高校生ですが、何か?
私立聖クランベル高校
1年Z組 神崎 イア
これでも私、立派な天使です!
まぁ、なぜ天使がここにいるのか。
理由は至って普通。天使であろうと、私は普通の高校生の歳。そりゃまぁ、憧れるわけですよ。女子高生に。
そんなわけで、今年は大天使ガブリエルに許しをもらい、高校に入学。そしてここが私の学校、私立聖クランベル高校と言うわけです。
木漏れ日のさす並木道を歩いていると、とても心がうきうきします。ずっとドキドキです。
「おーい、イアー!」
ドキドキなわけで...
「イアー!イーアー?イアー!」
「やかましいわっ!!」
私は持っていた通学鞄を思いっきり振る。すると案の定、手応えがあった。
「ぐおっ!?」と言う何とも情けない声をだし、その場でお腹を押さえて踞る少年。見飽きた茶髪。
「朝からイアイアうるさいのよ!もーちょっと静かにできないの、雷雨!?」
すると少年は苦笑いを浮かべた。
こいつは天明雷雨。私と同じ、天使だ。
「いてて......そっちも朝から元気だな...」
「あんたほどじゃないわ」
少しあきれぎみ言う。そして雷雨を置いたまま再度歩き出そうとすると
「ちょっ!ちょっとまってよ、イア!」
「もー...行くなら早く行くわよ」
「はいはいー☆」
雷雨は上機嫌で私の隣に並ぶ。
...さっきの、ホントに痛かったのか?
疑問を抱いたものの、これ以上何を追及してもはぐらかさらるだけだ。
そう感じた私は、黙って並木道を再度歩き出した。
気になったかもしれないけど、何で雷雨がいるか?
理由は至って簡単。雷雨も同い年だからだよ。
......何で同い年何だろう。
自然とため息が出た。
だがまぁ、この世界の空気も悪くはない。とても新鮮だ。
するとふと、脳裏をある言葉が掠めた。
---忘れないでね、イア。
聞こえてきたのは大天使ガブリエルの声だった。
(忘れるな、か...)
窓の外を眺めながら、ふと私はため息をつきかけた。
私と雷雨が天使であることを隠し、この世界へ来た理由。実をいえば、あれだけではなかったのだ。
たったひとつ。ある任務を抱えてここへ来た。
それは---
イアがそこまで考えた途端、ふと目の前をなにかが通りすぎて行った気がした。
イアはハッとして立ち上がった。
急いで教室をあとにしようとすると、突然誰かに腕を捕まれる。
「だ...っ!?」
「俺だよ、イア」
「雷雨...」
「今の、みたよね?」
いつになく、真剣なその眼差しに、イアも同等の眼差しを返す。
「見た。行こう、雷雨」
イアの言葉に、雷雨がそっとうなずいた。