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「凪ー、今日のお昼三条さん誘おうと思うんだけど。どう?いい?」
「三条さんめっちゃ可愛いし優しいし超いいよねー。凪も会ってみれば絶対気に入ると思う!」
「えっ」
私の席に来るなり静江と菜々が唐突にそんなことを言うから驚いてしまった。
元々私は静江と菜々と三人でいつも仲良くやっている。お昼を食べるのも大抵三人だ。だからこういうことは初めてで、少し驚いた。
でも最近二人は三条さんの話ばっかりしていたからよく考えてみればそうおかしい話ではないのかもしれない。
三条さんといえば凄い美少女だし、優しいと評判になっている。進学校として有名な一宮学園の編入試験にパス出来るほど頭も良いらしい。これは人気者にもなるよねぇ。
いいよーと軽く返事をしようとして口を開くが、それを遮るように隣の席から声がした。
「ごめんね、でも安西さんは今日俺とお昼食べる約束してるんだ」
隣の席にいるのは瀬戸暁くん。
ニッコリと笑うその笑顔がキラキラしい。流石女子に王子様と呼ばれているだけのことはある。
でも、約束なんてしてないんだけど?
「あっ、そうだったのー?やだーもう凪ったら!早く言いなさいよー」
「ごめんごめん、それなら仕方ないねー」
二人は何を誤解したのか打って変わってにまにまと笑う。だから違うんだって。
「えっ、ちょ、ちょっと違うってぇ……」
何て困ってる内に二人はお邪魔と言わんばかりに手を振って行ってしまった。二人共行動が早すぎる。
それもこれも瀬戸くんのせいだ、と隣を見ると瀬戸くんは困った顔をしていた。何故。
「ごめん、つい」
「ついって何よ~、お昼一人になっちゃったじゃん」
「そっか、じゃあ一緒に食べようよ。どうせ二人にはそう言っちゃったんだし」
非難がましく言った筈なのに瀬戸くんはどこか飄々とした顔付きだ。絶対悪いって思ってないな、これ。
「そっか、まあそうだね。じゃあよろしく」
といっても今更だったし諦め心地で返事を返す。すると瀬戸くんは少しだけ目を張った後、一層綺麗に笑った。
笑顔がとても眩しい。
爽やかというか何て言うか、表すなら正統派って感じだ。これはモテるよ、グラグラきちゃうよ。
「ありがとう」
こっちこそ思いがけなくいいもの見せて貰い、ついお礼を言いたい気分になった。