表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

3. 嫌われ令嬢

エドワードがいきなり抱き着いてきたことには流石に驚いたが、拗ねる姿が実家に残してきた可愛い弟に重なりつい笑ってしまった。

素直じゃないところなんてそっくりだが、そんなことを言ったら怒られてしまいそうだ。

同じ15歳とは思えないほど、筋肉質な身体。

それでも転生前の私から見れば十分子供だとそんなことを考えていると、その扱いを感じ取ったのか。

不服そうな表情が見える。


「俺のことガキ扱いしてない?」


「ごめん。弟に似てたからついさ。」


「弟、居るんだ。」


「とても可愛い弟だよ。いつも僕の後ろをついて回るんだ。」


「俺はお前の弟になるつもりはないけど?」


「ふふ。僕もそのつもりはないよ。」


ニッコリと笑みを浮かべてから少し離れると何故か一緒になってついてきた。


「ん?何でついてきたの?」


「お前、気に入ったから。」


「いや、気に入られても困るんだけど。」


「良いじゃん。ルームメイトは仲良いほうが楽しいよ。どうせ同じクラスだろうし。」


「…そうなるよね。」


「楽しみだなぁ。」


その言葉に少し不安を覚えながらも、同じクラスであっても他に生徒もいるのだから自ら関わらなければそう問題にはならないかと思い直した。

あれから数日。

彼の言った通り同じクラスではあったが、常に女性に囲まれていることもあり、絡まれることはなさそうだ。

良かったと安心しながら視線を教壇に向けると声が聞こえてくる。


「あの…。」


「?」


「リュート様ですよね…?先日はお礼もできず申し訳ございませんでした。わたくし、グレイス・ノルデンフェルトと申します。お借りしていたハンカチをお返えしに…。」


「気にしなくて良かったのに。少しは落ち着かれましたか?」


「はい。」


「それは良かった。貴女なら他の殿方も放っておかないでしょう。傷つけてくるような相手ではなく、守ってくれる相手を慕う方が幸せですよ。」


ニッコリと笑みを浮かべると彼女の顔からぽろりと涙から零れ落ちた。

え!?

私酷いこと言ったかな…。

内心焦りながらどうしようかと思案しているとグレイスから満面の笑みが見えた。


「…リュート様をお慕いしてはだめですか…。」


「え?」


「わたくしには何もありませんから…。」


どういう意味だろうと考えていると周りから陰口が聞こえてくる。

エドワードに振られたのは我が儘で性格が悪いから自業自得だと、そういう言葉ばかりだ。

辛そうにドレスの裾を握るグレイスをあからさまに拒否することなど出来なかったが、ここで簡単に頷いてしまえばコロコロと相手を変える軽い女だと思われてしまうだろう。

そんな事を考えていると不安げな瞳を揺らしながらこちらへと視線を向けていた。


「…お嫌ですか…?」


「あ、いえ。とても嬉しい申し出ですが、まだ互いのことを理解していませんから。それからもう一度判断するというのはどうでしょう?もしかしたら僕も貴女を傷付けてしまうような人間かもしれませんし。」


「…わかりました。ではお隣に座っても…?」


「もちろんです。」


自由席ということもあり、断る理由もない。

隣りに腰掛けた彼女からふんわりと香るいい匂いに、同性ということを忘れて少し緊張してしまうが、担任が入ってきたことで意識をそちらに向けることになった。

今日は座学ばかりのようで、欠伸を噛み殺しながら眠気に耐えていると隣りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。


「リュート様、眠そうですわね。」


「心地の良い気温ですから。身体を動かしていないと眠気が…。」


また漏れそうになる欠伸に背筋を伸ばすことで対抗しながら周りに目を向けると真面目に聞いている生徒の中、最前列から向けられる視線。

気付かないふりしようとわざと反らして見るが、それは逆効果だったようで痛いほど強い視線に変わっていく。

絡まれるとめんどくさいと授業が終わったらすぐにここから脱出しようと心に決めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ