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あれから分かったことは黒木は二年B組と言うことと、まきにはしゃべり方が雑なことくらいだった。
結居蘭はいくら真希の友達と言えど、仲良くしようと言う気が起きないでいた。
次の日、結居蘭は何故黒木と真希は友達なのか理由を聞いてみる事にした。
「おはようゆずき」
「おはようフレンド!」
「あのさ」
「どうした?」
「ゆずきと黒木様って、どう言う友達? まさか付き合ってる? 彼氏なの?」
そんな結居蘭の言葉に、真希は大声で笑った。
「わははは‼︎」
「何が面白いの」
「あんなやつ、彼氏なわけねーじゃん! ははは、おっかしー」
「だ、だって」
真希が一通り笑い終えた後、ゆっくりと口を開いた。
「それに、あいつ女だぜ?」
「――え?」
「だから、女。黒木恵愛って言うんだ」
「えっ、あやめ? はい?」
「くろきはおんな!」
結居蘭はポカンと開いた口が戻らなくなるほどに驚いた。
「だ、男装女子って事?」
「まあそうだろうな」
「ほんとにいるんだ」
「ちょうどいいから、帰りあたしとくろきがフレンドになった話聞かしてやるよ」
談笑の時間は終わりだと告げる朝の鐘が鳴り、程なくしてホームルームが始まった。
***
帰り道、河川敷を結居蘭と真希は歩いていた
「ここではじめて黒木と会ったんだ」
「こんな所で何してたの」
「指輪探し」
真希は河川敷の草の部分に座り、空を眺めながら話し始めた。
真希と黒木が出会ったのは一年の夏頃だと言う。
朝、河川敷で誰かのイラだったような声が響いた。それは黒木であった。
黒木の前には男子生徒がおり、何か揉めているようだった。
黒木の周りには女子生徒が沢山いた。
そんな中で男子生徒が川の方へ何かを投げ捨てた。
ぽちゃんと言ったので川に落ちたのだろう。
そんな様子に男子生徒は笑いながら
――指輪が大事ならそこからとればいいさ。泥だらけのプリンスになっちゃうだろうね! ぎゃははかっこ悪い。と言った。
そんな男子生徒に対して
――お前、何を言っている? また同じ指輪なんていくらでも買えるんだよ。というか、人のもの盗んで捨てるなんて、君、性格最低とかそりゃあモテないだろうねぇ。可哀想。
そう言って黒木は女子生徒達と学校へ戻って行った。
放課後、真希は屋上でギターを弾いて帰りが遅くなってしまっていた。
駆け足で校門から出て帰路に着く。
河川敷を見つめながら歩いていると、誰かが川に入っているのが見えた。
何かを探しているふうに見えた真希は川の方まで下りてその人に
――おい、何してんだよ。落し物か? と話しかけた。
制服からして同じ学校の生徒であろうと真希は思った。
――やぁ、かわいい君よ、こんな所でどうしたんだい? もう夜が近いよ、早くおかえり。
――なにしてんだってあたしがきいてんだようるせぇなあ。
その場に静寂が流れると、黒木は場の悪そうな顔をしてから口を開いた。
――指輪を、落としてしまって。その一言を聞いた瞬間、真希は目がキラキラした。
(そんなに大事な指輪なんだな! なんだー、なんの指輪だー? なんの契約者? 術者? くぅー、妄想が捗るー)
――探そう!
――えっ?
――ほら探すぞ!
二人は川の中を探し続けた。
真希が加わってくれたおかげで、やっとの事で指輪は見つかった。
――おい! これか?
――あ! そうさ、それだよ!
――見つかってよかったな! ところでどんなすげー指輪なんだ?
――すごいというか、普通に指輪だよ。――でも、僕にとって、大切な指輪なんだよ。
――なんだー普通の指輪かよ。つまんねー。川から上がった所で、黒木は携帯を取り出し、どこかへ電話した。
電話を終えると真希の方へ顔を向けた。
――今迎えを呼んだから、君も乗って行くといい。
――マジか、助かる。しばらくして迎えがやってきた。
車の中で二人は足をタオルで拭きながら特に何も話すことはなく、静寂が続いた。
真希の家の前に着くと、黒木は真希の服を掴んだ。
――あ? どうした。
――その……ありがとう。君、名前は?
――おうよ。こっちこそ送ってくれてありがとよ。あたしはスカーレット・ウィザードの真希!
――は?
――で、お前は?
――あ、ああ。僕は黒木。
――くろき、よろしくなフレンド。
――友達? 僕と君が?
――おうよ、指輪を探した仲だろ。
――変な女だな。
――じゃあ、またなくろき。
――うん、じゃあまたね。まき。
この日、二人は友達になった。
一通り話し終えた真希は結居蘭の顔を見た。
「そんな感じであたし達はフレンドになったんだ」
「なんて言っていいのかわからないけど、すごいね。私だったら絶対あんな人に話しかけないよ」
黒木の見た目は派手だ、結居蘭からしたら怖い印象しかない。
「そうか? まあ確かに変な髪型してるよな」
「派手だし……なんか、話しかけにくいよ絶対」
「でも、あたしのフレンドなんだ。女子には優しいから大丈夫!」
「でもゆずきには態度優しくなくない?」
「なんかあたしは変な女だからそう言う態度ができねーらしいぜ」
「いや、まあ、うん」
真希は大丈夫と言っても、結居蘭の中の不安は消えてはいなかった。
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