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第四話 大事なお話とははぐらかしたくなるものである

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 レオノラおばさん。


 本名レオノラ・ヴィデルチェは、この屋敷で一緒に暮らしてはいるが、俺の呼び方から察せられるとおり。


 俺の本当の母親…、というわけではない。


 これについて話すには、まず俺の父親について話さなければならないだろう。

 まぁ、こいつもあまり詳しいことは分かっていないっぽいが…。


 俺の父親は、アーサー・ヴィデルチェ。


 元々王家の直轄領であったこのヴィデルチェ領を貰い受け、1代で成り上がった現男爵らしい。


 その父親なんだが、腕っぷしはとても強いらしいが放浪癖があるらしく、年がら年中どこぞを旅しているらしい。


 何とこの父親、このアノアが物心ついてからは一度もこの領に戻ってきてないらしく、俺もこいつの人相が分からない。


 間違いなく、色々と駄目だろうと思わせる人物であった。

 

 そんなんで領主が大丈夫か?と思わなくないが、俺たちが住むこの”ウォルト王国”は、隣国である魔族の国とびったり国境線が繋がっておりいつも戦争状態にあることや、王国の資源とも称されるダンジョンの影響により、強い人材を常時欲しているらしい。


 その為王国の貴族には、政治的駆け引きや謀略を駆け巡らす能力も勿論重要ではあるが、『そんなものは知らん』と圧倒的な武力を身に着けるのも、王国で位の上下に関わらず一目置かれる存在になる手っ取り早い手段になっているらしい。


 まぁ簡単にいえば、脳筋貴族が結構多いのである。


 その為王国は、領内の内政を行う権利の一部また全部を委任して代わりに取り仕切って貰える代理人制度というのを採用している。


 これにより、領を持つ貴族は毎日自領に引きこもって内政の指揮を執る必要はなく、王都で役職に就いたり、騎士団に入ったり、はたまた冒険をしたり、ふらっと行先も告げずに旅に出ることも可能というわけだ。


 その代理人制度を使い、現在このヴィデルチェ領の全権を委任され司っているのが、他領の男爵家からはるばるここに嫁ぎに来た、このレオノラさんという方である。


 彼女はこの領主、アーサーの本妻に当たる人物である。


 また1人の子持ちの母親という側面もある。


 俺の母親はアーサーの側室、つまり2番目の妻に当たるらしい。


 つまり彼女にしてみれば、俺はどこぞの側妻が生んだガキという何とも微妙なポジションにいるわけだ。


 「ふぅ…」


 一度深呼吸をし、気持ちを整える。

 そして、ドアをコンコンッとノックをする。


 「入りなさい」


 「失礼します」


 「あぁ、アノアですか、そこに座っててください」


 手前には明るい室内に照らされた、応接用のアンティーク調革張りソファーが4脚、机が1卓。

 そして、奥には草花が植えられた2つの大きいプランターに挟まれて、執務用の椅子に座り、1人の女性が書類と睨めっこをしていた。


 眉間を指でマッサージをする姿や、左後ろに控える60歳くらいで黒スーツをきっちりと着こなした男性と顔を顰めつつも話し合う姿から、相当悩ましい物と悪戦苦闘していることが伺える。


 レオノラさんの言う通り、手前のソファーに腰掛け待つこと数分。


 ある程度区切りがついたのか、話が終わりそうな雰囲気を醸し出す。


 「報告は以上です…。お飲み物でもお持ちしますか?」


 「えぇ…、紅茶でお願い。あまり急がなくていいから」


 「かしこまりました」


 そう言い終えると、黒スーツの男性、セバスが部屋を後にする。


 傍を通る時に軽く微笑みかけてくれて、少し気分が和んだ。


 「さて…」


 そう言いながら、レオノラさんは俺の対面に座る。


 レオノラさんの年齢は30代半ばくらいだろう。


 金髪を後ろ手に団子で結び、メガネをかけている。

 寝る前のネグリジェ姿でなければ誰しもが、ザ・キャリアウーマンと呼ぶであろう外見をしている。

 端正な顔立ちに幾つもの苦労皴が刻まれていることから、普段からとても大変なことが手に取るようにわかる。


 「お仕事、お疲れ様です」


 俺のその言葉に彼女は若干目を大きくするが、直ぐに話に戻る。


 「えぇ、ありがと。まずはあなたが無事に目覚めてくれてくれて本当によかったわ」


 「はい」


 「それで…、夜も深いから手短に3点話させてもらうわね。その前に……、あなたは転生者の方ですか?」


 そう言葉を切ると、顎を下げ、眼鏡越しではなく肉眼でこちらを品定めしてくる。


 あれは半ば確信しているような目だ。


 (あーりゃりゃ、こりゃバレテーラ…、どう返答したほうがいいかな…。ワンチャン家から追い出されることも考慮しないと…。つーかなんでバレたんだ?)

 

 昔のアノアの記憶と照らし合わせ15秒ほど考え込んだ後、なぜバレてしまったの予想を素早く導き出し、返答内容を素早く頭の中に生み出す。


 「…はい、よくお分かりになりましたね。髪の色…、ですよね?」


 「…、昨日までのあなたの髪は父親と同じ茶色をしていました。それが今日の夕方、マルガレットがあなたのいる部屋に入ると、あれほど変化がなかったあなたの態勢が変化しているというではないですか。私は急いで向かい…、そしてあなたの髪を見て悟ってしまったのです…。」


 「アノアに何者かの人格が入って、転生しているという事実を…、ですよね?」


 「…あなたは知らないことだとは思いますが、このウォルト王国に存在する、または存在していた転生者・転移者のほとんどの方は黒髪なのです。まぁ、他にも理由はあるんですが…、」


 「他?」

 

 「あなたが部屋に入って最初に言葉を交わした時、私を労ったでしょう?」


 「あ、そう言えば」


 「私やマルガレットは日々あなたやアトスに厳しい躾を施してきた自覚はありますが、誰かを気遣うことはまだ教えていませんでした。私やマルガレットが仕事をすること、礼儀作法を教えることは義務ですから。あなたたちにも当然受ける権利と責務がある、そう教えて参りました。」


 (そう言えば、マルガレットさんもお礼を言った時に、少し驚いていたなぁ…。)

 

 「それで…、私のアノアはどうなったのでしょうか?」


 「…、俺にも正直わかりません。ですが俺はこの場所で12年間過ごしてきた記憶があります。前世の俺とアノアの両方が混じり合った、そんな状態と言えるのではないでしょうか?」


 「なるほど…」


 そうレオノラさんは言葉を切ると、目線を下に考え込んでしまう。


 俺は彼女から見て、旦那の浮気相手の子供とかいう猛烈に憎悪を掻き立てる対象ではあるが、実際は彼女の子供アトスとともに、まるで自分の子供のように愛情を込めて今まで育ててくれたのを知っている。


 そんな長男ともいえるアノアが良く分からない奴と合体してしまったというのだ。


 深く考え込んでしまうのも仕方がないであろう。

 

 まだアノアと俺との記憶の統合が上手くいかないのか、1回、1回アノアの記憶の概要を認識し、その詳細な中身を知りうるのに若干のラグがあり、とても煩わしい。


 今回のように、アノアを良く知る人物が現れた時に、このラグは彼の人格が消滅してしまったのを悟られる致命的なミスになり兼ねないと危機感を募らせるのだった。


 彼女の中で思考に一区切りついたのか、はたまたそろそろいい時間であること思い出したのかはわからないが、レオノラは再び顔を上げる。


 「さて、聞きたいことは聞けましたので話を次に進めましょう。」


 「確か3点…、ですよね?」


 「はい、まずは1点目、あなたも12歳になりましたので、来年から学園に通ってもらいます。」


 「はい」


 これは半ば予想していたことだ。


 ここウォルト王国では、ほとんどの国民は行くことがないのであるが、貴族や商家の優秀な人材を集めて、武術や魔術・教養を与える場である"学園"という場所があるのだ。


 ちなみに学園は13歳から15歳まで3年間通うところであり、そこからさらに優秀な成績を収めた人は、ウォルト王国に1つしかない"学院"に進むための推薦を勝ち取れるらしい。


 そこでさらに4年間、様々な物を学ぶことができるらしいが…。


 (まぁ簡単に言うと、中学校と大学って感じだな。一番アイデンティティが成長する大事なジェネレーションである高校がないのは少し納得がいかないが…)


 「領民とは違い、あなたはトゥーロさんを筆頭に、私やマルガレット・セバスから様々なことを教わりましたね?あなたは貴族ですから、落ちる…ということは無いとは思いますが、しっかり試験に臨み、Aクラスを取ってきなさい!」


 「はい!」


 ちなみに、トゥーロさんとはうちで雇っている家庭教師の方である。

 アノアやアトスの勉強を見てもらっている。

 

 元来、うちの領に関わらず、多くの領民は日本とは違い、一人ひとりがあまり高度な教育を受けられる環境にはない。


 と言っても、国からの決まりで最低限の計算や読み書きなどは教えなければならないのだが…。


 家の領では、学園出身の方十数名が、領主代理であるレオノラさんと契約を結び、馬車で領内各地を周ってもらいながら、簡単な物事を教えるという感じだ。


 簡潔に、移動型青空教室とでも呼称しよう。


 まぁ、その青空教室なんだが、十数名という言葉通り、勿論子供の領民が毎日受けられるほどのキャパがあるわけでもなく、どの領も6歳から15歳までの子が大体1週間に1回程度受けられる形になっているらしい。

 

 対して、ちゃんとした教育を施せる資金がある商家の子や貴族なんかは、それとは別個で家庭教師を雇ったり、先生を呼んだりして、十全な教育を受けているといった状態である。


 ちなみに、うちのトゥーロさんは学院出の超エリートである。


 レオノラさんはちゃっかりしてるね!


 ついでに最近では、商家や教育者が将来の自家の発展への投資や商売として、無料ないし薄利で、比較的大きな都市での教育、まぁこちらは仮に小学校と呼称しよう、も増えてきているという。


 そうやって様々な場所や身分関係なく、現在では決して裕福とは言えない商家やいいとこの農家の子たちとも競って、その学園の入学枠を競わなくてはならないのである。


 まぁ、余程のことがない限り、貴族が落ちることは無いと聞くが…。


 レオノラさんが、スッと立ち上がり、執務机の引き出しから1枚の紙を取って、寄越してくる。


 …、今更なんだが、話している言語は日本語なんだな…。


 まぁ、かなりの転移者がいるらしいし…、そこら辺のケアとかはしっかりしてないと色々大変そうだもんな。

 

 「これが詳細が書かれた紙ね。試験の日付は今より1週間後…、ホントに目覚めてくれてよかったわ…。今から支度して、移動してちょうどいいかしらね…。2日後には支度をして、エウリオに発って頂戴。馬車と御者と…、セバスをつけるわ。」


 「分かりました。」


 その他、注意事項や大体の流れの説明を受ける。


 どうやら試験が終わった後も、しばらくあちらに留まり、試験が受かったと分かり次第あちらで教材を買い込み、そのまま入学・入寮になるらしい。


 (随分急だな…、しばらく戻れないかもしれないし、挨拶まわりしとかないとな…)


 伊達にアノアは12年生きてはいない。


 俺には今までお世話になった方たちや、弟、幼馴染やダチの顔が何人も思い浮かんだからだ。


 「…くらいかしらね。他に何か質問ある?」


 「いえ」


 「そう。じゃあ2点目、相続の事なんだけど…」


 急にレオノラさんの歯切れが悪くなり、俯く。


 しかし覚悟を決めたのか、今度はしっかりこちらの目を見て話を振ってくる。


 「あの人の跡継ぎ、つまり時期男爵の事なんだけども。私は本妻として、また領地を取り仕切る代理者として、アトスにすることを決めているわ」


 「はい」


 なるほど、

 

 できれば自分の子供に爵位を継がせたいのは至極まっとうである。


 これは俺自身はある程度予想はしていたことだったが、体の方は違ったらしい。

 胸に深くズーンとのしかかるものが有った。


 …、この体のことは良く分からないが、恐らく昔のアノアは少なからず長子として、自分が次期男爵になると思っていたのであろう。


 「納得してくれるのね…、ありがとう。あなたが学園を卒業してから、ここに戻ってきてアトスを手伝うのも勿論歓迎するわ。でもあなたは前世の事もあるし…、あなたの自由にするといいわね」


 「ありがとうございます。」


 ”目は口ほどに物を言う”とは言うが、実際にレオノラさんは俺の目を見て、心配は杞憂であったことに気づいたらしい。


 「それで、3点目なんだけども…」


 また言葉の途中で彼女は俯いて考え込んでしまう。


 今度は先程より長いように感じたが、顔を上げたレオノラさんは…、


 そのきれいな顔に笑みを携えていた。


 「…何でもないわ。2点ということにしておいて」


 「はぁ…、では失礼します。おやすみなさい」


 「えぇ、おやすみ」


 その言葉を最後に俺は席を立つが、ドアを開けようとしたタイミングで、レオノラさんに声をかけられる。


 「アノア!…、あまり窓を開けて寝ちゃダメよ。風邪をひかないようにね!」


 「はい」


 俺は部屋を出る。

 

 ドアの真ん前にはセバスが立っていた。


 両手にはティーポッドとカップがお盆の上に乗っけられている。


 彼はニコニコしながら訪ねてくる。


 「紅茶、いかがですか?」


 「いや、いいよ」


 「そうですか…、おやすみなさいませアノア様」


 俺は軽く頷くと、自室に戻るのであった。


 11月2日矛盾点加筆修正あり。

 そういえばアメリカの高校は4年間あるらしいですね。

6,2,4年制が一般的なんだとか。


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 話変わるんですけど、最近ガンダム・エヴォリューションがPCで出ましたね。

 とても面白いんで、是非やってみてくださいw

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