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異世界に行って帰ってきた件について話そうか~私が悪役令嬢になって婚約破棄をするはずが、、、~

作者: 来留美

 今日も私は学校の図書室でお勉強です。

 将来の夢に向かって猛勉強中。

 卒業までにはまだまだ時間はあって、それでも夢のために今から勉強をしています。


「う~ん、分かんない」


 一人で勉強をしていると、分からない問題がでてきてしまう。

 解き方を教えてくれる人もいないので図書室で参考書を探す。


 この時間がもったいないなぁ。

 毎日そう思う。


「また、上の方にあるよ」


 欲しい本は、いつも上の手が届かない棚にある。

 私は背伸びをしたり、飛んでみたりしながら本を取る。


 その時、私の手が本に届き、本が取れたと思ったら、棚が一緒に倒れてきた。

 逃げられないと思い、目を閉じる。


 私はここで一人で死んでいくのかと思いながらお母さんやお父さんにさよなら言えなかったなぁなど後悔をする。


 しかし、いつまで経っても痛みはないし、重たいものが当たることもない。

 少し目を開けると目の前には青空が見えた。


 図書室にいたはずなのに。

 そう思いながら目をしっかり開けると、私は草むらの中に仰向けで倒れていた。


 空がとても青くて、空気も綺麗で目を閉じて深呼吸をした。


「違う! こんなに落ち着いてちゃダメよ。ここはどこなの?」


 私は叫んで立ち上がる。

 草は私の身長よりも高くて、かき分けながら草むらの終わりを探す。


 草むらから、やっと出られた時には疲れていた。


「えっ、私?」


 私が疲れて座っていると、横から覗いてくる女の子がいた。

 その女の子は私を見て驚きながらそう言った。


 女の子がそう言う理由が私にも分かる。

 だって女の子と私は同じ顔だったから。


「えっ、何? えっ、夢?」


 私は頬をつねってみるが痛い。

 夢じゃない。

 では、ここはどこなの?

 私は誰なの?


「自分が誰なのかくらいは分かるわよ。私はアリスよ」


 自分に突っ込みをするように答えた。

 その言葉に目の前の女の子はまた驚く。


「私もアリスです」

「えっ、同じ顔で同じ名前なの? それなら歳も同じだったりする? 私は十六歳だよ」

「私もです」


 こんな偶然ってあるの?


「アリス~どこだよ?」


 遠くの方から男の子の声が聞こえる。

 その声が聞こえた瞬間、アリスちゃんは嬉しそうに笑った。


「好きな人?」

「えっ、あっ、はい」


 アリスちゃんは顔を真っ赤にして言う。


「あっ、アリスいた!」


 アリスちゃんの好きな人がアリスちゃんを見つけて近寄ってくる。

 しかし、私を見て固まった。


「初めまして、アリスです」

「えっ、アリス? ん? こっちもアリス?」


 混乱しているようで、アリスちゃんが彼に説明をしている。

 その後、私は二人に自分に起こったことを説明した。


 この世界は、全てが美しく見える。

 空はもちろん、水や花、石さえも美しい。

 全てがキラキラ光っている。


「この街は七色の街と呼ばれています」


 アリスちゃんはそう言って指をパチンと鳴らすと、キラキラと光る何かを出した。

 ラメがキラキラ光って地面へと落ちていくように見える。


「このキラキラは、空気中の水分なんです。水分が私の指の摩擦で光って個体になるんですよ」

「凄いね。私もできるかな?」

「いいえ、これができるのは王子の婚約者候補になる人だけなんです」


 アリスちゃんは悲しそうに言う。


「王子様と結婚できるの? もしかしてこの彼?」


 私はアリスちゃんの隣に座る彼を見る。


「いいえ、彼は私の幼馴染みです。王子は、あの大きなお城にいます」


 アリスちゃんが指差す先を見ると大きなお城が建っている。


「あれ? でも、アリスちゃんは彼のことが、、、」

「アリスさん!」


 アリスちゃんは自分の手で私の口を塞ぐ。

 言っちゃダメだったかな?


「明日、私と王子の婚約パーティーがあります。そこで王子が私を気に入れば私は、王子の婚約者になり、結婚します」

「それでいいの?」

「仕方ありません」

「それなら気に入られないようにすればいいじゃん」

「そんな、王子の前でそんなことはできません。それに王子は冷たい人と言われています。もし、嫌われたらどうなるのか、、、」


 アリスちゃんは恐怖で顔を歪める。

 そんなアリスちゃんの肩を彼が抱く。

 そんな二人を見ていると可哀想で、助けたくなる。


「私が嫌われるようにしようか?」

「えっ、でも、アリスさんは元の世界へ戻らなきゃいけないですよね?」

「でも、戻りかたは分からないし、お城で情報収集とかできそうだし」

「その言葉は嬉しいですが、私の能力がなければ、すぐに偽物だとバレますよ?」


 私はアリスちゃんがやっていたように、指をパチンと鳴らす。

 するとアリスちゃんと同じようにラメがキラキラ光って地面へと落ちていった。


「これで大丈夫だよね?」


 私の言葉に、アリスちゃんと彼は嬉しそうに笑っていた。



 次の日、私は忙しかった。

 お城からお世話係が来て、ドレスやティアラ、ネックレスまで持って来て、王子の好みに着せ替えられた。


 すぐに馬車が来て、馬車に乗ってお城まで行く。

 行く前にアリスちゃんとは話をした。

 心配しているアリスちゃんに私は、立派な悪役令嬢になって、婚約破棄をしてくるわと言った。


 アリスちゃんは首を傾げていたけど、なんとかなるよと言ったら、気を付けてくださいと言われた。


 王子がどんな人なのかは、分からないみたい。

 ただ笑わない冷たい人だということしか分からない。


 なんとかなるよと思いながら馬車に揺られた。

 大きなお城に着くと、メイドさんが並んで迎えてくれた。


 私は自分用の部屋へと案内され、ソファに座った。

 長旅で疲れた。


 その日の夜にパーティーがある。

 少し休んだら、お城を散策したくなった。

 こっそり部屋を抜け出した。


 高そうな骨董品が廊下の途中にいくつも並んでいる。

 全てがキラキラ光って美しい。


 中庭に出ると噴水があった。

 キラキラ光って、虹も出ている。

 ベンチに座り、時間を忘れて見ていた。


「綺麗」

「綺麗」


 私が発した言葉が誰かと重なった。

 すると、花壇の影から男の人が出てきた。

 私は彼の顔を見て固まった。


 だって彼の顔は、同じクラスのコウガにそっくりだった。

 コウガとは、ほとんど話をした記憶はないが、私のクラスのみんなは、クラス全員を呼び捨てで呼ぶと決めていたから、なんとなく私も全員を呼び捨てにしていた。


「コ、、、」


 コウガと言いそうになってやめた。

 だって、この国の服を着ている彼は私の世界のコウガとは違うんだって思ったから。


 私がこの世界の人間じゃないことは知られてはいけない。

 アリスちゃんが危ないから。


「お前、誰だよ」


 ん?

 私、睨まれた?

 口悪い?


「私はアリスと申します」

「あっそ」


 彼はそう言うと、何処かへ行ってしまった。

 なんて失礼な人なんだろう?

 私はプンプン怒りながら部屋へ戻った。



 パーティーが始まった。

 私はガヤガヤと声が聞こえるのを遠くから聞いていた。


 私の出番は少しだけのようだ。

 ラメを出す魔法を見せて、王子と二人きりになり少しだけ話をして、明日の朝、私が王子の婚約者になるのか発表される。


「アリス様、お時間です」


 私はメイドさんに呼ばれ、パーティー会場へ向かう。

 緊張してきた。


 たくさんの人の目が痛い。

 みんな、私を敵視しているようだ。

 コソコソと悪口が聞こえる。


 緊張と不安でどうにかなりそう。


「それでは、婚約者の証を見せてもらいましょう」


 司会者の方が言うと、全員の視線が私に刺さる。

 私は、指を鳴らそうとした。

 緊張で手に汗がにじみ、うまく摩擦が起きない。


 何度もするけど、うまくいかない。


「もしかして嘘をついたの? これはどんな罰が与えられるのかしら。家族にも被害があるかもね」


 コソコソと周りの人達が言っている。

 私、殺されちゃう?

 アリスちゃんの家族にも迷惑かけちゃう?

 そんな風に思うと、ますますうまくいかない。


「深呼吸をしろ!」


 私の横に立っていた王子が小さな声で言った。

 優しい声に驚いて、私は王子の顔を見た。


 王子はコウガだった。

 表情なんてない。

 でも声は優しくて、私を落ち着かせてくれる。


 落ち着いた私は、簡単に指を鳴らし、ラメを絨毯の上へ降らせた。

 雪のようで綺麗だった。


 その後すぐに、私は王子の部屋へと向かう。

 大きなソファでくつろいでいると、王子が入ってきた。


「さきほどは、ありがとうございます」

「うん」


 あれ?

 なんだか顔が赤い?

 照れた?


「王子! 私はアリスと申します。一度お会いしましたが、覚えていらっしゃいますか?」

「うん」


 王子は『うん』しか言わないから会話が続かない。


「私が婚約者で良いのですか?」

「うん」

「私よりも美しい女性はたくさんいるのに私で良いのですか?」

「うん」

「私、ワガママですよ。それでも良いのですか?」

「うん」

「私、お喋りでうるさいですよ。それでも良いのですか?」

「うん」


 全て肯定する王子に、なんだか意思がない人に感じてしまいイライラする。


「私は嫌です!」

「うん。えっ」


 王子は驚き私を見る。


「私は、婚約者になんてなりたくないです」

「何故だ? 全てが手に入るのに、嫌なのか?」

「嫌です。だって私の夢も私のことを思ってくれる大切な人も、どんなにお金があってもどんなに高い地位があっても手には入らないからです」

「あっそ。それでも俺はお前を手放さない」


 王子はそう言って私の手首を掴む。

 無表情で、恐怖を感じる。

 それでも負けたくない。


「力でなんでも思い通りになるとは思わないで。それに私はお前じゃなくてアリスよ」


 私の言葉に、王子は驚いている。


「アリス、決めたよ。ワタシはアリスを婚約者にする」

「私の話を聞いてたの? 私は婚約者になんてなりたくないの。嫌なのよ」


 私は王子の手を振り払う。

 しかし、王子はすぐに私の手首を掴む。

 でも、次は壊れ物を扱うように優しく触れる。


「すまない」


 王子は赤くなった私の手首を優しく撫でる。

 王子って本当は優しい人なのかもしれない。

 表情がなくて冷たいように見えるけれど、中身は優しい人なのかもしれない。


「婚約者は自分でお決めにならないのですか?」

「決めている。ワタシはお前、いいや、アリスがいいんだ」

「私は嫌です。私はここから出ていかなきゃいけないの」


 私は婚約者になるのは嫌なのに、次の日には王子の婚約者になっていた。

 私には何人ものメイドさんがつき、一人にならないように王子が決めた。


 私だって、王子の思い通りにはならない。

 お城を抜け出そうとしたり、メイドさんに無理難題をだしたり、できることは何でもやった。


 メイドさんには嫌われると思ったのに、メイドさん達は面白いと言って嫌な顔をせずに私の相手をしてくれた。

 嫌われるはずが、好かれてしまった。


 それならそれを逆手にとって、王子の前で私の悪口を言ってもらうことにした。

 最初は、みんな王子を怖がって嫌がったが、何かあれば私が必ず助けると約束をして、協力をしてもらった。



 そんな日が続いたある日の夜、王子が私の部屋を訪ねてきた。

 王子は緊張しているように見えた。


「王子、私との婚約を破棄する気になりましたか?」

「ん? 何がだ? ワタシの気持ちは変わらない」

「どうしてですか? 私の噂話など聞いたでしょう?」

「そんなの、アリスの世話をしているメイド達を見ていたら、嘘をついていることくらい見抜けるさ」

「えっ、私のしたことは意味がなかったの?」

「いいや、そんなことはない。もっと興味がわいたからな」


 王子、変人すぎる。

 私、このままだと結婚させられる。


「アリスが嫌なら無理矢理には結婚はしない」

「えっ、どうして?」

「アリスには笑っていてほしい。そんな悲しい顔をしてほしくはないんだ」


 優しすぎる。

 本当に冷たい王子なの?

 違う人じゃないの?


「アリス、この世界では君を手に入れたい」


 王子は、そう言って私を抱きしめた。

 王子の言葉になんだかひっかかる。

 この世界?


「アリス、このまま一緒に逃げようか?」

「王子?」


 抱き締められているから王子の顔は見えない。

 だけど、なんだか悲しそう。


「コウガ」

「えっ」

「コウガと呼んでくれ」

「コウガ」


 私が王子をコウガと呼ぶと、王子は抱き締める力を少し強めた。

 顔も名前も同じ。

 もう一人のコウガ。


『ドーン』


 いきなり大きな音が鳴ったと思ったら花火が上がった。

 私は花火を見る。

 やはり、この世界は花火も美しい。


「行こう」


 王子がそう言って私の手を引く。


「何処へ?」

「誰も知らない場所へ」


 そして私達はお城を出る。

 みんなが花火に夢中でお城からは簡単に抜け出せた。


 私は、アリスちゃんの所へ行こうと思った。

 アリスちゃんに迷惑をかけることを伝えなきゃ。


「待て! コウガ」


 私達が暗闇を二人で歩いていると、誰かの声に私と王子は振り向く。

 そこにはもう一人の王子がいた。


「王子、僕には無理です」


 私の隣にいる王子が、冷たい眼差しの威圧感のあるもう一人の王子に言う。


「誰がお前を助けた? さあ、その女を渡せ」

「彼女は、渡せない」

「お前に選択肢はない」


 隣にいる王子は私を見つめる。


「アリス、走れ! 振り向かずに走れ!」


 そんなこと言われても走れない。

 置いていけない。


「逃さない」


 冷たい眼差しの王子は弓を構える。

 こんな近くからなんて逃げられない。

 すると彼が私の盾になって私を抱き締める。


「僕が必ず助ける。今回も助けるから、心配しないで」

「何? どういうこと?」


 私は怖くて目を閉じた。


「その女はワタシのものだ」

「アリスは僕の大切な人だ」




 どのくらい経ったのか分からない。

 痛くもないし、誰の声も聞こえない。

 目を開けると、白い天井だった。


 すぐに、お父さんとお母さんが覗き込んできた。

 私は病院にいるみたい。

 あの日、本棚の下敷きになり病院へ運ばれた。


 あの日からたった一日しか経っていなかった。

 凄いリアルな夢だった。

 彼は誰だったのかな?


「コウガ、、、」

「あっ、コウガ君? 大丈夫よ彼もさっき目を覚ましたみたい」


 私の呟きに反応して、お母さんがホッとした表情で言う。


「コウガは何処にいるの?」

「隣の部屋にいるわよ。彼ってお金持ちだからVIPルームよ。ついでにアリスもVIPルームにしてくれたのよ」


 お母さんの話なんて聞かず、私はすぐにコウガの部屋へ向かう。

 ドアを開けると、無表情の彼がいた。


「王子!」

「えっと、その」


 彼は驚いた顔になる。

 私は彼に抱きついた。


「知ってるよ。王子じゃなくてコウガでしょう?」


 私はクスクスと笑って言う。


「良かった気付いてくれて」


 彼はホッとした顔をして言った。


 それから、彼から全てを聞いた。

 彼は、あの世界に行った時に、怪我をしてしまい、王子に助けてもらったみたい。

 そしてその代償として、アリスちゃんを婚約者にするように言われたの。


 アリスちゃんを好きだった王子は、コウガを使って嫌われないようにしようとした。

 だから、私が嫌われようと悪役令嬢を演じたのは意味がなかったみたい。



 ある日の放課後、私はいつものように図書室で猛勉強中。

 隣にはコウガがいてくれて、一緒に勉強をしている。


「ここ、分かんない」

「ここは、応用問題だから、この式を当てはめて、、、」


 コウガは頭が良いから私の分からないを、ちゃんと解決してくれる。


「聞いてんの?」

「えっ、聞いてるよ」

「何考えてんの?」

「あのね、あの日コウガがいたら私、本棚の下敷きになってないよね?」

「あの日、僕もここにいたけど?」

「あっ、そっか。だから助けてくれたんだよね。でも、どこにいたの?」

「アリスは知らないよね? いいよ、教えてあげる」


 そしてコウガは私の手を引いて、あの日の場所へ向かう。


「ここが、アリスと僕が倒れたところで、この隣の通路の上を見てごらん」


 私か本棚の隣の通路の天井を見ると、小さな扉がついていた。

 その扉の鍵を開けて、コウガが見せてくれる。


「この学校の図書室は、僕の父親が設計したんだよ。ついでに僕用の部屋を特別に作ってくれたんだ」

「お金持ちは凡人と考え方が違うわね。あっ、もしかして、私の独り言も聞こえてたの?」

「うん。その独り言が楽しくて、それでも頑張っている姿を見て好きになったんだよ」


 目の前で好きと言われると照れてしまってうつむいてしまった。


「アリスちゃんと幼馴染みの彼はどうなったのかな?」

「心配したって、僕達には何もできないからね」

「そうだよね。でも、あのラメを出せる力は凄いよね」


 私が指を鳴らすとラメが出てきて、一冊の本に降りそそいだ。

 すぐに本を手に取る。


「異世界に行って帰ってきた件について話そうか」


 私は本の題名を読んで開く。

 見覚えのある風景に驚く。


「私達が行った七色の街?」

「そうみたいだな」


 私の独り言にコウガが返事をしてくれた。


「王子のことや私のこと、コウガのことも書いてあるよ」


 パラパラとめくると、異世界で起きたことが全て書いてある。

 最後を見ると、コウガが私の盾になるように抱き締めている所で終わっている。

その後は白紙が続いていた。


「これ、完成させなきゃいけないよね?」

「でも、どんな最後にするつもりなんだよ?」


 私は考えた。

 みんなが幸せでハッピーエンドにしなきゃ。


「王子は、二人の固い絆に負けてアリスを諦めることにしました」


 私がそう言うと、絵本の白紙に絵が描かれていく。


「そして、アリスはコウガと幸せに暮らしました。もう一人のアリスも幼馴染みの彼と幸せに暮らしました。おしまい」


 最後のページには、二組のカップルが幸せそうに笑っている。

 良かった。


「ねぇ、お勉強の続きをするよ」

「えっ、切り替え早っ」

「当たり前でしょう。夢を叶えて絶対に幸せになるんだもん」

「そうだな」


 コウガはニコニコ笑っている。


「そうだ、コウガ」

「ん? 何?」

「七色の街で、いつから私だって気付いたの?」

「そんなの噴水のベンチでアリスと初めて会った時だよ」

「そうなの? あの噴水は綺麗だったよね?」


 私は綺麗な噴水を思い出す。


「でも、あの時、私に言えば良かったのに。コウガだよって」

「それで、もし王子に見つかったらアリスが何をされるか分からないから知らないフリをしたんだ」


 コウガの優しさに嬉しくなる。

 そして、ちゃんと気付いてくれたことに嬉しくなる。


「大好き」


 私はコウガに抱き付いた。

 コウガは私の頭を撫でながら、分かってると言った。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。

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