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魔王を斬らなかった勇者は裏切り者と呼ばれましたが、俺はただ守りたかっただけです  作者: 南蛇井


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第41話 光は、血を拒まない

神殿の回廊は、静かだった。


 雨の報告書が、

 机の上に置かれる。


 血で滲んだ紙。


「……一名死亡」


 神官が、読み上げる。


「対象の反撃によるもの」


 勇者エルドは、

 立ったまま聞いている。


「確認されたか」


「はい。致命傷は喉部。

 躊躇は見られませんでした」


 わずかな間。


 勇者は、目を閉じる。


 祈りではない。


 計算だ。


「随伴者は」


「無事です」


 そこで初めて、

 勇者の指がわずかに動く。


「……そうか」


 短い。


 だが、重い。


「対象は」


 神官が続ける。


「守るために殺害したと推測されます」


 勇者は、否定しない。


 否定できない。


 自分も、そうだからだ。


 未来のため。


 世界のため。


 守るため。


 理由は違う。


 構造は、同じ。


「勇者様」


 大司祭が、低く言う。


「これで明確になりました」


「対象は、既に越えている」


「討伐は、正当化されます」


 勇者は、窓の外を見る。


 雨は、上がっている。


「……彼は」


 初めて、勇者が自分から言葉を出す。


「迷ったか」


 神官が、戸惑う。


「報告では――」


「迷いは、見られません」


 勇者は、小さく息を吐く。


「ならば」


 静かに言う。


「彼は、強くなる」


 神官たちが、ざわめく。


「危険度を、上方修正しろ」


「単独交戦は避けるな」


「私が行く」


 決断は、早い。


 勇者は、剣に触れる。


 冷たいはずの刃が、

 少しだけ重い。


 少女のときとは、違う。


 あのときは。


 未来を摘んだ。


 今回は。


 現在が、反撃した。


「勇者様」


 大司祭が問う。


「迷いは?」


 勇者は、振り返らない。


「ない」


 即答。


 だが。


 その声は、ほんの僅かに低い。


「彼は、理解した」


「守るために、殺すということを」


 一拍。


「ならば、私は」


 剣を持つ。


「世界のために、彼を殺す」


 宣言。


 論理は、崩れていない。


 正義も、揺らいでいない。


 ただ。


 勇者の中で、

 主人公はもう“思想”ではない。


 対等の敵だ。


 回廊を歩き出す。


 白い外套が揺れる。


 光は、血を拒まない。


 光は、

 必要ならば、いくらでも染まる。


 勇者エルドは、

 理解してしまった。


 彼もまた。


 自分と同じ重さを背負ったと。


 だからこそ。


 次は、

 躊躇しない。

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