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4.ボス討伐タイム

 

 悠然と階段を降りるドラゴンマスク。


 ボスモンスターに近づく度、底知れぬオーラが彼を襲う。


 それに画面越しではあるものの視聴者にも感じ取れた。


 そして、最下層。ボスモンスターが守りしフロア。


 そこには巨大なモンスターが彼を待っていた。

 雄叫びこそ上げないものの、それに次ぐ迫力を醸し出していた。


 《で……デケェ……》

 《これが、B+級のボスモンスターかよ》

 《またトゲだけど……比じゃないぞ》


「彼等の親分ですか。このダンジョンを仕切るにふさわしい」


 [スピアタートル レベル45]

 サイズ 5m

 攻撃 80

 素早さ 5

 防御 200

 魔力 3

 知力 50


 ニードルメットを凌ぐ大きさと、それに比例する巨大トゲを持つトゲ亀モンスターのボス。


 緑のニードルメットに対し、スピアタートルは黒曜色と異質さを際立たせている。 


「さて、攻略させていただきます!」


 ドラゴンマスクはボスモンスターに向かって駆け出した。


 それに合わせニードルメットは生身の部分を甲羅へ隠した。


 彼の手下達のように飛びかかるかと思われた。


 しかし、ボスは一味違った。


 トゲを甲羅から発射させた。


 トゲがドラゴンマスクをめがけて高速で飛んでゆく。


 《トゲのミサイルだ!》


「トゲが飛んでくるのはもうお腹いっぱいだ!」


 3F同様、彼はトゲを避けようとする。

 だが、その動きに合わせるようにトゲの進行方向がかわりはじめた。


 ドラゴンマスクを追尾している。


 《ホーミングミサイルか》

 《これも魔法?》


「流石モンスター。予想を裏切ってきますね」


 迫りくるトゲを蹴りで迎撃する。


 ニードルメットを倒す比ではない衝撃がドラゴンマスクを襲う。


 打ち落としたトゲは意思を失ったが如く地面へと転がった。


 トゲは着弾するか迎撃されるかで止まる。


 分かったところで、ドラゴンマスクに残された手は徒手空拳による迎撃しか無い。


 だが迎撃では長続きはしない。


 10本超えのトゲを何とか打ち落とした所でトゲミサイルの猛攻が止まる。


 トゲを全て使い果たしたようだ。


 トゲミサイルが襲いくるには間が必要なのは明らか。


 その隙にドラゴンマスクはタートルへ飛び蹴り。


「いっつ……」


 《ドラゴンマスクの蹴りに……ビクともしてない?》

 《硬すぎんだろ》


 タートルの甲羅には一切の傷はなく、ノーダメージ。むしろあまりの強固さにドラゴンマスクの足が痺れた。


 タートルは甲羅のまま、高速回転した。

 ドラゴンマスクは回転で弾き飛ばされる。


 空中でバランスを取り戻し、何とか着地できた。

 タートルはトゲを再装填する。


 《アカン……こりゃ勝てん》


 一般モンスターと比べ物にならないボスモンスターの強さに視聴者達は恐怖を覚えた。


 トラップの数々を華麗に攻略したドラゴンマスクのパワーが通じない事に、B+級の格の違いを痛感させる。


 しかし、当の本人には恐怖の文字は浮かばなかった。


「よし……もう分かった」


 むしろ、自信の二文字を確信に変えた。


「皆様、ここからは瞬き厳禁。ですがモニターからは離れて見てください」


 《えっ?》

 《まさか……》


「ここからがメインイベントです」


 討伐を宣言。コメントは期待と心配の声が溢れる。

 ドラゴンマスクはスピアタートルに直進した。


 《まさかの突撃!?》


 真っ直ぐに襲い掛かる敵は的と同じ。


 スピアタートルは次々とトゲを飛ばす。


 ドラゴンマスクは避ける素振りを見せず拳で迎撃する。


 巨大なトゲを次々と砕く剛腕を見せるが、彼の拳にも血が滲んだ。限界が近づいている。


 そんな彼の状態を知ってかトゲを一斉に発射した。


 ドラゴンマスクも地面を蹴り上げ、飛び掛かる。


 彼を囲むようにトゲは迫る。


 《ヤバい!ブラバする!》

 《皆目をつむれ!》

 《逃げて!》


 そして、トゲは獲物を貫く激突音を響かせた。


 それを聞いたタートルは哀れな獲物を視認しようと頭を出した。 


 しかし、そこには期待した物は無かった。


 無数のトゲを受け止め地面に落ちたのは、空の宝箱だ。


 タートルは驚いた。しかし、直ぐに察し上を向いた。


 そこに、ドラゴンマスクは生きていた。


 《うおおお!伏線回収ゅゅゅ!》

 《宝箱を囮にしやがった!》


 彼はトゲの弾数と、発射から装填までの時間を把握したのだ。


 そこで生み出した攻略チャート。

 ある程度トゲを間引きながら接近。

 残り弾数が4〜5本位になった時、スピアタートルに向かって飛ぶ。

 そして、F1で手に入れた宝箱を投げ、残りのトゲの囮にする。

 敵の不意を作り、絶好のポジショニングをする為のチャートだ。


 勿論、攻略チャートはまだ続く。


 《ああ!せっかく出てきたのに!》


 タートルは危険のために、頭を直ぐに締まった。


 しかし、これも予測通り。彼にとって生身だろうと甲羅であろうと関係ない。


 大事なのは自分のポジション。

 彼は天井にまで高く飛んでいた。そして、天井を渾身の力で踏み抜きタートルへ向かい垂直落下した。

 脚力からなる速さと10m以上あるフロアの高さは地上の数倍のパワーを生む。

 さらに直滑降パワーを最大限に生かす物を彼は持っていた。


 《手になんか持ってるぞ!》


 彼の手には、宝箱に入っていたナイフが。


 [亀甲ナイフ 攻撃力+50 亀の甲羅で作られた鉱石並みの強固さを誇る宝刀]


 強靭さに定評があるナイフを渾身のパワーで甲羅へ突き立てた。


 衝突点からは火花が上がり、金切り音が響き渡る。


 しかし、ここまでやってもナイフは切っ先が突き刺さる程度。


 タートルにダメージは通らず。


「これならば」


 ドラゴンマスクはこれで十分だった。


 これで討伐の最後のピースがはめられる。


 《あれ……火花途切れないぞ》

 《火花っていうか……ピカピカしてるぞ》

 《まさか……魔法!?》


 突き刺さるナイフからバチバチと激しい光がほとばしった。


 タートルも異変に気づき、回転しようとするが既に力が入らない。体は痺れている。


 彼の体からナイフに伝わった魔法がタートルの体内で暴れ回った。


 その魔法は、雷。


 《炎だけじゃないのか!》

 《雷魔法って上級じゃねぇか!》


「ドラゴン……スパーク!」


 無数の稲妻がタートルの体を貫く。


 あまりの眩さにフロアは真っ白な光で包まれた。


 光が止んだころには、タートルは口から煙を吐き巨大な体を地に伏せた。


 ボスを倒した事によりダンジョンのコアである球体、オーブが出現。

 甲羅から降りたドラゴンマスクは、ゆっくりとオーブに近づきそれを破壊した。


「トゲダンジョン……これにて攻略。お疲れ様でした」


 魔法による派手な討伐に圧巻された視聴者達。徐々に目の前の光景に実感を持ち、一斉にコメントを打ち始めた。

 コメント欄は今日最高潮の盛り上がりをみせた。


 《うおおおおお!倒した!》

 《トミー ¥60000 流石です》

 《ジャン ¥10000 見てるこっちもビリビリしたぜ!》

 《アキ ¥20000 軍資金》

 《スライムぽい人 ¥30000 次はA級ですね!》

 《おめでとう!》《888888》《カッコいい!》《ドラゴンマスク最強!》《無敵!》《ダンジョン覇者!》


「ご視聴ありがとうございました。良かったらチャンネル登録、高評価もどうぞ」


 コアを失ったダンジョンが光の粒子となって崩れ始める。

 配信終了直前であるものの、称賛のコメントの勢いは更に加速する。

 ドラゴンマスクはコメントにお辞儀で返した。


「なごり惜しいですが次の攻略タイムまで……アデュー」


 段々と激しくほどけていくダンジョンの光にドラゴンマスクは飲み込まれていく。


 カメラが光一色となり彼が消えた。


 光が収まり、元の森の景色が映され配信は止まった。

 終了後もコメントは小一時間以上続いた。

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