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魔王を斬らなかった勇者は裏切り者と呼ばれましたが、俺はただ守りたかっただけです  作者: 南蛇井


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第1話 資格のない勇者

 世界には、古くから語り継がれる言い伝えがあった。

――黄金の剣を持った勇者が現れ、世界を救う。


 だが竜魔王が降臨し、世界を恐怖に陥れてから五年。

 黄金の剣を持つ勇者は、ついに現れなかった。


 代わりに現れたのが、俺だった。


「……なるほど。レベル、上限突破してますね」


 王城の鑑定官が、乾いた声でそう言った。

 水晶に映し出された数値は、俺自身が見ても笑えるほどだった。


 里崎智哉、三十六歳。

 気づいたらこの世界に転生していて、なぜか最初からレベルは最大。

 魔法も剣も、試し斬りで山が一つ消し飛びかけた。


 正直に言う。

 俺なら、魔王を瞬殺できる。


「では――魔王討伐を」


「できません」


 即答だった。


 王は玉座で咳払いをし、大臣たちは一斉に目を逸らす。

 鑑定官が申し訳なさそうに言葉を継いだ。


「あなたは……勇者ではありませんので」


「は?」


「黄金の剣をお持ちではない。伝承に該当しないのです」


 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


「いや、倒せるかどうかの話だろ?

 剣なら、今から探して――」


「違います」


 大臣の一人が、真顔で遮った。


「“黄金の剣を持った勇者が倒す”ことに意味があるのです。

 それ以外の形で魔王が滅べば、世界がどうなるか分からない」


 ……本気で言っているらしい。


 俺は拳を握った。

 五年間、魔王に怯え続けてきた世界の中枢が、

 “倒せる人間”を前にして、こう言っている。


「つまり?」


 できるだけ冷静に尋ねる。


「俺は魔王を倒せる。

 でも倒しちゃいけないってことか」


 沈黙。

 それが答えだった。


 王は視線を逸らしたまま、低く告げる。


「世界は今日も、魔王の恐怖に晒されている。

 だが――資格なき者に、救わせるわけにはいかぬ」


 その瞬間、俺は理解した。


 この世界は、救われることよりも、

 “正しい物語”を選んだのだ。


 俺は立ち上がる。


「……分かりました」


 やる気はある。

 力もある。

 世界を平和にできる自信もある。


 ――資格だけが、なかった。


 世界は今日も、魔王の恐怖に怯えている。

 魔王を倒せる勇者が、すぐそこにいるというのに。

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