表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王を斬らなかった勇者は裏切り者と呼ばれましたが、俺はただ守りたかっただけです  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/50

第37話 勇者は、こちらを見ていた

 街道は、広かった。


 逃げるための道。

 進軍するための道。


 だから、

 出会う。


 勇者エルドは、

 そこにいた。


 白い外套。

 光を返す鎧。


 噂通り――

 綺麗すぎる。


 神官たちが、

 後ろに控えている。


 護衛じゃない。


 証人だ。


 勇者は、

 俺を見る。


 初対面なのに、

 視線が合う。


 逃がさない目だ。


「……君が」


 勇者が言う。


「“止まらない者”か」


 肩書きが、

 先に来る。


 俺は、

 立ち止まる。


 同行者たちも、

 後ろで止まる。


 子供だけが、

 一歩前に出そうになり、

 若い女が止める。


 俺は、

 勇者を見る。


「人を、殺したな」


 挨拶代わり。


 勇者は、

 否定しない。


「未来を、救った」


 即答。


 迷いのない言葉。


「その子は、

 救われたか?」


 勇者は、

 一瞬だけ考える。


 本当に、

 一瞬だけ。


「世界が救われた」


 それが、

 答えだった。


 俺は、

 息を吐く。


「名前は?」


 勇者は、

 首を傾げる。


「……何の」


「殺した子の、

 名前だ」


 神官の一人が、

 一歩前に出る。


「それは――」


 勇者が、

 手で制する。


「記録には、

 残っていない」


 勇者は、

 悪びれない。


「必要が、

 ないからだ」


 風が、

 強く吹く。


 外套が、

 揺れる。


 俺は、

 言う。


「次も、

 同じことをするか」


 勇者は、

 即答する。


「する」


 一切の、

 ためらいなし。


 それが、

 彼の強さだった。


「止める者が

 いたら?」


 勇者は、

 初めて

 俺をちゃんと見る。


 人として。


「……排除する」


 声は、

 静かだ。


 宣言ですら、

 ない。


 ただの、

 予定。


 同行者たちが、

 息を呑む。


 子供が、

 俺を見る。


 俺は、

 剣に手をかけない。


 まだだ。


「じゃあ」


 俺は、

 一歩前に出る。


「俺が、

 止める」


 勇者の目が、

 細くなる。


「君は、

 何者だ」


 やっと、

 名前を聞かれた。


 俺は、

 答える。


「名乗るほどの

 者じゃない」


 それでも、

 続ける。


「ただ」


「犠牲を

 数で呼ばない側だ」


 沈黙。


 神官たちが、

 ざわつく。


 勇者は、

 小さく頷く。


「……理解した」


 理解は、

 同意じゃない。


「次に会う時」


 勇者が言う。


「君は、

 世界の敵になる」


 俺は、

 微笑う。


「もう、

 なってる」


 すれ違う。


 剣は、

 抜かれない。


 血も、

 流れない。


 だが。


 戦争は、

 始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ