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第六話 人は見かけで判断する奴は、馬に蹴られて死ね

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 言われるがままにその男性の後ろをついていく。


 「あの…、この学園の教師の方なんですか?」


 「ん?あぁ、そうだね。もし君が入学試験に受かったのならば、この学園の担任として、君を受け持つことになるかもしれないね」


 振り返りつつ、こちらを眼鏡越しではなく肉眼で観察してきたのは、偶然にも来季1年生を受け持つことになっている先生であったらしい。


 黒髪を適度に伸ばし、丸縁メガネをかけており、とてもインテリな印象を受ける。


 この国の髪色についてなのだが、周りを見て思うのが転生者や転移者に黒髪が多いというだけで、別にそれらじゃない人達にも黒髪は結構、というかかなりいる。


 黒髪と同じぐらい、茶髪がいて、あとはまちまちといった感じだ。


 最近では魔法具や髪用の染粉なんかも普及してきていて、ド派手な色なんかも散見され、かなりファッショナブルな時代になってきていると言えよう。


 目の前のインテリメガネは前に向き直り、メガネの真ん中をクイッとあげるとまた歩き出し、やがては一つの部屋、待機室のようなところに通されると、俺はそこでしばらく待つように言われる。


 彼が最後立ち去る前に言い放った、


 「まぁ、もし君が受かったら、の話だけどね」


 という言葉が俺の耳を強く打った。


 (え?別室に通されて何すんの?つーかここから試験受からないなんてあんのかよ!おい!誰かタスケテー!)


 言い知れぬ不安感に心が苛まれること数分。


 今度は女性の方がノックの音とともに入室してきた。


 浅黒い肌で、銀色の髪は後ろで束にしていた。

 目つきがとても鋭く、近寄りがたい、そんな印象を受ける女性であった。


 耳が少し尖っていたが…、とても個性的な方である。


 「アノアさんでお間違えないですね?」


 「あ、はい」


 「校長がお呼びですのでご案内いたします」


 その怖そうな女性とともに、大理石の床を歩きつつ、徒歩10秒。

 さっきの部屋から出て、ちょうど右手奥突き当たりにそれはあった。


 『校長室』


 コンコンッ


 「どうぞ~」

 

 中からハキハキと快活な年配の方の声が聞こえてくる。


 「失礼します。転生者の子をお連れしました。」


 「失礼します」

 

 「おぉ、ご苦労でしたなぁ」


 中には2人の人物がいた。

 一人は白髪にちょこちょこ黒いのが混じっている、にこっとした朗らかなおじいさんであった。


 恐らく、60歳は超えているであろう。


 そして、もう一人の奴が、


 「あぃ!」


 赤ん坊である。


 ものすごく華美な執務椅子に何段もクッションを敷き、その上に1~2歳くらいであろう、子供が鎮座していた。


 (…、あぁん?どゆこと?ナニコレ?おままごとでもやってんのかこいつら?)


 あまりの光景に少しだけ、眉をひそめてしまう。


 辺りを見渡す。

 部屋は入る前からある程度予想していたことだが、メチャクチャ広い。


 ドッヂボールは出来そうな広さだ。


 部屋の両端には所狭しと、本棚に本が敷き詰められている。

 正面は一面ガラス張りになっており、はるか高さからここの敷地内を一望することが出来るだろう。

 また右奥には螺旋階段があり、まだまだここは校長室の一部に過ぎないのだと思い知らされる。


 良く分からない書物ばかり並べられていることからも、この部屋の主はさぞかし、英知の結晶のようなお方なのであろう。


 たぶんね…。


 女性が左奥、赤ちゃんの右後ろ、恐らくそこがいつもの所定の位置なのであろう場所に落ち着いたのを確認し、俺は視線を元に戻す。


 「あぅ」


 「よく来たな、転生者の子よ。わしは、この第一文武魔法学校の校長、アブラーン・クリストフじゃ」


 「ぶふっ」

 

 「……」


 (おいおい、全く話がついていかねぇんだが?何でさも当たり前みたいに翻訳してるの?ねぇお姉さん?メチャクチャシュールなんですけど!あとクリストフじゃ!って何だよ!?じゃ!って似合わない口調やめたほうがいいぞこのクソガキ)


 俺はいきなりの展開に動揺を隠せず、視線を2人の間で右往左往することしかできなかった。


 すると、今までクックックッと笑っていたが、さすがに見かねたのか、執務机の手前で立っていたおじいちゃんの介入が入る。


 「これ、クリストフや、彼が困っておろう。早く自分で話さんかい」


 直後、俺の脳内にブォンという音が鳴り響く。


 『ほれ、これで良いかの?改めて、アブラーン・クリストフじゃ、校長をやっとる』


 どうやら脳内に直接語りかけてきているらしい。


 若い少年のような声がどこからか聞こえてくる。

 他の2人がうなづく仕草から、彼らにも校長の声が聞こえているらしい。


 『あぁ、そうじゃ!君が話すときは口頭でな。念話を使えんと、君の思っていることはわしには分からんからな』


 (このクソガキがぁ!!出来るんなら最初からやれやぁ!!)


 『というのは嘘じゃ』


 「大変申し訳ございませんでした」


 直角90度、誰が見ても見惚れるようなとても綺麗なお辞儀であった。


 『というのも冗談なんだが…、w』


 部屋の中から、再び押し殺したような笑い声が響き渡る。


 俺はあまりの恥ずかしさに下を向きながら、まるでゆでだこになったように赤面する。


 『表を上げよ若人、人には間違いが付きものじゃ。失敗を悔いるより、次にどうすればよいかを考えれば良い。』


 言っているのは赤ちゃんである。

 俺はもう何も突っ込まないが…。


 偉大なる校長様からの教えであるからね!


 『さて、今回君をここに呼んだ理由なんじゃが、今が色々と都合が良いと思ってじゃな…。ほれマサル、挨拶せい』


 天からの声に促されて、おじいちゃんがこちらに1歩歩み出る。

 

 「ではご紹介にあずかりまして…、私は王立万物研究所の所長を務めております。御年68歳、飛山勝と申します。日本人の方とお見受けするが?本名を伺っても?」


 「あ、これはどうもご丁寧に、私、アノア、アノア・ヴィデルチェと申します。前世では神田龍二という名前でした。」


 「ホッホッホ、礼儀正しい子じゃ。その様子じゃと、あっちで生まれてからかなり後にこちらに転生させられたんじゃないですかい?」


 「…?23の時にこちらに転生してきました。この体に入ってからまだ1週間ほどで…」


 「なんと、それは大変じゃったな…。わしはこの世界に転生させられてから既に50年は経っとるからな、何か困ったことがあれば研究所まで来て私を呼ぶといい。可能な限り力になるぞぃ」


 「ありがとうございます」


 『まぁ、話はそれくらいにしてだな…』


 こんなところで初めての同類の方と出会った。

 しかもこの国について良く知ってる方であり、何やら校長とも親し気で、とても偉い方のような気がする。


 お知り合いになれてラッキーだ、何か困ったことがあったら遠慮なく頼らせてもらおう。


 

 俺が同士との出会いに感慨に耽っていると、少し遠慮気味に、コンコンッとノックの音が聞こえた。


 それでもドアの真ん前に立っていた俺はギョっとして左側にはける。

 スペースはいくらでもあるからね。


 『おぉ、なんといいタイミングじゃ』


 『入ってよいぞぉ~』


 あちらとパスを繋げたのか、一人の男子生徒がここ、校長室へと入ってくる。


 「失礼します。お話があるとお伺いしたのですが、もしかして…?」


 その制服姿の生徒は茶色の髪を短く揃えていた。

 おでこは全部出していて、すこしパーマがかっているのが、特徴的であった。


 そして、何よりその顔である。

 この世界に来てからは見たことがないその鼻はスラリと高かった。

 ザ・外国人っといった顔立ちである。


 あれ…、というかこいつ…?


 『お話はあるんじゃが…、まずは別件じゃ。そこの彼、アノア君というんじゃが…、彼は転生者でな。今度うちに入ってもらうことになっとる。ちょっと校内の案内と…、時々目をかけてやってはくれんかの?』


 「はい!」


 茶色パーマ君が俺に向き直る。

 

 「初めまして、僕マークスって言います。19歳でこの世界に転移(・・)して…、大体1年になりますね!あと、父親がアメリカ人のハーフです!」


 そうだろう、何故ならこいつ流石に15歳と偽っても、ギリギリアウトな見た目をしている。

 この学園それでダイジョブなんだろうか?


 と思っていると、案の定補足説明が入る。


 『彼はわしの知り合いから面倒を見てくれないかと頼まれてのう。ホントは学院の方に入れ込みたかったんじゃが…、如何せんあそこの連中は頭が固くてかなわん。まぁ他の学園のことがあるし、仕様がないのはわかるが…』


 『そこで、わしがこの学園に2年生として編入させ、学院への推薦を与えようという考えに至ったわけじゃ。』


 そこで話はマークスに移る。


 「それでも色々と年齢とか推薦の事でも結構大変だったんだけどね…、他の生徒にしてみれば己の人生が掛かった推薦の1枠を途中で転入してきた、今までテストを受けてこなかった良く分からない奴に掻っ攫われるわけだからね。そこで、校長と話し合って俺の強みを生かしたのがこれってわけ!」


 と言いながら、手に持っていた紙束を俺に見せつけてくる。


 そして、体を前方に向き直す。


 「申し遅れました。私はマークス・涼というものです!つかぬことをお伺いしますが、あの飛山様でお間違えないでしょうか?」


 「おぉそうじゃ…、君がクリストフが言っておった子か。どれ、拝見させていただいても構わんかね?」


 「はい!よろしくお願いいたします!」


 おじいさんは紙を受け取ると目つきが変わり、指に唾を付けながら、1枚、1枚めくって中身を確認する。


 どうやら先程ちらっとタイトルを見た感じ、蒸気自動車?なるものを作ろうとしているらしい。


 『私たちが目を付けたのは学術論文…、というわけじゃな。わしのコネクションを使って、学院よりさらに上の機関である研究所の最高責任者様のお墨付きを得ることで、大手を振って推薦、ひいては今後の進路さえも決めてしまおうという腹じゃよ』


 手持ち無沙汰にしていると、校長の方からまたもや追加説明が入る。


 待つこと寸刻、顔を上げた飛山さんはニコニコしていた。


 「すごいぞ!マークス君。君のこの設計図と仕組みが書かれた資料と研究所の資金力や伝手、魔法技術を結集させれば、誰でも気軽に遠くまで行ける魔導自動車の開発も充分に考えられる!」


 「ホントですか!それなら…」


 「あぁ、私から学院の方には掛け合ってみよう。私の方も新しい部門を生み出すために、早速仕事に取り掛からないとな…。君は今すぐにでも欲しい人材だ、幸い機械部と学院は比較的近いところにある。度々来てくれると助かるよ」


 「よっっしゃっ!!度々とは言わず、暇なときは出来るだけ行かせていただきます!」


 一人の生徒の最終進路が今さっき決まった。


 まぁ、彼もすごくガッツポーズで喜んでいたし、異世界転移という不遇に巻き込まれながらも、今後しっかりした仕事に就くことが出来るというのは、彼にとっても天職なのであろう。


 『さて、話がまとまったみたいじゃな』


 ひと段落着いたところで、校長が皆の視線を集める。


 その姿は赤ん坊ではあるが。

 

 『そこの二人の要件はもう終わったから退出しても良いぞ。わざわざご苦労じゃったな』


 「いえ、それでは失礼します」


 「失礼します」


 俺はマークス先輩の後に続いて、この場を去ろうとする。



 「あ!」


 ふと思い出したことがあり、ドアの前で声を発し、振り返る。

 マークス先輩はドアを開けたままこちらを待っているようだ。


 『どうしたんじゃ?』


 「私、まだ試験とか受けてないんですが…。クラスとかはどうなるんで?」


 校長は側に控えているお姉さんに目くばせをする。

 彼女はこめかみに手を当てるような仕草を取ると、


 「今しがた全ての受験者の身体検査が終わり、試験場所への収容が完了したようです。もうそろそろ始めの方の受験者がお昼休憩に入るとのことなので…。」


 『アノア君は試験を受けそびれた…、ということじゃな?』


 (え?なんでそうなるの?なんだかこの流れはまずい気がするぞ…)


 「あの…、このまま別室で試験を受けさせていただく、なんてことは?」


 『アノア君、わが校の教訓として、なるべく誰かを特別扱いしない、皆が等しく教育が受けられる場を作るというのがあってだな…』


 そう言葉を濁すと、この目の前の赤ん坊はいたずらをするときの少年のようなニヤニヤした笑みを浮かべる。


 (こいつ!まさかあん時の事根に持って…、ふざけんじゃねーぞ!!ゴリゴリに後ろのこいつ特別扱いしてたじゃねーか!!!)


 グリンっと効果音がなるかの如く、首を回転させ後ろを振り向く。


 すると何を思ったか、彼はアルカイックスマイルで、


 「諦めなよ。所詮クラスが違くても、受けられる教育は一緒なんだし。進級時にまたクラス分けがあるからそんな悲観することないよ」


 とのたまった。


 今更ながらに、こいつに推薦を取られた奴らと心から同じ気持ちになれたことを自覚する。


 (俺は知ってるぞ!推薦とやらにはクラス分けってのがメチャクチャ重要だってことを!そもそも試験受けられなくて、クラス下がりましたーだと!?どうやって地元のみんなに説明すりゃいいんだ!顔向けできねーだろ!今までテストも受けてこなかったおめーが上から目線でガチャガチャいってんじゃねー!!)


 『というわけで、来年からアノア君はFクラス確定じゃ!!!』


 (ガーン)


 俺は自分の体が石化して崩れていくような錯覚に陥るのを実感していた。


 



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 最近の私のなろうブームは陰陽師に転生する奴ですね。

 毎回、更新を楽しみに待ってますww

 私の作品もいつか誰かにとってそうなれるように頑張りたいですね(笑)

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