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ビリーブエンジェル  作者: 桃井雪
9/12

壊れた絆

あれは、ある日の昼下がりのことだった。

俺はいつもどおり、天空界から人間界を見ていた。人間たちがどのように暮らしているのかを。

ただの日常だった。


でも、その日だけは、なにかが違った。


人間界を見ているときに、ふと世界の一部に不穏な空気を感じたんだ。

ちょうど、この森の真上のほうからね。

何かおかしいと思って、ちょっとした偵察のつもりだったんだけど。

すぐ帰ればいいからと思って、ゲートを潜らず、俺しか使えないルートを通って人間界へ降りた。


その時に、この対天使用の結界に気がついたんだ。

やっぱりおかしいと思って辺りを偵察した。

けれど、目立っておかしいところは見つからなかったんだ。

仕方がないから出直そうと思って、天空界へ帰ろうと思った。


けれど、どんなに頑張っても、天空界へ通じるゲートが開かなかったんだ。


正直焦った。何とかして天空界と通信できないかと思ったんだけど、何をしても無駄だった。

何もできない。天空界の力が何もできなかったんだ。完全に天使の力がシャットアウトされてた。


ここまで自分の行動を悔やんだことはなかった。

なんて浅はかなことをしてしまったんだろう、ってね。でも悔やんでもどうにもならなかった。



それからもう、1年もたってしまったなんてね。



ミカエラの言葉を、イアは信じられない気持ちで聞いていた。


「じゃあ...ミカエラ様が、今まで連絡を一切くださらなかったのは...」


「あぁ。連絡したくても、できなかった」


ミカエラは、自分の髪の毛をくしゃっとかきあげた。


「みんなに心配かけた...バカなことをした。俺は...大天使失格だね...」


「.........そんなことありません !」


気がつくと、イアはそう叫んでいた。


「なぜ、私がここにいると思っているんですか!」


「イア...」


「あなたが心配だったから...一刻もはやく、あなたに戻ってきてほしかったからですよ!」


イアはそういって、にっこりと微笑んだ。


「誰もがあなたの帰りを待っています。でなければ、遥々こんなところまできませんよ」


「.........あぁ。そうだな。早く帰らないとな...」


ミカエラもつられて笑顔になってくれたことが、イアは何よりも嬉しかった。



とりあえず、状況は把握した。

あとは----。


「ここからどうやって出るか...」


「えぇ...。一体どうすれば...。ていうか、そもそもこんなもの一体だれが...」


「あぁ。作ったやつなら知ってるんだ」


ミカエラの言葉に、イアは目を丸くした。


「知ってるんですか!?」


「あぁ。あいつの狙いもわかってる。だから、下手に動けなかったって言うのはあるんだがな」


いつにない真剣な表情に、イアの表情も険しくなる。


「ミカエラ様、それは一体...」


「----そいつは。そいつの名は----」


その名が聞こえようとしたまさにその時。

イアの背後で物音がした。


「...っ!」


「下がって、イア!」


ミカエラがイアの前に立ちはだかる。一瞬、雷雨かと思ったのだが、違う。雷雨はこんなに威嚇するような気配出していない。

だとしたら、一体...。

イアの背後にあった茂みが、一層音を立ててこちらへ近づいてくる。

緊迫した空気が、流れる。

そして、茂みの影から現れたのは----!




「.........え...?」




思わず、そんな声が漏れた。

茂みからあらわれたその、特徴的な髪の毛。


----どうして...!




「どうしてここにいるの...ほたるちゃん!」




親友の、ほたるが立っていた。


「どうして...どうしたの...?」


「だ、だって...イアちゃん、急にいなくなっちゃったから...心配で...」


ほたるはそう言いながら、そっと目を伏せかける。


「ご、ごめん!ちゃんと言えばよかった...ごめんね、ほたる----」


イアがほたるに駆け寄ろうとした瞬間、強い力がイアを引き留めた。


「...ミカエラ様?」


「イア、そいつに近づくな」


低く、耳元に響いたその声に、イアは思わず目を見開いた。


「近づくなって...あの、あのこは----」


「あいつだよ、イア」


「え...?」


ミカエラの言っている意味がわからなかった。

いや...わかりたくない。

いや。それ以上言わないで...


「イア、あいつだ」


「やめて...」


「あいつなんだよ、イア!!」


「やめて!!」




「あいつが...!あの紅島ほたるが、ここに結界をはった張本人なんだよ!!」



一番信じたくなかった事実を突きつけられ、イアは思わず視線を反らした。

そしてここから始まるのだ。


悪夢の時間が----。

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