村人A、村人Bを誘う
俺は閉まっている倉庫のドアの前に座った。
「なぁ、ミィリィア」
返答はなく、静かな時間が流れる。俺はミィリィアの返答をずっと待ってるほど馬鹿ではないので、少し時間を置いてまた話し出す。
「鍵が閉まっているし、倉庫に入ったの見たから、そこにいることはわかってる」
だけど、一回意地を張ると、なかなか出てこれないのがミィリィア。相手にどう接していいかわからないでいる人付き合いが苦手な女の子。だけども、それを隠そうと必死でつい意地を張ってしまう。俺、気持ち悪いかも知れないけど、全部分かるんだよ。お前の隣でお前のことずっと見てきたから。
だからこそ、お前をここから出せるって思うんだ。いや、ミィリィアならミィリィアの意思で自分で出てきてくれるって。
「ミィリィア、お前の力が必要なんだよ」
依然として返答はない。だけど、ミィリィアが無反応だなんて思わない。この厚い厚い扉の向こうには、自分の反応をバレないように必死に隠そうとしてるミィリィアがいるはずだ。だからこそ、俺は無音の扉に優しく話しかける。
「ほら、お前体力あるし。よく、俺のこと蹴ったり殴ったりしてるだろ?あれなかなか強いんだよな。俺達のことまとめてくれるしさ」
俺は扉に手を当てる。この扉が心の壁のようだ。ミィリィアが遠い。どこにも行かないでくれよ、ミィリィア。お前の居場所は俺達だろ?
「なぁ、ミィリィア。お前がここに残って、俺達が旅に出たら、お前に居場所あんの?」
ミィリィアは人と関わろうとすると、つい暴力的になってしまう。自分のことがなかなか理解されないからだ。自分の本音を言うのが普通の女の子よりちょっと苦手だからだ。その結果、ミィリィアを理解してくれる人は少ない。そんなミィリィアを俺は隣で自分なりに支えてきたつもりだ。
俺は昔言ったんだ。あいつが苛められている時に囲んでる男の集団から手を引いて連れ出して。「お前は俺がいるから後は心配すんなって。友達なんてそんな多く必要ねぇよ。友達はミィリィアの好きな範囲で作れ。そしたら、そいつら全員俺が守ってやる」って。
なのに、ミィリィアを心配させてんのは俺だ。申し訳ねぇな、いつも俺の無茶に付き合わせて。
「俺は生憎ここでうじうじしてられるような性格じゃねぇんだわ。だから、もう少しだけ俺の無茶に付き合ってくれ」
ここでお前と離れたくない、それが何よりだった。こんなひ弱な俺だけど、お前のこと守ってやれるぐらいに強くなるから。
「でも…」
ミィリィアの小さな声が倉庫の中から聞こえた。その声は弱々しくて、今にも消えてしまいそうだった。
「俺は死なねぇよ。有言実行、それが俺のモットーだから。お前もガーネットも死なせない。俺、強くなるから、それを隣で見ていてくれ。いつも俺の成長を見守ってくれてたのはミィリィアだろ?」
そう言うと、重くて厚いと思っていた扉が開いた。
「仕方ないわね。危険なんだし、私いないとあんたまた暴走するでしょ?止めようと思ったけど、あんたの無計画で突っ走る無駄なポジティブ精神を幼い頃から知ってる私だから、あんたを止められないこともわかった。無計画なあんたに計画を立ててあげる。感謝しなさい」
その言葉と反比例した体は、涙が堪えきれていなかった。
「よろしくな」
俺はミィリィアを抱き締めた。暴力は痛いけど、抱き締めるとこんなにか弱くて細い女の子。こいつに無理させる訳にはいかねぇ。その為に俺、強くならないと。
「ありがとう」
これでようやくメンバーが揃った。さて、これから冒険だ。