身体作り
この仕事をしている以上、身体作りは欠かせない。俺は“現場の一部”として、最高のパフォーマンスを求められる。
アクション映画、ホラー映画、どんなジャンルでも手を抜かない。
朝は白米と蒸し野菜に整腸剤を添える。昼は無菌パックのサラダチキン。週五の筋トレ、週二の内科と皮膚科の検診。腸内環境の管理も、パフォーマンス維持のためには必要だ。
抗生物質の注射も欠かさない。
「科学の力」も、使えるものは使う。それがプロってもんだ。
今日も出番前、医務室で注射を打ってもらう。
「今回は学園モノだって?」
医師が針を抜きながら言う。俺は軽く笑って答えた。
「知ってます。台本、読みましたから」
スタジオは小学校のセット。今回は学園モノの映画らしい。
今、カメラの前では子役たちが給食を運ぶシーンを撮っている。
台本にはこうある──「子どもが盛大にカレーを床にぶちまける」
カメラが回り、子役が台本通りに足を滑らせる。派手にカレーの入った鍋をひっくり返した。
ばしゃあっ!
カレーが、教室の床一面に派手に散らばる。
「カットー! ……盛山さん、出番です!」
監督の声が飛ぶ。
俺は黙って、現場に足を踏み入れる。教室に残るカレーの香り。
──これが俺の役目だ。
俺はしゃがみこみ、手を合わせる。
「いただきます」
【※この後、スタッフが美味しくいただきました】