第九話 見た目がまずそうな物でも、案外食べてみるとイケることもある
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学園生活を充実したものにするにはどうすればいいか?
多くの人間が友達を作ることを上げるだろう。
俺も今までの経験からその意見に賛同する。
『人付き合いは煩わしい、一人でいる方が気楽である。』
という人間もいるかもしれないが、学校というヒエラルキーの中にいる以上、周りから『アイツはいつも一人だ』という哀れみの視線を向けられないよう、また集団から生まれる"いじめ"という名の物理的攻撃力から自分自身の身を守るために、休み時間に集まって暇を潰せる友達を作る、というのは重要かつ合理的行為だと言えよう。
ごく一部の猛者を除いて、大なり小なりクラスの誰かと友達になりたいという気持ちは皆同じなのだ。
あの衝撃的な始まりから、約2週間が過ぎた。
授業自体は教科ごとに先生が違い、益々あのインテリメガネの言は何だったのかと思う今日この頃である。
1年生の科目は、この世界に蔓延る魔物や魔族のことなどを理解するための”魔学”。
昔から使われている魔法を使うための陣の仕組みや、それに使われている古代文字を学ぶための”魔術学”。
それらに加え、武術訓練か魔法訓練のどちらか、または両方を取ることができる選択必修や、国語、算数、歴史などがあった。
ちなみにアイツは魔学の教師であった。
2年生や3年生になると、また違う科目に変わっていくのだろう。
さて、話を戻そう。
入学式初日から遅刻をし、エヴァン先生から目を付けられた俺は、クラスからも半ば問題児扱いをされ遠ざけられていた。
50人いる教室の中身はちょこちょこと会話が増え、休み時間はグループ単位で固まる生徒も増えていく中、それでも俺は未だに冷静さを維持している。
別にこのまま独り身で学生生活を謳歌しても良いのだが、俺にはある考えがあった。
(俺はどこどこの貴族で、領地がどうだの。うちの商会は何々を扱っていて、利益はどれくらいだの。どこのグループの会話もあまりそそられないんだよなぁ…。あまりそりが合わなそうなタイプの人間がここには多すぎる)
いざ友達を作るにも、その人物の趣味・趣向というのはとても大切である。
そのグループはどういう集まりなのかを把握した上で、仕掛けていこうという魂胆である。
とは言え、ある程度固まってしまったグループに入ろうとすると、周囲からの同調圧力によって排他的に弾かれてしまうだろう。
確か排除の論理といったか。
今頃が丁度、腹を括って一歩踏みだすベストタイミングなのである。
とりあえず、あそこの貴族かあそこで突っ伏している奴にでも、声をかけてみるかと思案していると…、
なんと助け舟は向こうからやって来た。
「ちょっといいでござるか?」
「ぁん?」
俺は声がかかってきた方に向き直る。
そこには…、丸々太った子豚と出っ歯のガリメガネがいた。
「このデルパー君から聞いたんだけどもぉ、君異世界人なのかい?」
俺はでゅふでゅふと鼻息が荒い奴から、メガネに視線を向ける。
「どこから聞いたの?」
「えぇーっと、ランデル先生のところに質問をしに行った時に小耳に挟みましてぇ…。ゃめましょうよギータ君…」
デルパー君、聞こえてるよ?
ひどくない?俺泣いちゃうよ?
「じゃあ君”会いたかった”って曲を知ってるでござるか?」
デルパー君が小さく肘をガシガシ入れているのを知ってか知らずか、ギータ君は話を続ける。
「”会いたかった”…?もしかしてA〇Bの?」
これでも俺は歌うのが結構好きで、転生する前は月1でカラオケに行くくらいであった。
話題のJポップ、洋楽、ボカロ、アニソンなんでもござれである。
「A〇B…?キラリちゃんじゃないでござるか?」
そう言うと、いきなり軽く振り付け付きで歌いだした。
クラスの皆、ドン引きである。
しかし、その歌はメロディーから歌詞一言一句違わず、俺が脳内で思い描いていた曲であった。
「あーそれそれ、というかキラリちゃんって誰?」
「キラリちゃんはあの天下のワタナベ商会が排出した新進気鋭の歌手でござるよ!現在は王都周辺の酒場や劇場、コンサートホールでライブを行って順調に知名度を上げているでござる!」
「ワタナベ商会って…?」
俺のその言葉に、2人とも目を見開く。
「ワタナベ商会を知らないのでござるか!?」
「ワタナベ商会はウォルト王国に根を張る、7大商会が1つですよ。その中でも特に音楽業界を中心に据えて、利益を得ています。また商会の長が異世界人ということを公言している商会でもあります」
「また、異世界人かよ…」
(しかも、ゴリゴリにパクっとるし。転生したからって、やりたい放題すぎだろ…)
「それで!やはりその歌を知っているってことはまだ見ぬ他の歌とかも知ってたり…」
「うん!結構詳しいよ。というかそれで商売出来たり…」
「やめた方がいいですよ」
デルパー君が眼鏡の蔓をクイっと上げる。
その癖、あのクソ先公と被るからやめてほしいんだが…。
「前に同じようなことをした異世界人の方がいらっしゃったらしいのですが、しばらくして行方不明になったらしいです。そして、その噂が広まっていることからして…」
「他の異世界人に対する牽制ってところか…、ありがと…。助かったわ」
「いえいえ」
(こっわ、渡辺って同じ日本人じゃねぇのかよ!自分の利益を害する者には容赦なしかよ…。これじゃあ知識チートで商売は無理そうかもな)
それからデルパー君とも会話を重ねてみると、どうやら彼もオタクらしい。
王都から北側の領地を通って、魔族との北部最前線であるガット領手前までを繋ぐ『ウォワーフ横断鉄道』をこよなく愛する、いわゆる鉄オタであった。
彼との話によると、この前お会いした飛山さんだが、どうやらこの鉄道敷設計画の要のような方であり、蒸気機関車の設計などにも携わり、この計画の立案、および陣頭指揮を執り成功させた。
その功績を称え、今の爵位と地位をゲットすることができたらしい。
つまりデルパー君にとって神にも等しい存在というわけだ。
そんなこんなで、共通の趣味から意気投合したお友達が二人出来た。
見た目はさておき、暇な時間にこの3人で集まって、雑談をするこの時間が意外と嫌いではないのは前世では俺も陰キャだったからであろう。
周り…、特に女子からの視線が段々と冷たくなってきている気がするのは不安であるが…。
自分で言うのもなんだが、俺結構イケメンだぞ?
気のせい…、だよね…?
ちなみにギータ君の語尾は友達になって次の日に辞めさせました。
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