別れと出会いは紙一重
初書きの作品なので粗いところも多いと思いますが、楽しんでくださると嬉しいです
俺は枕梁創〈まくらばり そう〉。
今日は俺が設計を手がけた家が上棟を迎える記念すべき日だった。
いつも通り足場で作業していると
いつも通り現場監督が呼びかける。
「創!足元気をつけろよ〜」
今日は風が強くて足場が不安定だ。気をつけないと。
なんて思っていたら、突然轟音と共に視界が傾いた。
「うわぁあ!」
背中に強い衝撃が走った。落ちたのか??
暗くなっていく視界と思考の中で考える。
骨組みは設計通りだ。よし………じゃなくて!
あぁ、完成した家を見たかったな………………。と。
目が覚めると目の前に光を放つ靄があった。
どうやら俺は死んだらしい。言われずともわかる。
というか監督はフラグ立てんなよ。
「けど、死後の世界なんて本当にあるんだな。 宗教でもなにか信じてりゃ天使がお迎えにでも来たのかな〜?」
近くにあった通勤バッグを手繰り寄せて恐る恐る靄に触れてみた。
すると靄は眩い光を放ち、弾けた。咄嗟にカバンで顔を覆う。光が徐々に収まる。すると目の前にはぼんやりとした知らない世界が浮かんでいた。中世ヨーロッパを思わせる石造りの街並みにどことなく貧相な城。おそらく城下町といったところだろう。
俺が見えた世界を分析している間に
謎の声からゆっくりと話しかけられる。
「元の世界とは異なる世界で第二の人生を送るか、地獄で働くか、どちらが良いか選べ」
死んでまで働きたくないだろ、てかなんでそんな極端な選択肢なんだよ。何か裏でもあるのか?と思う気持ちを噛み殺し、質問をしてみる。
「その異世界はどんなところなんだ?」
「世界」は答える
「長閑な平和の広がる…………」
「それにします!!」
「ただし、私を創り直してくれ」
……………………は?
何?創り直すって?この後説明会でもあるのかな?
家?街?
「一旦待って!」
「もうお主の言葉は聞いた。建築家じゃろ?契約は成立じゃな!」
「ちょっ……待って……」
言葉を言い切る間も無くまた眩い光に包まれた。
――――――――
「起きてくださーーい!!」
可愛らしい声で目を覚ます。
はっ!俺は何をしていた?
確か、謎の声に勝手に契約成立ってことにされて、異世界送りになって、、大人って怖ぇな。発言には気をつけよ。
てかこの声の主は?
「やっと起きましたか!こんなところで裸じゃあ風邪ひいちゃいますよ!」
本日何度目かの
「………………は?」
急いで上半身を起こすと確かに裸だった。そして、足裏がものすごく冷たい。どうやら洞窟の中に寝ていたようだ。通勤カバンで股間を隠し、立ち上がるとお尻に石が刺さっているのに気付いた。
思わず場所くらい考えろよ、、と言いそうになったが
謎の声がその気になったら地獄送りにされる可能性も否定できないのでこれもまた噛み殺した。
起こしてくれた少女に話しかける。
エメラルド色の綺麗な瞳に橙色の美しい髪。正直に言おう、見惚れてしまった。年下っぽいのにいけないいけない。
「起こしてくれてありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
しまった、つい敬語になってしまった。
「もう、なんでそんなに堅苦しいんですか?私の名前はフロー・フランメ。 フローって呼んでね! 君はなんていう名前なの?」
しまった、指摘されてしまった。
「俺は枕梁 創。よろしく。というか裸の男が急に寝っ転がってて良く話しかけられたな。怖いとかなんかあるだろ」
「全然そんなことないよ〜君優しそうだったし、それに何か困ってそうだったし」
この娘、やるねぇ。中々心を掴む回答するじゃないか。
「卓越性はなんですか?」
あぁ〜異世界はそういうのもあるのか〜。
「ごめん、わからないんだよね」
「そうですか、何か思い当たることないですか?」
「とは言っても、、うーむ」
「一旦、私の村にいきましょうか」
「村まではどのくらいかかる?」
「馬車で1時間40分くらいです」
洞窟の出口を見ると、夕焼けの光が差し込んでいた。今すぐ村に向かわないといけないな。
というか円ってここでも使えるのか?宿ってあるのか?
そう思っていることを見透かしたようにフローは言った。
「今日はひとまず私の家に泊まってください!」
ん?女の子の家に、、?いいのか、、?
「馬車は洞窟を出てすぐのところに繋いでいます」
フローは馬に跨り、俺は車輪が付いた木の板の上に座った。もうわかる。お尻痛いやつだ。
「揺れると思うので気をつけてください」
「馬、扱えるんだな」
「当たり前ですよ!みんなできます」
俺は普通以下と言われた、、というのは捻くれすぎか。
村が見えてきた。
「あれが私の村です」
「もうすぐか」
地獄の山道を越えたかと思ったが道が整備されてないらしく、揺れる度にお尻が猛烈に痛む。痔ができちゃうだろ〜やめろ〜!
――――――――
食卓――――
ゴゴゴゴゴという地鳴りのような擬音が聞こえる程だ。
彼女の家族と食卓を囲むことになったが、父親がべらぼうに怖い。良い人だとは思うのだが、逞しい腕や俺の2倍はあろうかという肩幅により、本能が喋りかけることを拒否する。一応泊めてもらうという旨を伝えはしたが、食事中に話しかけることはできなかった。美味しそうなチーズフォンデュもまるで味がしなかった。
食事を終えると少し外を歩いて割り当てられた小屋へと向かう。使っていなかったらしく、少し埃を被っているところもあるが、小さな机に蝋燭、ベッドと一晩を明かすのには十分すぎる部屋だった。
しかし、ここで気づく
「スマホ使えねぇじゃん……」
ソシャゲの連続ログインが、、とか気にしてる場合ではないな。うん。
貴重な充電を切らさないために電源を切り、カバンにしまう。
することもなく、特に寝付ける時間でもないのでなんとなく窓の外へ視線を向ける。即座にあることに気付く。
向かいにある家を見ると、窓が小さく採光が悪い。あれでは気が滅入るだろう。、玄関口は高く、老人や足が不自由な人には大きな負担になるだろう。天井が低いことでリラックスもしにくい。更には壁の塗装は剥げ、屋根には穴のようなものも見える。あれでは住み心地は良くないだろう。
折角なので、久しぶりに家の設計図を描いてみた。
コンクリート、、はなさそうだな。ならば石と木材の調和。住まいとしての温もりとモダンなかっこよさを同居させる。リビングは開放的に吹き抜けにし、玄関はスロープにして上がりやすくさせる。東側に大きめの窓を作って朝日を取り込めるように、、、そんなことを考えながら描いていると蝋燭が消え、夜を知らせる漆黒に包まれる。
「そろそろ寝ますか……」
そう思い、布団に潜った正にそのときだった。
突然痺れたような感覚がして、意識を手放した。
次に気がつくと、またあの「世界」がいた。
「俺が全然お前を創り直さないからクビか??」
建築は一晩にしてならず。ですよ。
「世界」は何も喋らず、俺の前に一冊のアルバムを落とした。俺が生前、仕事の合間を縫って描いた設計図達。どれも造ることができなかったな〜なんて思いながらページをめくっていると、また眩い光に包まれた。
毎晩あるのか?コレ。
小鳥の囀り声と窓から差し込む朝日で起こされた。
なんとなくベッドの上でぼーっとしていると、フローが起こしにやってきた。
「起きてください!ってもう起きてましたか!」
フローは机の上に置かれた設計図とアルバムを見る。
「なんですかこれ?」
あそこに置かれたのか。
「あぁなんでもないよ。ただ、あの家なんとなく住み心地が良さそうじゃないなと思って」
「あそこの家ですか。足の不自由なおばあちゃんが1人で暮らしているみたいですよ」
どうりで管理が行き届いていないと思った。
昨日は暗くてわからなかったが、フローの家は大分綺麗にされている。
「この家は綺麗だね。しっかり管理してくれている証拠だ」
「うん。お父さんが直してくれたりするんだ〜」
中々かっこいい父親じゃないか。
家族が快適に過ごせるようになんてわかっていてもできることじゃない。
「この設計図のおうちなら、おばあちゃんも楽しく過ごせると思うな〜」
「でも、この家はちょっと天井が高すぎて、お掃除とかは大変そう、、」
なるほど。使う側だからこそ出せる意見だ、参考になる。
設計図を手に持ち、アルバムは鞄にしまった。
玄関からゴミ袋を持ったおばあさんが出てきた。思ってたよりファンキーか!?
「お手伝いしましょうか?」
ゴミ袋を持ち上げ、おばあさんに肩を貸した。
「ありがとうねぇ」
「今の家で不便に思うところとかないですか?」
「玄関口が高いのと、天井が低くて圧迫感があることくらいかしらね」
「修繕したり、新しい家を買うならどんな建物が理想ですか?」
「嬉しいけど、修繕費が高くてできないのよ」
「そんなお金は持ってないわ」
ゴミ袋を一旦地面に置く。
「一旦この設計図を見ていただけますか?」
「あんまり詳しいことは分からないけど、明るそうな家で玄関口にスロープが付いているのがいいわね」
「大きな窓があるのでしっかり光を取り込んで家の中を明るくすることができるんです!」
「昔は植物を育てていたのだけれど、今は外に出てお世話するのが億劫になってやめてしまったの」
「こんな大きな窓があれば、家の中で育てられそうわね」
「はい!素敵な趣味ですね。勿論家の中で育てられます」
「ここをこうして……」
おばあさんの家に当てはめるように指を滑らせていると、家がひかり始めた。
光が収まると、おばあさんの家がさっき書いた設計図通りになっていた。
「!?!?」
こりゃすごいな!俺の卓越性は設計といったところか?
突然俺の脳内に例の謎の声が聞こえてきた。
「そなた卓越性は【建築家】《アーキテクト》じゃ」
そういうことか!この卓越性を使って街を作れってことか。合点がいった。
フローがやってきた。
「もう、遅いですy……」
「え、ええぇ!!」
フローは驚いてこっちを見た。
「すごいですね!」
「創君の卓越性ですか?」
創君って!
「俺も今気付いたが、、、」
「スロープが付いたからおばあちゃんも楽になりそうですね」
この力、何かに、、、、、
ボロボロだったおばあさんの家が生まれ変わった。ひょっとしたらこれは、俺の残した建物達を作るチャンスなのでは!?
急いでアルバムを引っ張りだし、マンションをさっきと同じ要領で建てようとした。
何も起こらなかった。
「ん、、?あぁ?」
何やら条件があるらしい。お〜い謎の声!条件を教えてくれ。心の中で言ってみた。
「必要なのは建材と設計図、それから設計思想じゃ」
答えてくれるの!?てかバレてたのか今まで。
建材と設計図はわかる、、、設計思想?
そんなの当然あるが。
「建材さえ用意すればマンション建てられるのか?」
「誰のための建築なのじゃ?」
「誰かが住めると思って…………」
「誰がなんのために使う建築物なのかよく考えてみるのじゃ」
!!
当たり前のことを忘れていた。
学生時代、かっこいい建築をするためだけのマンションだったからダメだったんだな。
おばあさんが感謝する。
「こんなことが出来るなんて驚いたわねぇ!」
現世では見れなかったこの顔。これが見たかったんだ。
世界を創り直すなんて難しすぎるが、ひとまず頑張ってみるか!
読んでくださりありがとうございます。
私のステップアップのためにもご意見くださるとうれしいです。




