村の現実
走り続ける俺だが、村には柄の悪い連中がウロウロしてるだけで、村人らしい村人が見つからない。柄の悪い連中は重装備な為、物々交換したらいいものが手に入りそうとも少し思ったが、相手にもして貰えないだろうという思考でかき消した。
「諦めずに走るか」
二人は村人が見つかっただろうか?あんなにドヤって出てきたのに、俺全然だわ。
俺は仕方なく、もっと危なさそうな裏路地へ向かった。もしかしたら、裏路地に村人が隠れているんじゃないって期待をして。
しかし、そんな期待は簡単に裏切られる。
「うわっ、くさっ…」
裏路地に入ってすぐに、鼻に突き刺さるような鉄の臭いが充満していた。何となくわかりつつも、俺は進み続けた。ここで足を止めてはいけないと、そんな気がした。
しかし、後でそれを後悔することになる。目の前にしたのは想像以上に無惨な光景。
俺は絶句した。そこに広がっていたのは、無数の死体。そこには顔見知りの姿もあった。死体は新しいものから、腐りきって個人を認識出来ないものまで様々だった。
これが今の俺達の村の現実。いや、この世界の現実なのかも知れない。
「魔王サタン、ぜってぇ許さねぇ」
今までは勇者に対する憧れが強く、まだ見ぬ人々に出会うことにワクワクしていた自分がいた。けど、そんな浮かれてる場合じゃない。一刻も早く魔王を追放しなければ。さもないと、これ以上の人が死に、そのうち世界が滅びる。俺の心には、魔王に対する憎しみと復讐心が募った。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その時、奧のほうから女の子らしい悲鳴が聞こえてきた。また、誰か殺された?いや、まだ助かるかも知れない。俺の足は勝手に悲鳴のほうに走り出していた。もしかしたら、助けられるかも知れない。俺の頭には相手が強さとかそういうものはまるで考えていなかった。ただ、一人でも多くの人を救いたかった。
だから俺は走っている。あの死体の山を見たくせに、あの死体の山の一部になるかも知れないのに…。でも、俺にとってはそんなことどうでもよかった。もしもそれで女の子だけでも助けれることが出来るなら、それはそれでありだと思ってしまうようなやつであるから。