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p.17 (メッセージなし)

 星降りは聖人と人間の絆の証。

 はたして、そんなデタラメを言い出したのは誰なのか。事実と異なる形で伝えられる歴史の裏側には必ず誰かの思惑がある。当然魔術師はそこまでの答えを知る術を持たないが、叶うのなら、真実を不都合だと切り捨てた側の理由を知りたいと思う。

 星降りは聖人に空を傷つけられた後遺症。あるいは、「誠に遺憾である」という星空の定期的な主張。 

 どちらにせよ、雄大な空に対してこれほどの影響を与えることができた最後の聖人を、魔術師は尊敬している。

 夜という資質の中でもっとも大きな力を持つのが星空だ。それにまつわる話はできるだけ正確なものを、というのが夜の魔術師の信念であった。星降りの真実も、そうして辿り着いた物語のひとつだ。

(……さて。今夜は星が乱れるな)

 時間はすべての時を内包していて、たとえば光を散らしたような昼間の日差しにも夜の要素は含まれている。

 それは青空の向こうに隠された星々であったり、強い光によって生み出された影であったりするのだが、夜を得意とする者は、そうした隙間からも力を蓄えていくのだ。

 逆に言えば、星が乱れたり影が揺れたりする日は力の流れを読みにくく、魔術を錬るのが難しい。

『今日このあとは空が不安定だ。混線の可能性があるので、メッセージは送るなよ。星降りの道が決まっている明日はいいが、明後日は様子見だな。……いいか、勿体ないからと言って変な気を起こすんじゃないぞ』

 魔女に念を押すようなメッセージを送り、魔術師は星読みの魔術を展開した。

 銀色の、術式の刻まれた光が迸る。光は筋となり、その一本一本が意志を持つようにうねっている。

(魔術の糸を引きやすく、星降りの美しさを損なわず、かつ他者の邪魔が入らない場所……か)

 明日の星降り観測に適した場所を探し出し星読みを終えた魔術師は、いくつかの罠を街へと送りながら、ぐりぐりと眉間を解した。

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