プロローグ「初・B級ダンジョン攻略タイム」
「さあ、ここからが見どころです」
《ボス戦キター!》
《こんなに早く最下層とかチート過ぎん?》
《でもこれは……無理くない?》
《アキ ¥1000 香典置いてくわ》
ダンジョン最深部。
数あるトラップやモンスターを突破し、至ることができるダンジョンの要。
そこには最後の試練、ボスモンスターがいる。
ボスモンスターは侵入者に向け、けたたましい咆哮とドラミングで威嚇した。
[キラーコング レベル40]
サイズ 10m
攻撃 120
素早さ 80
防御 55
魔力 5
知力 80
ダンジョン内のサル系モンスターを纏めていた巨大猿。
それに立ち向かうのは謎のマスクマン。
彼の姿は全世界に配信されていた。
「怒りですね〜怖い怖い。仲良くしましょう」
《オイオイオイ》
《死ぬぞアイツ!》
《やめとけwww》
「ほら握手」
瞬間、キラーコングの拳が彼へ振り下ろされた。
ボス猿らしくなまじ知性がある為、煽られていることを理解していた。
怒りのパンチは地面を抉る勢いだ。
《グロ注意!》
《これ……しん……》
《無理!見れない!》
キラーコングと視聴者の大半は、マスクマンが潰されたと思っていた
《待て!カメラが動くぞ!》
その時、カメラは動いた。
キラーコングの顔の側にマスクマンは飛んでいた。
驚異的なジャンプで避けたのだ。
《すげぇジャンプ力!》
《10m飛んでるってこと!?》
「握手よりもフィストバンプ派なんだね!」
お返しとばかりに、マスクマンはキラーコングを殴る。
巨大モンスターは吹き飛ばされ、壁へ叩きつけられた。
その光景は視聴者も喰らったキラーコングも驚愕していた。
《ええええ!!??》
《まじで?10m級を?》
《CGだろ……ありえん》
《バフ魔法かもしれんぞ》
170cm程の人間が10mの巨大猿を殴り飛ばす、魔法でも使ったのか。
そう考える程、衝撃映像だった。
しかし、衝撃は続く。
キラーコングは砕けた壁の破片を握り、マスクマンへ投げつけた。
無数の破片は雨のように彼を襲う。
《武器を使ったぞ!》
《パワーだけじゃない!頭も良すぎだろ!》
自分の背丈ほどの破片が無数に迫るが彼は焦らない。
「当ててみなよ!」
ヒラリヒラリと紙一重で避け続ける。
そして、破片の一つを片手でキャッチ。
「お返しだ!」
それをキラーコングへ投げ返した。
破片は腹部へ命中し、大きな巨体を悶絶させた。
「そろそろフィナーレといくか」
《死刑宣告キター!》
《えっもう終わり!?》
マスクマンは両手を前にかざすと、そこから炎が発生した。
《火出た!魔法だ!》
《魔法まで使えるなんて無敵かよ!》
《免許持ってんのか?》
炎は段々と大きくなり、キラーコングを超える程の火球が作り出された。
《こんな規模の魔法見たこと無い》
《太陽みたいだ……》
この隙にキラーコングは彼に飛び掛かるがもう遅い。
「ドラゴン……ファイヤー!」
マスクマンは火球を蹴り飛ばす。
巨大な炎はキラーコングに着弾し大きな爆煙を起こした。
炎海の中、視聴者は悠然と立つマスクマンの姿を見た。
「これにて攻略。お疲れ様でした」
《スゲェー!倒した!》
《ミリミリ ¥5000 単独B級制覇おめでとうございます!》
《本当に何者だ!?》
《アキ ¥10000 ご祝儀》
《初見です!最強ですね!》
「ご視聴ありがとうございました。良かったらチャンネル登録、高評価もどうぞ」
《88888888》
《神現る》
《免許ないでしょ。通報しました》
《↑アンチ乙》
《ジャン ¥10000 ブラボー!ブラボー!》
《geki ¥20000 お疲れ様でした!いいもん見れました!》
《トミー ¥50000 今回も格好良かったです!》
「それでは次の攻略タイムまで、アデュー」
ここで配信は終了した。
この[初・B級ダンジョン攻略タイム]の同時視聴者数は10万にまで上った。
これが新進気鋭のダンジョン攻略配信者、ドラゴンマスクの配信である。