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3.ドラゴンマスク

 

「スマホよし、遠隔操作カメラよし」


 スマホと手に持ったカメラを連動させる。


「よく映してくれよ〜」


 するとカメラは浮遊しアスラを自動で映し始めた。


 大戦から千年が経ち、魔物の存在が忘れかけられた現代。


 その平穏な時代に、ダンジョンは再び地上へ出現した。


 山に森に海に村に街に、無数多種。


 これにより周囲の環境の崩壊と魔物達による被害が多発した。


 国は警察組織や軍、近衛などの武力を使い抑えているがそれでも全てのダンジョンを管理しきれていない。


 その警備の薄いダンジョンに侵入し攻略する姿をライブ配信する「ダンジョン配信」がトレンド化している。


 魔法や武術を齧った者が多い中、卓越した身体能力と派手な魔法を操るマスクマンがトップ配信者となっている。


 その名はドラゴンマスク。


「前に行ったダンジョンよりもヤバそうな雰囲気がビンビン丸だ……気合い入れて行くぞ」


 アスラは握ったマスクを被った。


 そしてダンジョンに飛び入る。


 指をパチンと鳴らすのがスマホの起動サイン。

 全世界にライブ映像が配信開始された。


 アスラが、ドラゴンマスクの姿が映し出された。


「皆様、ご機嫌よう……ドラゴンマスクです」


 《全裸待機終了!》

 《開始!》

 《楽しみ!》

 《ナメロウ ¥3000 攻略祈願》


「約束通り!ダンジョンタイム!スタート!」


 《ダンジョンタイム!ダンジョンタイム!》

 《待ってました!》

 《トミー ¥60000  今日も期待しています》

 《ナイスパ!》


 彼の口上にリスナーからは文字の大歓声。

 ドラゴンマスクの人気が伺える。


「今日はとある森の奥にあるダンジョンに挑戦したいと思います!」


 《おお!スゲェデカイ!》

 《前のより凄そう》


「その通り、前回のダンジョンよりも魔力の濃さが違います。B+級といったところでしょう」


 《B+!?》

 《ほぼA級じゃん!》


「手強いとは思いますが、早速行ってみましょう!」


 階段を下った先には、古い石畳の敷かれたフロアが広がっていた。松明で照らされたフロアには早速、行く手を阻む者が。


「おっと、モンスターがいましたね。トゲのついた亀さん」


[ニードルメット レベル10]

 サイズ 50cm

 攻撃 20

 素早さ 5

 防御 50

 魔力 2

 知力 30


 《モンスター初めて見たかも》

 《なんだか可愛い》


「可愛らしいですが油断は禁物ですよ」


 ドラゴンマスクの言う通り。

 ニードルメットは彼を見つけるやいなや飛びかかる。

 手足と頭を甲羅に隠し、回転しながら飛ぶ姿はトゲのボール。当たれば体はズタズタに引き裂かれる。


「よっと」


 トゲボールをヒラリとかわす。

 しかし、ニードルメットはフロアに10体近くはいた。

 彼をめがけ次々とボールとなり飛びかかる。


「さて、腕慣らしと行きましょうか」


 ドラゴンマスクは構えた。

 そして、次々と襲いくるニードルメットを叩き落としていく。


 《全部打ち落としてる!》


 硬い甲羅とトゲをまとめて粉砕する彼の徒手空拳に視聴者は驚愕した。

 あっと言う間にフロア内のモンスターは全滅。

 するとどこからともなく宝箱が現れた。


「アイテムをドロップしましたね。幸先が良い」


 アイテムを袋へしまい、次のフロアへ。

 次のフロアは何もない一本道。200mくらい先に階段が見えた。


 《モンスターいないね》


「そうですね。しかも一本道ですしサッサと行きましょう」


 《でもこういうところって……》


 感の鋭い視聴者の予想は当たる。

 突然、ドラゴンマスクの立っていた場所の床が開いた。

 落とし穴トラップのフロアなのだ。

 驚きコメントの手が止まる視聴者。


「おっと、危ない危ない」


 それをよそにドラゴンマスクは素早いステップで落ちる前に避けた。カメラが穴の下を映す。そこにはニードルメットの比ではない長いトゲが敷き詰められていた。


 《ひえっ……》

 《落ちたら文字通り串刺しだな》


 危機は去っていない。避けた先の地面に足をつけた瞬間、またしても床が開いた。


 《ヒィィィ!?》

 《ここもかよ!》


 一寸先は闇。

 それどころか全ての床が落とし穴かもしれない。

 これにはドラゴンマスクも万事休すかと思われた。

 しかし!


「そう来ましたか!」


 彼は落ちない。

 またもステップの要領でかわしていく。

 床に足がついた瞬間、開く動作の前には彼は既に動いている。

 次の床でも、次の床でも、彼は落とし穴が開く前にステップで交わし続けている。

 視聴者達には彼が空中を歩いているように見えた。


「同じ姿を見ていても退屈でしょう。ミュージックスタート!」


 彼の声を聞き、スマホから軽快なクラブミュージックが流れ始めた。


 《BGM助かる!》

 《なんだかダンスしてるみたい》


 視聴者の言う通り、音楽に合わせて落とし穴を避けている彼は軽快なタップダンスをしているように見える。

 そのリズムのまま、次の階段へ辿り着き下っていく。

 次のフロア。そこも殺風景な一本道。 

 四方八方に穴が空いている以外は。

 彼がフロアに立った瞬間、四方八方よりトゲが飛んできた。


 《今度はトゲのミサイルかあ!?》

 《横!横からも来てる!》


 四方八方からのトゲの雨霰。当たれば文字通りの蜂の巣に。


「音楽は終わってない。慌てなさんな」


 彼は雨霰の僅かな隙間、その隙間へ飛び込んでゆく。

 目が背中にもあるかのように、瞬時に回避ルートを見極めた

 しかし、穴からのトゲは一度ではない。トゲはタイミングを変えて飛んでくる。

 それをしゃがむ、飛ぶ、バク宙、バク転、様々な動きで回避する。

 そうして避けて避けて避け続ける姿は、まさにブレイクダンス。

 一度も被弾すること無く次の階段に。


 《スゲェ……米忘れるわ》

 《パルクールかよ》

 《むしろ新種目だろこれ》


 4F。おそらく最下層の一歩手前。

 ボスフロアの前座といったところ。

 そこは壁に発射穴も空いて無ければ、落とし穴もない。

 床すらない。


 《ええええ!?》

 《攻略させる気ねぇだろ…》


 視聴者の大半が無理と言い切る光景。

 そこは床が見えないほど、巨大なトゲが敷き詰められていた。床だけではない壁や天井にも同じくトゲが。

 トゲのダンジョンの集大成と言っても過言ではない。

 階段は500m先。飛び越えるのは不可能。

 これは詰んだとだれもが思う。

 しかし、彼は飛び上がった。


 《ええええ!?》

 《死んじゃうよ!》 


 このままだと剣山に串刺しにされるのがオチ。

 しかし、彼は無謀などではない。

 スマホから流れるBGMはサビを迎える。

 彼は一世一代の演出を見せる。


「ここが見どころだ!」


 彼の体から炎が溢れ出した


 《魔法キター!》

 《前の炎より火力強くない!?》


 コングを倒した以上の炎が彼から吹き出した。

 魔法による火炎放射で四方八方へ炎を撒き散らす。

 まさに曲のラストを飾る、ファイヤーダンス。

 高温にそびえ立つトゲも一瞬に溶解していく。

 猛る炎と白い煙でカメラは一時視界を閉ざした。

 煙が晴れた時、全てのトゲが無くなったフロアの真ん中。

 そこに、指を天に差すポーズを取る彼がいた。


「ダンスタイムは終了です」


 《か……カッケェ……!》

 《2Fから5分も経ってないよ》

 《ステゴロも魔法も一流てマジ何者?》


 彼の攻略を魅せつけられ、視聴者達もコメントの拍手喝采。


 高額な投げ銭も飛び交った。


 しかし、まだ彼のショーは終わらない。


「そしてここからは……ボス討伐タイム」


 天に差した指が次に指したのは最後の階段。


 いよいよボスモンスターとの戦いだ。


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