第10話 討伐宣言
王都の中央広場は、眩しかった。
黄金の剣が、掲げられる。
その光を浴びて、勇者エルドは立っていた。
神官、大臣、騎士団。
そして――集まった民衆。
「聞け!」
エルドの声は、よく通った。
「世界の秩序を乱す者がいる」
ざわめき。
「資格なき力を振るい、
勇者の使命を妨害し、
人々を惑わす存在だ」
誰のことか、言うまでもない。
「その名は――里崎智哉」
憎しみが、広場を満たす。
「彼は、反勇者である」
断定。
疑問の余地は、与えない。
「魔王討伐の前に、
まずこの歪みを正さねばならない」
黄金の剣が、天を指す。
「――私は、彼を討つ」
歓声が、爆発した。
「勇者様!」
「お願いします!」
「世界を守ってください!」
エルドは、微笑む。
それは、善意の笑顔だった。
その光景を、俺は遠くから見ていた。
屋根の影。
夜の端。
「……そう来るか」
逃げ続けるつもりは、ない。
だが、今はまだ戦わない。
地下で助けた人たちを、逃がす時間が必要だ。
俺は、踵を返す。
その瞬間――。
空が、震えた。
黄金の剣が、鳴動する。
「見つけ次第、討伐せよ」
それは、宣戦布告だった。
勇者対勇者。
正しさ対、現実。
世界は、どちらか一方しか選ばない。
俺は、夜の中で呟く。
「……分かった」
剣を、握る。
「なら、証明してやる」
光らない刃で。
正義が、間違えることもあると。




