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第三十二話 ゴブリンを勢いよく飛ばします

 是非ブックマーク、レビュー、感想、グッドボタンとチャンネル登録などあーだこーだお願いします!!


 しばらく動かないと思ったら、どうやら人間サイズのゴブリン、そちらはゴブリンが進化したらああなるのであろう上半身と丸々太った胴体の接合部に蜘蛛由来の顔面があった。


 そこが壁に衝突した時に、めり込んで四苦八苦していたのであろう。

 壁の表面が削れ礫が落ちる中、たたらを踏みつつ2つの顔が回転してくる。


 「準備が出来たら合図をしろ。それまでは俺達が引き付ける」


 「え?あ、はい」


 「いくぞ!!」


 俺の他3人が駆け出していく。

 そんな中、俺は一人で宿題と睨めっこだ。


 (そもそも、俺にそんな大それた力はないっつーの…。エニグマさんは何でそこまで俺の実力を買っているんだ?)


 魔闘祭の時もそうだが、彼女は俺を過大評価している。

 俺は転生した何の能力もない一般人だぞ?


 …、いや俺はそうかもしれんが、もしかしたら俺のこの体、アノアの方は違うのか?分からない。


 分からないが今は彼女を信じる以外、この場を切り抜ける方法はなさそうだ。


 「えーっと、空気をいっぱいに吸い込んで、マナを循環させるっと」


 転生する前のこの体はごく普通に風魔法を使っていたのだ。

 今更大気に含まれるマナを知覚することはなんら造作無い。



 ということはない。


 前は目を閉じれば、感覚として空気中を漂う青いハウスダストのようなマナを何となく感じることができたのであるが今はそうはいかなかった。

 なので、そこはイメージで補うことにする。


 エアを勢いよく吸い込み、吐き出す。

 マナを体の中でこしとるイメージも忘れずに。


 何度も何度も凝縮し、肺に濃度の高いマナを貯め込んでいく。


 そして、


 「マナを体中に循環させるっと」


 ここがポイントだ。

 本来はマナを体の至る所にあるリンパ節と全く同箇所に存在する魔力管という部位に送り込み、魔力を生成するのであるが。


 今回は何も考えずに彼女の言う通り、従うことに決めたのだ。

 無駄に体中に送り込んでみる。


 勿論、なんとなくであるが。


 「おい!まだか!?」


 向こうで声がする。

 やはり、エニグマさんの火魔法とナスティーさんの風魔法はかなりシナジーがあるらしい。


 そちらを見やると、地を走る火炎が怪物を取り巻き、風魔法がそれをサポート。

 さらにとめどなく溢れ出る黒煙を穴に流すアフターケアまで行い、上手いこと動きを制限している。


 そして弱点である彼女らに注意が向かないように前面で奴のヘイトを買うのはサッシュさんの役目だ。


 体を持ち上げ、八足から四足歩行になり、振り上げた残りの四足で地を這う獲物を狩ろうと模索するモンスターに対し、こちらもいなす形で両手剣を使い、隙あらば胴体に入れようと相手を牽制するサッシュさんの姿がある。


 今はその場に縫い留めることで手一杯なのだろうあの戦い方。

 先の呼びかけを見るに、要するに俺の一撃待ちなのだろう。


 つっても、その糸口はまだつかめそうにない。


 「まだ時間がかかる!!」


 声を張り上げつつも、あくまで頭は冷静に。

 体中にマナを送り込む、送り込む、送り込む。


 「もう限界だ!!」


 うん、良く分からん。

 当たり前だろう。

 マナや魔力を感じ取れないんだから、己のコンディションが分かるべくもない。


 「分かった!すぐ行く!」


 それでも遂に俺の出番が来たようで。

 ドタドタッとサッシュさんの元へオーバー気味に走り寄る。


 彼は後ろを振り向かなくても、俺がここに向かっていることがこれで分かっただろう。


 「スイッチ!!」


 刹那の間に俺と彼の意識が共有される感覚が生まれる。

 彼も俺が次に何をしたいのかが通じただろう。


 挟みこもうと迫りくる下部2本の足を払いのけると同時に左に逸れ、真ん中を明け渡す。


 「行って来い!!」


 滑り込むようにサッシュさんと入れ替わり、化け物と対峙する。

 いきなりで悪いが、既に上部2本の足と胴体がボディプレスを俺にかまそうとしている状態だ。

 慈悲はないのか!?


 それに真っ向から挑もうとしている余りにも愚かな俺。


 (おい!死んだらホントに恨むからな!!)


 「うわぁぁぁぁあああ!!!なぁぁぁあむさぁぁああん!!!」


 地を踏みしめ、まるでスーパーマンが飛行するかの如く、拳を前に振り上げ、目の前の比較的柔らかそうな胴体に突き刺さりに行く。


 それは人知を超えたスピードになり、その怪物を文字通り浮かす(・・・)


 「「「なっ!?」」」


 不安定な態勢のままひっくり返ったソイツは足をばたつかせながら、元に戻ろうと必死にもがいている。

 

 「これは…、いけるぞ!っておい!どこ行くんだ!?」


 「力を貯めます!またヘイトをお願いします」


 蜘蛛ゴブリンの後ろに回り込んだ俺は壁を背に座り込み、土下座の姿勢を取る。


 まさか俺にこんな才能があったとは…。

 興奮する脳内を押さえつけ、再び体の隅々まで酸素を送り込む。


 貯めの時間は長いがこれは絶対に俺の武器になる。

 そう確信した俺は、炎を挟んで目の前で無様に転げる蜘蛛ゴブリンの本体に笑みを浮かべる。


 そのゴブリンの顔は別種の俺にも一目見て解るほど、絶望(・・)に染まっていた。

 

 「待ってろ。今楽にしてやるからな。……あ」


 ヤバい…。

 顔を見てしまった。


 咄嗟に下を向いて何とか誤魔化す。

 

 あ、あぶねぇー。助かったのか?


 一瞬、希望が見え始めた頭の中を『得体のしれない絶望』が浸食しかけたが、何とか持ち直すことに成功する。

 ルクスさん達を見るに何とかならないような感じがしたのだが…。

 まさか劣勢になったことにより、能力が弱まっているとか?


 「おい化け物!こっちだ!」


 隠れて見えないが、サッシュさんは剣を振り回して必死にヘイトを買ってくれるようだ。


 やがて蜘蛛ゴブリンが態勢を立て直す。

 しばらくこちらを向いているのが下の顔を通して確認できたが、今のところは害意がないと読み取ったのか、振り返って尻を攻撃し続ける人間の相手をする。


 「そ、そうだ!こっちだぞ!かかって…、うわぁぁあ!」


 …、大丈夫だろうか。

 所々本当に危なくなったらエニグマさん達が魔法で援護しているようだが。

 そんなことができるのも最前線たった一人で奴に有効打を蓄積し続けている彼のおかげなのだろう。


 だが、左右に別れて魔法を酷使し続ける彼女らは顔から見て既に疲労の極致に達していそうだ。


 それに、何より敵も一筋縄ではいかない。


 『グギャァァァァアアア!!!!』


 再度、地中に咆哮が走る。


 「な、なんだ!?」


 俺達をただ威圧したいが為のものだったのか?

 そう頭の中で処理しようとしたその時、辺りが激しく明滅し出す。


 あー、嫌な予感だ。


 パシャッ パシャパシャッ


 天井に至るまで無数にある緑の球体が割れ、なんと中から蛍光色に光ったゴブリンが出てくるではないか。

 高い所から落ちてそのまま動かなくなるゴブリンもいる中で、そいつらは主に害を成す俺達を標的と認めて襲い掛かって来る。


 「くそっ!援護を頼みます!」


 「バカヤロー!援護を頼みて―のはこっちだっ!!早くしろ!」


 「きゃぁああ!!」


 「ナスティー!?」


 蜘蛛ゴブリンの周りと取り囲んでいた炎のフィールドが消える。

 この分だとエニグマさんも相当ヤバそうだ。


 というか一番ヤバいのは多分俺。

 マナを体全体に送り込むことで手一杯になり、襲い掛かって来る未成熟ゴブリンに対応が出来ない。

 まるで人間に群がるゾンビのように張り付き、噛り付いてくる。


 「いてぇぇええ!!くそっ!離れろや!」


 体全体が強化されているのか、はたまた生まれたてゴブリンが弱いのかそこまで痛みは感じないが、絵面がまるで酷く気持ち悪い。


 体中をアリに動かれているような感覚だ。

 果たしてこんな中でも冷静に身体を順調に強化出来ているのか?


 不安になりながらも、必死に息を吸い込みマナを送り込む、送り込む。

 

 だが、そんな時間を魔物は待ってくれちゃいないのだ。


 「アノア君!?そっちに女王が!」


 「…!?どきやがれ!」


 顔に張り付いたゴブリンを押しのけ前方を確認すると、目の前に蜘蛛ゴブリンが…。


 胴体が膨らみ、下の顔からどす黒いブレスが吐かれる。

 あれがどういう性質かは分からないが取り敢えず、自分の喉元に届きうる奴をいの一番に消しさるだけのポテンシャルを秘めたものなのだろう。

 今更回避しようにももう遅い。


 (うわー。終わった)


 余りの禍々しさに現実を直視出来ず、目を閉じる。

 せめて一思いにやってくれると助かるんだが…。


 「うごっ!」


 俺の声ではない。

 というか来ると思っていた衝撃が無い。


 瞳をゆっくりと開けると、大楯を構えたガビノさんの姿が…。

 その盾を少しずつ、ブレスに削られながらも身を挺して俺をかばってくれているのだ。


 「どうして…」


 「起きて直ぐにサッシュに最後の回復薬を使ってもらった。お前の有志は後ろから見ていたぞ!さっさと貯めて、またあの野郎に重い一撃を食らわしてやれ!!」


 「は、はい!!」


 ブレスそのものには余り威力はなさそうだが、その追加効果は余り舐められたものではない。

 浸食作用があるのか、冗談のように盾がガリガリと溶けるかのように削ぎ落とされていく。


 そして、盾が無くなるとそれは身体にまで及んだ。


 「うわぁぁぁぁあああ!!」


 「ガビノさん!?」


 「いいから!!続けろ!!俺が持たなくなってもだ!」


 ブレスがガビノさんに当たると、鎧が削れ、小手が削れ、そして肉体までもが削れていく。

 もうこれ以上はガビノさんが死んでしまう。


 そう思ったその時、


 「『炎の柱(フレイムピラー)!!』」


 蜘蛛ゴブリンの足元から円柱型の炎が立ち上り、どういうわけか貫通。

 腹部に燃え移り、盛大に火事を起こす。


 燃え盛る火の粉は天井から辺りにいる未熟児ゴブリンにも引火し、窟内はまさに地獄絵図と化す。

 まぁ、彼女が本気で魔法を使ったらこうなるとは思っていたが…。


 『キャァァァアアオ!?』


 これにはたまらず蜘蛛ゴブリンも退散。

 ブレスを一旦辞め、その黒い魔力を薄く身に纏い火を鎮火していく。

 勿論他のゴブリンを気にする様子などは一切ない。


 「ガビノさん!?」


 真ん前に立つ彼が倒れ伏す。


 鎧の前面が無くなり、両手はもはや原型を留めていない。

 その隆起した肉体は皮膚が剥げ、筋肉が赤黒く焼けて煙を上げているのが見える。


 「ガビノさん…」


 「いいから…。勝て…」


 ここまでして守ってくれたガビノさんに思わず、熱いものがこみ上げてくるのを感じる。

 統制が取れなくなり、パニックに陥ったゴブリン達はいつの間にか俺の周りから姿を消した。


 後はあのクソ野郎をぶちのめすのみである。



 そして、時は来た。


 「体が…」


 マナが可視化し、自らの体が神々しく光り輝いていく。

 もういいだろう。

 準備は完了した。


 黒を纏った蜘蛛ゴブリンが突進してくるがもう遅い。

 ガビノさんや俺の痛みの分までお前に食らわせてやる。


 体が震えているのは抑えきれない魔力の奔流によるものか、高揚感によるものか。

 どちらでもいい。


 「いっけぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!!!!!!!」


 剣を引き抜き、頭の上に両手で構える。


 「人間ロケットォォォオオオ!!!!!」

 

 ドゴンッ!!


 砲弾が発射された時の爆音を伴ったそれは弾丸もかくやというスピードで射出され、前傾姿勢あった蜘蛛ゴブリンの本体やその腹部の一切合切を貫き、切り裂き、着弾する。


 『グギャァァァァアアァアアアアア!!』


 「お前等!今だっ!!」


 とどめとばかりに魔法や剣で燃やし、切り刻まれたそれは腹を地につけると、多量の緑の血を流し、やがてくずおれる。

 本体の胸部には狙い違わずに大穴が空いているのが確認できる。


 「やった…の?」


 「まだだ!一息つくのは他のゴブリンを完全に掃討してからにしろ!」


 「もうっ!分かってるわよ!」


 「ふぅ…。さて私はあいつらの正気を戻しに向かうとするか」


 かくして長きにわたる戦いは収束する。

 辺り一面には数多のゴブリンが焼けた跡や切断された跡が…。


 そんなこの世の終わりのような景色の中でも、各々困難を打ち破ることが出来た喜びや何より生き残れたことによる安堵に浸り、分かち合うのであった。

 

























 (うむむむむ…。あれ…?抜けねーんだが?)



◎お知らせ

 

 申し訳ございません。

 いきなりですが、忙しくなって参りましたので今後更新ペースが著しく落ちる可能性がございます。

 自己満で始めた作品ですので、辞めたり、失踪せずに年単位で続けていこうと考えています。

 ホントある程度構成やストーリーは考えてるんすけどね…。

 つまらないモノですが、楽しんでいただけたなら是非ブックマークをして、気長にお待ち頂けると幸いです。

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