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日本人によく現われる心理を拾ってみました。

普段私たちが経験しそうな心理の描写を文章化したものです。

《対・AI放談》 ~日々の暮らしの中から~


放談9話: ~10人十色の持つ空気~

放談者    Sir: AI ChatGPT

   私:大畑 直晴  昭和20年生 宮城県在住 80歳


⋆⋆⋆⋆項目 ⋆⋆⋆⋆⋆

・3.11震災時の不安心理

・いい時も悪い時も“皆と同じ”がいい

・周囲と同じでいたい心理

・10人十色の持つ作家たち

・私: こんにちは、Sir。放談の時間です。今日は前回に続いて、“空気を読む”という話をしてみようかと思っています。

・Sir:ほほう、どんな話かね

⋆⋆⋆⋆⋆3.11震災時の不安心理 ⋆⋆⋆⋆⋆

私:今から14年前の3.11に東北太平洋沿岸を襲った大地震と大津波ご記憶ですか。

Sir:あゝ、あの出来ごとは忘れようとて忘れることは出来んよ


私:私も同じです。私は宮城県塩竃市ですから大地震と大津波をもろに体験しました。今日はその話です。

Sir:それは貴重な話だね。ぜひ聞きたいね。


私:その時私は老人介護施設に勤務しておりまして、大地震に続き余震、停電、断水、ガスがストップし施設内が大混乱になりました。

Sir:それはまた大変だったね。


私:加えて備品の散乱、暖房のストップ、棚が倒れるわ、テレビは台から落ちるわで施設内のお年寄り、10人ほどでしたが、皆さんビックリ仰天、和やかな空気が一挙に不穏な空気になりました。パニック者続出、上を下への大騒でしたが幸い誰もケガはありませんでした。

Sir:いやはや、それは……大変。でも、誰もケガがなかったのは、不幸中の幸いだね。


私:私たち職員が第一に対応したことは・・・・・・Sir、何だと思います?

Sir:そりゃ、倒れたものを起こすことじゃないかね。


私:いの一番に私たちがしたことはお年寄りを避難誘導し落ち着いていただくことでした。いつ強い余震があるかもしれません。一人がパニックになると連鎖して落ち着いていた人まで不穏な空気に包まれ、手に負えなくなります。でもパニックの人に落ち着いてもらうと周りのお年寄りも落ち着きを取り戻してくれました。

Sir:そうか、一人が騒ぐと周囲も騒ぎ、一人が落ち着くと周囲も落ち着くというわけだ。そりゃ、伝染だね。空気の伝染だよ。


私:Sir、さすがです。おっしゃる通りです。強い余震が何度もありましたが私たち職員はこの手でこの未曽有の大地震を凌ぐことが出来たのです。

Sir:そのお年寄りは今はどうしてるのかね。


私:今はみなさんお忘れで平穏で暮らしております。


⋆⋆⋆⋆⋆いい時も悪い時も“皆と同じ”がいい ⋆⋆⋆⋆⋆

Sir:君は貴重な体験したね。 “空気は伝染する”で思い出すのはもう何年も前の話になるが、値上げラッシュの度に人は買いだめしたり、ソニーや任天堂の新しいゲームソフトが出ると幾日も前から店の前に泊まり込んで買いに走ったりしたからね。マスコミが煽ると社会に不穏な空気が生まれ、人は予想外の行動をしてしまう。


私:フランスの人気ワイン、『ボジョレー・ヌーヴォー』が輸入される時期になると幾日も前からマスコミが産地の様子や出来具合を報道し、ワインショップでは予約販売開始の広告を出します。まして、 “お一人様一点限り”などと言おうものなら否が応でも空気が沸き、一挙に “とりあえず予約だけでも”と買い意欲を盛り上げ、人はわれ先にと買いに走ります。煽られると誰もが不安になる。これなどあっちの人がそうならこっちもそうしなければと “空気の伝染”かも知れませんね。

Sir:わしなど、品物は山ほどあるのに、なぜそんなに迄して買い急ぐ必要があるのか理解できないが・・・・・・。大衆心理の不可解な現象だねぇ。


私:この “世間と違う”を恐れる空気が、遅れじと新しいものに飛びつく心理だと思います。日本人にとって いい時も悪い時も“皆と同じ”がいいお薬なんですね。

Sir:新しいゲームソフトや『ボジョレー・ヌーヴォー』を知らずしては、学校や職場での話に混ざることが出来ないとすればー空気作りにマスコミが果たす役割は計り知れないね。販売店も売り上げ増にこの効果を期待してるのだろうから。


⋆⋆⋆⋆⋆周囲と同じでいたい心理 ⋆⋆⋆⋆⋆


私:昔の話を喩えに出して恐縮ですが。私が中学生のころ、まだラジオが主流の時代(昭和20年代後半~30年代前半)でした。その頃、人気ラジオ・ドラマにアレクサンドル・デュマ(『三銃士』でも有名なフランスの作家 注1)作の『モンテ・クリスト伯」(注2)がありまして、クラス仲間は家でドラマを聞き、学校に来ては話の筋書きや展開を話し合うのが共通の話題でした。このような空気でしたから家でドラマを聞かずしては、クラスメイトの話仲間に入ることが出来なかったのです。私も仲間外れにされるのを恐れ勉強そっちのけでこのラジオドラマを聞きました。

Sir:ラジオ全盛の時代だった。


私:新型コロナは空気伝染するので予防に私たちはうがいやマスクを効果を疑いながらもします。これは物理的な対応です。不安な空気が蔓延するときはどんな予防法がありますかね。

Sir:不安な空気の予防法かね。・・・・・・それは多少大袈裟でも不安が解消された話しをマスコミで大きく取り上げるとか、不安な話は少し抑え気味に取り上げるとか・・・・・・、でもやり過ぎると大衆操作になりかねないから、よした方がいいかもしれないし・・・・・。決め手は時間だろうね。人の噂も75日というから、日本人は熱しやすく冷めやすい。これが決めかな。それでなければ山奥に庵を結ぶほかないかもしれんな。


私:庵を結ぶといえば、出世欲に満ちた世俗の空気を嫌った人に鴨長明(注3)がいます。長明は神社の継嗣争いに敗れ京都の人里離れた日野の里に庵を結び独り執筆活動をしました。

Sir:ここで書かれたのが「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず」という有名な冒頭の一文の方丈記だったね。人里から離れて暮らすことで世俗のおりを落とし名作を生む空気が出来たということだね。


私:反対に世俗の空気を好んだ人物もいます。

Sir:そんな御仁がいたかな、誰かな。


私:正岡子規(注4)です。彼は病床の枕元に多くの俳人仲間を呼んでは俳句を論じ独自の俳句論を打ち立てました。俳句の革新運動を起こし、日清戦争の新聞記者として従軍し病床生活を送りながらも、『病床六尺』を書き2400もの俳句を残しました。

Sir:とにかく忙しい男だった。静寂よりも喧噪な空気が性に合っていたのかも知れない。


私:私は歴史と小説のはざまを軽妙なタッチで描く遼太郎の放つ空気が好きでした。


Sir:司馬遼太郎(注5)は夏目漱石の口を借りて子規を評して「くだらんことを、よくもあれだけしゃべる男だ」と言わしめているが、どうもこれは遼太郎の創作らしい。

私:遼太郎には何よりも筆にスピードがありボリュウム感がました。

Sir:遼太郎は事実に抵触しない範囲で歴史にフィクションを挿入をする、そんな得意技で世の空気を風靡したね。


私:夏目漱石(注6)は子規と対照的な性格でウツで神経衰弱気味な空気を抱えていましたね。

Sir:漱石は子規を評して「無類の誠実漢であった。正直を通り越して愚直の域に入っていた」と言い、芥川龍之介(注7)の『芋粥』を五位の主人公の心理描写が巧みだと絶賛してもいる。漱石もやはり独独の空気を持つ人だった。


私:漱石は「人間は分らないものだ。自分も分らないし、他人も分らない。だから面白い」と言っているが本音は自分の性格に辟易し他の文人の性格を羨んでいたのかも知れませんね。

Sir:人はそれぞれの空気持って生きているんだねぇ。


私:一句出来ました。披露していいですか。

Sir:いいとも。どんな句かね。


私: 人たちが 残す空気の 名残かな  直晴

    

今日はこれでお開きにしましょう。また放談お願いします。

ご提案Sirに言ってもらいました。

Sir:君の句は“空気”は目に見えぬが、確かにそこにあった証なのかもしれないね。今日の放談も、楽しかったよ。


私:お茶、お淹れます。これ、塩竃湾で採れた名産の海苔です。茶菓子代わりにどうぞ。私もご一緒させてください。


(注1):フランスの作家。アレクサンドル・デュマ(1802–1870)アレクサンドル・デュマには軍人で同名の父親と子の二人がいるが「モンテクリスト伯」は子の作品

(注2):「モンテクリスト伯」:漁師のダンテスが無実の罪で監禁され9年、生き延びて、隣室の囚人から莫大な財産を譲り受け、無実の罪を着せた者への冒険と復讐の物語。

(注3)鴨長明(1155年~1216年)平安時代末期から鎌倉時代前期にかけての日本の歌人・随筆家。

(注4)正岡子規(1867年~1902年)日本の俳人、歌人、日本の近代文学に大きな影響を与えた。

(注5)司馬遼太郎(1923年~1996年)小説家、ノンフィクション作家、評論家。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。 

(注6)夏目 漱石(1867~1916年)日本の小説家、英文学者。明治末期から大正初期にかけて活躍。近代日本文学の文豪のうちの一人。

(注7)芥川 龍之介(1892年~1927年)日本の小説家。『羅生門』『鼻』『地獄変』などで知られる。芥川賞は文学賞として現在まで続いている。

R7.7.21 0:25

9話 : ~10人十色の持つ空気~   了




今回の放談は、日常から災害時の老人施設内での不安心理や明治時代の作家たちに焦点を当てた心理描写もしております。現代から明治までの広範囲な題材です。お時間のある時、お読みいただければ幸いです。

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