いないんだよね、そっか。
「お昼、よかったら明日からも一緒に食べる?今度は静江や菜々も一緒に。四人で」
そう言うと瀬戸くんに苦笑された。何故。その理由を問い詰めてやりたい。何だか碌でもないこと考えてる予感がする。
優しくて王子様みたいって、あの噂はもしかして嘘?
「ありがとう、それじゃあ誘いに乗って宜しくされようかな?」
でもまあ笑っているし、気分も良かったからその事については言わないであげておこうと思う。