表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王を斬らなかった勇者は裏切り者と呼ばれましたが、俺はただ守りたかっただけです  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/50

第9話 反勇者指定

 結論は、早かった。


 地下での対峙から、半日も経っていない。


 王都の広場。

 告知板に、新たな布告が貼り出される。


【王国勅令】


資格なき者・里崎智哉を

反勇者として認定する


正しき勇者エルドの討伐行為を妨害し

世界の秩序を乱した罪により

これを指名手配とする


 人々は、静かに読み――そして、頷いた。


「やっぱりな」

「勇者様に刃向かうなんて」

「街を見殺しにした時点で、分かってた」


 誰も、驚いていない。


 地下では、その噂が遅れて届いた。


「……指名手配?」


 女が、紙切れを握りしめる。

 震える手。


「私たちを守った人が……?」


 俺は、壁にもたれて座り込んだ。


 来るとは思っていた。

 それでも――。


「“反勇者”か」


 ずいぶん、都合のいい言葉だ。


 兵士が、地下入口を封鎖し始めた。

 松明の光。

 足音。


「出てこい、里崎智哉!」


「勇者に仇なす者は、罪人だ!」


 ……早い。


 俺は、立ち上がる。


「ここには、関係ない人間がいる」


 女が、叫ぶ。


「逃げて!

 あなた一人で――」


 首を振る。


「それはできない」


 俺が逃げれば、

 ここは“反勇者の隠れ家”になる。


 そうなれば――。


 地下の人間ごと、浄化される。


 足音が、近づく。


 俺は、剣を抜いた。


 光らない刃。

 英雄の証もない。


 だが。


「聞け」


 入口に向かって、声を張る。


「俺は、勇者じゃない。

 だから、世界は救えない」


 一瞬、足音が止まる。


「でも――」


 剣を、地面に突き立てる。


「ここにいる人間は、救う」


 次の瞬間。


 天井が、崩れた。


 俺が斬ったのは、人じゃない。

 地下通路だ。


 崩落。

 土煙。

 逃げ道は、奥へ。


「行け!」


 人々が、闇の奥へ走る。


 俺は、最後に残る。


 兵士たちの怒号が、瓦礫越しに聞こえる。


「逃がすな!」

「反勇者を捕らえろ!」


 ……もう、戻れない。


 地下を抜け、夜の外気に出た時、

 王都の空に、黄金の光が走った。


 勇者エルドだ。


 きっと今頃、

 俺を討つ準備をしている。


 俺は、闇の中で呟く。


「世界が俺を敵にするなら――」


 剣を握り直す。


「俺は、世界の外で戦う」


 その夜。


 王国に、新たな敵が生まれた。


 魔王でもなく、魔族でもない。


 ――反勇者、里崎智哉。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ