第17話 不完全な勇者
白い部屋。
再び、七つの椅子。
だが今回は、
空気が、僅かに荒れていた。
「勇者エルドの行動ログ、更新」
水晶板が、点灯する。
「反勇者との接触、再度確認」
「戦闘未完了」
「追撃、途中中断」
数値が、赤く点滅する。
「……不可解だな」
「洗浄は、完了したはずだ」
誰かが、低く言う。
「人格補正値、安定」
「使命受容率、回復」
「――だが」
一拍。
「自律停止命令に、微細な遅延」
沈黙。
それは、致命的だった。
「“迷い”が、再発している」
「排除すべきか」
即断。
だが、別の声が割って入る。
「待て」
「彼は、まだ“使える”」
「反勇者との相互作用が、
想定以上の影響を及ぼしている」
水晶板に、
雨の森の映像が映る。
剣を下ろす勇者。
追撃しない選択。
「……これは」
「不完全だ」
誰かが、吐き捨てる。
「勇者は、完璧でなければならない」
「疑問を持つ刃は、
向きが変わる」
円卓に、緊張が走る。
「だが、排除すれば――」
「代替は、可能だ」
その一言で、全てが決まる。
「次世代勇者の“起動準備”を」
淡々とした声。
「同時に、
エルドには“最終試験”を与える」
別の者が、頷く。
「成功すれば、存続」
「失敗すれば――」
言葉は、不要だった。
「対象:反勇者」
水晶板に、主人公の姿。
「状況:第三者多数」
地下の民。
魔族の村。
記録外存在。
「選択肢は一つ」
「“正しさ”を、証明せよ」
会議は、数分で終わった。
椅子が引かれ、
足音が消える。
最後に残った者が、
水晶板を見下ろす。
「……哀れだな」
呟き。
「人になりかけた」
光が消える。
白い部屋は、再び無音。
神殿は、決めた。
不完全な勇者は、危険だ。
だから――
試す。
壊れるまで。




